『ロールケーキ』 春風亭いっ休

ロールケーキは、ケーキ目スポンジケーキ科の生物(なまもの)である。原産地はヨーロッパで、日本には明治以降に持ち込まれて定着したと見られる。

日本のロールケーキは、遠く南へ離れたマリアナ諸島の沖の深海で生まれる。生まれたてのロールケーキはまだ体が小さくて、スポンジもクリームも固い。幼いロールケーキは黒潮に乗って北上して日本にたどり着き、川をさかのぼって行く。体はどんどん大きくふわふわに育ち、クリームもたくさん蓄えるようになる。そして各地の川で過ごすうちに、スポンジの巻きも増えて立派な一人前のロールケーキになる。大人になったロールケーキは、やがて川を下り、生まれ故郷のマリアナ沖へと旅立ち、そこで産卵して一生を終える。

6月6日はロールケーキの日と言われるように、ロールケーキといえば夏のものと思われがちだが、実は冬が旬である。冬のロールケーキはクリームに脂が乗っていてとても濃厚だ。

ロールケーキの名産地は各地にあるが、何と言っても一番有名なのは大阪の堂島川で取れる"堂島ロール"だろう。
最近は、安い養殖もののロールケーキも増えていて、デパートや洋菓子店だけでなく、スーパーやコンビニでも手軽に買えるようになっている。
しかし近年、ロールケーキの乱獲が問題になっている。特に、まだ巻きの少ない、若いロールケーキが消費者の人気を集め、乱獲されやすくなっている。さらには、江崎グ○コという密漁業者がロールケーキの稚魚を捕まえて、1箱に何十体も詰めて、"コロン"という商品名で密売しているという噂も、まことしやかにささやかれている。

ロールケーキの近縁種はいくつか知られている。有名なのが、フランスに生息する"ブッシュドノエル"。ココアクリームやチョコレートで木に擬態しているのが特徴だ。
北海道苫小牧市付近にしか見られない希少種"よいとまけ"。全身をハスカップジャムで覆っており、食べづらいがとても美味しいと言われている。

ロールケーキには天敵が2ついる。1つはもちろん人間。もう1つはナマクリイムチュウチュウタコカイナというタコの1種だ。このタコは12月に大量発生して、ロールケーキの体からクリームを吸い出して殺してしまう。クリームを全て吸われたロールケーキの死骸は年末ごろに各地の川岸や浜辺に打ち上げられ、正月のおせち料理に入れられて伊達巻きと呼ばれる。

2021.8.8

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