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事業開発プロセス管理のフレームワークPMFを使いこなそう

PMFは、新規事業創出のための仮説導出(市場調査)と仮説検証のプロセス管理のフレームワークです。抜け漏れなく仮説検証のループを回すことができるので、特にチームで動く際に効果を発揮するフレームワークだと思います。

市場調査(仮説導出)のフレームワーク(PMF)

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筋の良い仮説導出のために、分析を重要視しています。

分析から何を見出すかは、その人のセンスに寄るところが大きいですが、何を分析するかは、抜け漏れのない質の良いフレームワークを使うことで、分析結果の質も高めることができます。

PMFのフレームワークで検証すべき項目は、以下の4点です。

1. 課題を抱えるユーザーがいるのか?
2. 課題解決のソリューションとして自社の提案(プロポジション)は刺さるのか?
3. 自社のプロダクトは、ソリューションを実現できるか?
4. プロダクトができれば売れるのか?

顧客に直接ヒアリングすることで、1と2は比較的早く検証することができます。

コネクションさえあれば、ヒアリングすることはすぐにできます。大企業であれば、他の部署のコネクションを探ったりしていけば、必ずどこかでコネクションを見つけることができます。もし、全くコネクションがなかったとしても、プロポジション仮説がしっかりと立てられていれば、それを持って飛び込み営業かけてヒアリングできます。名の通った大企業は、こういう時に知名度を生かすことができるのが良いところです。

4は論理的な仮説が立てられるか、という観点から考察します。未来のことなので、どんなにデータを積み重ねても意味がありません。売れると信じることができる論理的なストーリーが作れるかどうか、が重要になります。

多くの場合、3がボトルネックになります。新規市場や新規産業へ参入しようとすると、既存のプロダクトラインナップではソリューションを実現できないことが往々にしてあります。そのような場合は、プロダクト(プロトタイプ)開発が必要となります。そうすると他の部門を巻き込んでいかなければいけないので、3を進めていくには、少なくとも1、2、4に基づく「売れるストーリーの仮説」は用意しておかないと、なかなか他の部署を説得することはできません。

市場調査の段階では、このPMFのフレームワークを使って市場調査を進めていきます。まず、筋の良さそうなテーマ(市場とプロポジション)から順に、1、2、4を検証して行きます。そこで、ある程度のそのテーマがいけると確信が持てれば、3に移行してプロトタイプの用意と市場での仮説検証を進めることになります。

事業開発プロセス管理のフレームワーク

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PMFフレームワークを用いて、市場調査を行い、初期仮説の導出を行いました。この時点で、プロセスマネジメントのフレームワークの「市場調査」はほぼ完了しています。

次のプロセスの「基礎データ取得」によって、プロトタイプ作成の価値があるかどうかを見極めます。また、顧客紹介の基礎データをここで準備していきます。

「顧客評価」は、基礎データを使ったコンセプト提案とその反応のヒアリングと、プロダクトのプロトタイプを実際使ったフィードバック、の2種類があります。

コンセプト提案でプロポジションの強さに自信が持てれば、プロトタイプ開発にリソースを割き、開発をプッシュして加速させます。一方で、コンセプトがあまり刺さらなかった時は、刺さるコンセプトを探しながら、それを指示するようなバックデータを揃え直していきます。

「結果検証」では、顧客の評価結果からプロトタイプがプロダクトとして十分かどうかを判断します。もし、プロトタイプがソリューションを十分に実現できない場合はさらに追加開発を行い、顧客の要望を実現できるプロダクトを開発する必要があります。この開発のループがすぐに終わればラッキーですが、長ければ数年かかることもあります。

ここまでの全てのプロセスが完了すれば、確定仮説(市場検証されたプロポジション)が確立されていますので、「後工程へ」で、マーケティング、セールスのThe Modelのプロセスに引き継ぎます。

最初の「市場調査」「基礎データ取得」は、初期仮説の導出とラボでの検証が目的です。

ここで売れるストーリーの初期仮説を作ります。そのために、市場分析と基礎データの収集を行いますが、学術的な文献や特許、市場調査や調査機関のレポートだけでなく、社内の過去履歴を探ることも有効です。特に大企業では、社内の過去履歴やデータを人伝で収集し集約することでかなりの情報が集まります。このネットワーク力が初期仮説導出の助けになります。

次にプロトタイプを作り、「顧客評価」してもらいフィードバックを得ます。これは市場でのプロダクト評価が目的です。

「結果検証」によって、プロポジションを確定するか、もしくは追加開発するか、を決めます。ほとんどの場合は、追加開発が必要で、顧客のフィードバックを参考にしながらプロダクトを最適化させて、標準プロダクトを作りこんでいきます。

プロポジションが確定すれば、ビジネスR&Dの最大のミッションは達成されます。あとは、マーケティングとセールスで売っていくだけです。

大企業で事業開発を進めるポイント

1. 企画と開発の2つのステージは、意識的に分けて活動しています。

市場調査と基礎データ取得は「企画ステージ」
顧客評価以降が「開発ステージ」

これは、他部署との連携の必要性の有無が異なるためです。企画は、自分だけで完結できる仕事ですが、開発は、自分だけではできません。

開発ステージに入ると、他部署を巻き込みリーダーシップを発揮する必要があるため、私はこのステージに上げるテーマは、最も成功確率の高い、上層部からも支持を受ける筋の良い仮説のみで勝負します。

事業開発は、成功と成果でしか評価されません。

企業内で、誰も理解できない未知の市場へ飛び込んでいく挑戦に投資を得ようと思うと、その人の信頼が重要になります。信頼は、論理性とパッション、そして何よりも実績でしか得られません。小さな成功を積み上げていくことで、初めて大きな挑戦権を得ることができます。そのために、しょぼい失点は絶対に避けていくのがセオリーだと考えています。

事業開発のプロセス管理を重要視するのは、成功率を高めるためだけでなく、説明可能性を高めるためでもあります。

大企業では、必ずと言っていいほど懸念やリスクばかりを指摘する「コメンテイター」がいます。その懸念が重要なのか、そもそもその指摘はその段階で論点になり得るのか、をフレームワークを用いることで共有しやすくなります。

企画と開発の2つのステージは、意識的に分けることで、個人で進めることのできる「企画」をコントールして、「開発」に放出する質の良いテーマを事前に準備することが可能になります。

2. 情報収集と仮説導出は、質より量が大切です。

事業開発のテーマは、どのくらい大きなテーマを持っておかなければいけない、どのくらいの数を持っておかなければいけないか、組織の規模や立ち上げからの経過時間によって、異なります。

そこで、自ずと「説明しやすく」「仮説検証が進んでいて成功確率が高く」「インパクトの大きい」テーマから順に放出していくことが求められます。

・何も考えずに仮説検証中のテーマを全て曝け出すこと
・何も検証していない妄想テーマを「戦略」として提示していること

これらは、どちらも間違いです。実際、この2つは、新規事業をやれと言われたけど、何をやっていいのか分からない、という人によくあるパターンです。

求められた時に、「説明しやすく」「仮説検証が進んでいて成功確率が高く」「インパクトの大きい」テーマが、潤沢に自分の中にストックされている状態が理想ですが、そんなことはまずありません。

急に「何かテーマ出して」、なんて言われることもザラで、仮説検証もほとんどできていない不確実性の高いテーマを上奏しなくてはいけない場面などもよくあります。

だからこそ、情報収集と仮説導出は、質より量をこなすことが大切です。

筋の良い仮説に出会う確率は、わかりませんから、とにかく広く多く、仮説を作り、検証していくことです。ここは、個人で完結する仕事なので、どれだけやるかは自分次第でコントロールできます。

数をこなして、自分の中にできるだけ「筋の良いテーマ」を多くストックすることが、成功の鍵になります。

大企業での事業開発の鍵

”前でリスクを取って攻撃するために、
後ろの守備のリスクマネジメントを完璧にする”

事業開発はアタッカーだからこそ、
「攻撃は守備から」だと考えています。

少しでも皆様のご参考になりますように。

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