ぼやき牧師|富田正樹

キリスト教学校の聖書科教員の傍ら、小さな教会の牧師(代務者)もしています。

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マガジン

  • ぼやき牧師のブックレビュー

    ぼやき牧師が読んだおすすめの本の感想をご紹介します。 更新は不定期。 本のお好きな方はどうぞいらっしゃいませ。

  • ぼやき牧師のキリスト教メッセージ

    教会の日曜礼拝でお話したメッセージです。 おおよそ1ヶ月に2回程度更新します。 主に日本キリスト教団徳島北教会でお話したもの。時々日本キリスト教団枚方くずは教会でお話したものや、その他の場所でのものもあります。 キリスト教や教会に関心をお持ちの方はどうぞ。

  • ぼやき牧師のシネマレビュー

    ぼやき牧師が観た映画の紹介をいたします。割とメジャーどころの映画が多いです。 更新は不定期です。 映画のお好きな皆さんはどうぞいらっしゃいませ。

最近の記事

『いのちを“つくって”もいいですか?』島薗進、NHK出版、2016

 生命科学の発展が生み出す様々な倫理的ジレンマをめぐって、哲学的に考察を進める本。副題に「哲学講義」というカタい言葉が入っているが、決して難しい本ではなく、平易な言葉でわかりやすく、生命倫理について、著書と一緒に考えるよう読者を導く、優しい内容になっています。  この本で問題とされているのは、病気を治療したり、失われた機能を修復させるだけではなく、人体の能力を向上させるために行われる「エンハンスメント」によって、「人間改造」が行われ、人間を超えた何者かを造り出してしまうこと

    • 『自死遺族支援と自殺予防 キリスト教の視点から』平山正美・斎藤友紀雄監修、日本キリスト教団出版局、2015

       当初、日本キリスト教団出版局の月刊誌『信徒の友』に連載されたシリーズが1冊にまとめられたもので、キリスト教の立場から、自死というものを正面から見据え、多くの遺族、支援者・生還者の言葉によって綴られた本です。  前半は自死した人の遺族に寄り添う立場から、後半は自死しようとする人自身に寄り添う立場から書かれています。  1人の著者ではなく、様々な人の目線で書かれており、それぞれに重い真実が込められていて、毎ページに死と生に深く思いを馳せさせる濃密なメッセージを読み取ることができ

      • 『安楽死が合法の国で起こっていること』児玉真美、筑摩書房、2023

         この本は、ただ「安楽死が合法の国で起こっていること」をルポルタージュとして紹介するような本ではありません。  安楽死が合法となっている国で起こっている、本書で使われている言葉を使えば「すべり坂」のように、人の命が、そして死が軽く扱われてゆく傾向が、日本でも更に急な傾斜で「崖」のように激しくなっていくのではないか、という警告の書です。  安楽死といえば、「死ぬ権利」について取り沙汰されることが多い話題だと思います。しかし本書では、「死ぬ権利」が本当に当事者(例えば、終末期の

        • 『国のために死ぬのはすばらしい?』ダニー・ネフセタイ、高文研、2016(第3刷2023年11月)

           今から8年前に書かれた本だが、2023年11月に改めて増し刷りされたのは、10月のガザでのジェノサイドの始まりと無関係ではないはずだ。  イスラエル生まれ、イスラエル育ちの著者が語る平和論。前半は著者がイスラエルで育ち、日本にやってきた経緯と、その半生の中で感じたこと、考えたことが綴られている。  後半は、軍需産業と原発産業という、ごく少数の人の利権のために、膨大な数の人間の命が失われてしまう暴力において、イスラエルと日本の共通点と、それらへの異議申し立てが述べられている

        『いのちを“つくって”もいいですか?』島薗進、NHK出版、2016

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        • ぼやき牧師のブックレビュー
          19本
        • ぼやき牧師のキリスト教メッセージ
          53本
        • ぼやき牧師のシネマレビュー
          10本

        記事

          弱い人が集まれるところ〜サードプレイスとしての教会

          2024年5日12日(日)徳島北教会 主日礼拝 説き明かし  コリントの信徒への手紙(二)12章7−10節(新約聖書・新共同訳 p.339-340、聖書協会共同訳 p.333)  有料記事設定となっておりますが、無料で最後までお読みいただけます。購入によって有志のお方のご献金をいただければ、大変ありがたく存じます。  最後に動画へのリンクもあります。「読むより聴くほうがいい」という方は、そちらもどうぞ。 ▼コリントの信徒への手紙(二)12章7b-10節(弱いときにこそ強い)

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          弱い人が集まれるところ〜サードプレイスとしての教会

          『かたわらに、今、たたずんで』大野高志、オリエンス宗教研究所、2023

           この本を手に取ったとき、心が炭火のように燃えてささくれだっていたのだが、読み進めるうち、次第に落ち着いて静かな状態に返っていった。  この本は、神奈川県にある衣笠病院のチャプレンをしておられる大野高志牧師が、ご自身の体験を再構成してまとめられたものだ。  ホスピスで人生の残り少ない日々を送られる人びととの出会いと、交わされた言葉が柔らかい筆致で語られている。  そして、ただ入所者の方々と大野さんとの会話の記録であるだけではなく、聖書の言葉との連想が繰り広げられ、確かにそこ

          『かたわらに、今、たたずんで』大野高志、オリエンス宗教研究所、2023

          さまざまなパートナー、そしてパートナーのいない人にも

          2024年5日5日(日)徳島北教会 主日礼拝 説き明かし  創世記2章18−25節(旧約聖書・新共同訳 p.3、聖書協会共同訳 p.3)  有料記事設定となっておりますが、無料で最後までお読みいただけます。購入によって有志のお方のご献金をいただければ、大変ありがたく存じます。  最後に動画へのリンクもあります。「読むより聴くほうがいい」という方は、そちらもどうぞ。 ▼創世記2章18−25節(人に助け手が造られる)  主なる神は言われた。  「人が独りでいるのは良くない。彼

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          さまざまなパートナー、そしてパートナーのいない人にも

          神の世界を壊したのはわたしたちです

          2024年4日14日(日)徳島北教会 主日礼拝 説き明かし  創世記2章4−14節(旧約聖書・新共同訳 p.2-3、聖書協会共同訳 p.2)  有料記事設定となっておりますが、無料で最後までお読みいただけます。購入によって有志のお方のご献金をいただければ、大変ありがたく存じます。  最後に動画へのリンクもあります。「読むより聴くほうがいい」という方は、そちらもどうぞ。 ▼創世記2章4-14節(アダムの創造とエデンの園)  これが天地創造の由来である。  主なる神が地と天を

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          神の世界を壊したのはわたしたちです

          イースターのメッセージ「すべては女性たちからはじまった」

          2024年4日7日(日)徳島北教会 イースター礼拝 説き明かし  マルコによる福音書16章1−8節(新約聖書・新共同訳 p.97、聖書協会共同訳 p.95-96)  有料記事設定となっておりますが、無料で最後までお読みいただけます。有志のお方のご献金をいただければ、大変ありがたく存じます。  最後に動画へのリンクもあります。「読むより聴くほうがいい」という方は、そちらもどうぞ。 ▼マルコによる福音書16章1−8節(女性たち、空っぽの墓から逃げ出す)  安息日が終わると、マ

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          イースターのメッセージ「すべては女性たちからはじまった…

          『ガリラヤに生きたイエス いのちの尊厳と人権の回復』山口雅弘、ヨベル、2022

           まず著者はイエスの死に際して、「十字架」ではなく、「晒し柱(さらしばしら)」という言葉を使う。  イエスは「反逆者・政治犯」として虐殺された多くの人間のうちの1人に過ぎない。そして、イエスの殺害は、見せしめとして権力者が民に晒すために行ったものである。だから、これは「贖罪」の徴として美化された「十字架」ではなく、「晒し柱」と呼ぶ方が、事の本質を示すには相応しい。  本書は、イエスが突発的に登場した宗教的天才であったのではなく、ガリラヤがイエスを育てたと主張している。  搾

          『ガリラヤに生きたイエス いのちの尊厳と人権の回復』山口雅弘、ヨベル、2022

          イエスは誰も肯定しないし、否定もしない

           2024年3日17日(日)徳島北教会 受難節第5主日礼拝 説き明かし  マルコによる福音書14章3-9節(新約聖書・新共同訳 p.90−91、聖書協会共同訳 p.89)  有料記事設定となっておりますが、無料で最後までお読みいただけます。有志のお方のご献金をいただければ、大変ありがたく存じます。  最後に動画へのリンクもあります。「読むより聴くほうがいい」という方は、そちらもどうぞ。 ▼マルコによる福音書14章3−9節(ベタニアで香油を注がれる)  イエスがベタニアで重

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          イエスは誰も肯定しないし、否定もしない

          『マスキュリニティで読む21世紀アメリカ映画』國友万裕著、英宝社、2021

          マスキュリニティ(男性性、男らしさ)がアメリカ映画の中でいかに描かれているのか。その変遷を観察してゆくことで、ジェンダーの時代ごとのあり方を探ってゆく、興味深い本。  とりあげられているのはアメリカ映画に表れるアメリカ文化だが、日本のジェンダー観、加えて日本の独自性との比較でとらえても面白い。  このように、男性論からジェンダーを論じ始める本は珍しいのではないか。特に近年においては、女性やLGBTQ+などの視点からのセクシュアリティ論、ジェンダー論は数多く出版され、論じられ

          『マスキュリニティで読む21世紀アメリカ映画』國友万裕著、英宝社、2021

          ジェノサイドのもとでの祈り

          2024年3日3日(日)徳島北教会 世界祈祷日礼拝 説き明かし 申命記10章17−19節(旧約聖書・新共同訳 p.298、聖書協会共同訳 p.282) 有料記事設定となっておりますが、無料で最後までお読みいただけます。有志のお方のご献金をいただければ、大変ありがたく存じます。 最後に動画へのリンクもあります。「読むより聴くほうがいい」という方は、そちらもどうぞ。 ▼申命記10章17-19節  あなたたちの神、主は神々の中の神、主なる者の中の主、偉大にして勇ましく畏るべき神

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          ジェノサイドのもとでの祈り

          『八色ヨハネ先生』三宅威仁著、文芸社、2023

           同志社大学神学部教授(このレビューを書いている2024年2月現在)の三宅威仁さんによる小説。小説を読むこと自体、筆者にとっては何年ぶりかわからないほど久しぶりであったので、とても新鮮だった。  主人公の八色約翰(やいろヨハネ)先生は同志社大学神学部の教授である。しかし、作者によれば、この人物にはモデルとなる人物は存在せず、全くの創作であるという。作品ではこのヨハネ先生の、太平洋戦争末期の少年時代から晩年までの生涯が綴られている。  作品には、キリスト教信仰に根ざす表現が幾

          『八色ヨハネ先生』三宅威仁著、文芸社、2023

          『傷によって共に生きる』北口沙弥香著、沙弥香牧師と愉快な仲間たち、2023

           神奈川県にある日本基督教団愛川伝道所の牧師をしておられる北口沙弥香さんの、受按5周年記念、農村伝道神学校入学12周年記念の説教集である。  神学校に在学中の2013年から愛川伝道所における2023年に至るまでの説教の中で、26編が選ばれている。巻頭言は筆者が執筆した。  読み進めると、東日本大震災が北口さんの信仰と牧会に与えている影響が、とてつもなく大きいのだと知らされる。震災直後の被災地に入って出会った人びとや出来事が、北口さんのそれまでの人格を叩き壊し、そこから再生し

          『傷によって共に生きる』北口沙弥香著、沙弥香牧師と愉快な仲間たち、2023

          わたしをセンセと呼ばないで

          2024年2日4日(日)徳島北教会 主日礼拝 説き明かし マタイによる福音書23章1−12節(新約聖書・新共同訳 p.45、聖書協会共同訳 p.44) 有料記事設定となっておりますが、無料で最後までお読みいただけます。有志のお方のご献金をいただければ、大変ありがたく存じます。 最後に動画へのリンクもあります。「読むより聴くほうがいい」という方は、そちらもどうぞ。 ▼マタイによる福音書23章1-12節  それから、イエスは群衆と弟子たちにお話しになった。  「律法学者たちや

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          わたしをセンセと呼ばないで