なまえ

今回はどんな名前にしようかな

え、まだ決まってないの？

良いのが浮かばなくてさ
まさかお前ら決まってんの？

2週間後に名前を発表しなくてはならないのに
決まっていない

俺たちのクラスは2ヶ月に一回自分の名前を変えるという、おかしなルールがある。それも自分で考えなければならない。しかもフルネームで。

ふざけてると思うだろうがみんな真面目に従っている。なぜなら、考えなかった生徒は原因不明の体調不良になり長期間、休みになる。
やっと出て来たと思えば、何事もなかったかのように溶け込む。

怖いのが、中身が全く別の人間になっているという事だ。まるで、知らない人が俺たちの知ってる人の皮を特殊メイクでくっ付けてるみたいな感じだ。

とにかく気持ちが悪い。

大丈夫か？

ん？あぁ・・・
なんとかなるだろ

毎回ぎりぎりで本当に大丈夫？
そのうち、忘れてた！やべー！
とか言いそうじゃない

確かにな

そうね
先に手を合わせておくわ

おいおい誰も助けようとしないんだな
ひどいやつらだ

何気ない会話をして
それぞれの家路に着く

不安なんて感じる事もなく

これはゲームだ
名前を考えるだけの単純なゲーム

なのに
なんでこんなに落ち着かなくなるんだ

結局、その日も夜まで考えたが何も浮かばないまま睡魔に無理やりまぶたを下ろされた

それから数日、頭の中は"なまえ"の事でいっぱいだった

相変わらず何も浮かばない
何も浮かばないとは違う

納得できるものが出てこないと言うのが正解だ

あいつらは適当でいいんだよって言うのだが
そのテキトウが難しい

変なところで考えてしまう
自負自身が面倒臭いヤツだなと思う

とりあえず帰りにカフェオレ飲みに行こう

いつも悩んだときに行く喫茶店がある
通学路にあるわけでも
家から近いわけでもない

偶然見つけた店
少し外れた場所にあるから
知っている顔を見たことはない

それが良い事であったか
望んでいたことでもあった

一人の時間を楽しめる
貴重な場所であり
必要な場所

まだ数回しか来ていないが
気分は常連だ

・・・つづく？