春風亭一之輔の弟子たち

落語家・春風亭一之輔の弟子4人(㐂いち・与いち・いっ休・貫いち)が書いた文章を投稿しま…

春風亭一之輔の弟子たち

落語家・春風亭一之輔の弟子4人(㐂いち・与いち・いっ休・貫いち)が書いた文章を投稿します。毎週日曜日に更新します(目標)。管理人は三番弟子です。

最近の記事

『喧嘩別れ』 春風亭貫いち

これは田舎に住むおじいさんの家でのお話―― おじいさんは野菜を作ることが仕事です。おじいさんの家の裏には畑があって、ジャガイモやニンジン、ニンジン、タマネギ、ナス、ゴーヤ、キュウリ、カボチャなどたくさんの野菜が育てられています。おじいさんは毎日毎日、水をあげたり、草を取ったり、一生懸命に働いています。 ある日のこと…… カボチャ「ねぇねぇ~」 ナス「何だよ?」 カボチャ「ねぇってば!」 ナス「何って言ってるだろ!」 カボチャ「僕ら隣の畑同士なんだから遊ぼうよ~」 ナス「

    • 『人事刷新』 春風亭いっ休

      曜日といえば、「日月火水木金土」。何百年も前からずっと同じメンバーで固定です。そろそろ飽きましたね。刷新しましょう。 まず日曜日。「日」という字は明るい太陽を表しますから、楽しい休日にはもってこいです。だからそのままと言いたいところですが、どうせならもっと明るくしちゃいましょう。 というわけで、今度から日曜日改め、「祭」曜日です。「まつりようび」です。いいですね。底抜けに明るい感じがします。 次に月曜日。休日が終わって、職場や学校に行かなければならない憂鬱な日。「月曜日な

      • 「ヤクルトの空き容器の新しい使い方」春風亭与いち

        まずこの度、皆さまから「ヤクルトの空き容量の新しい使い方」について、Twitterにて、お知恵を拝借しまして誠にありがとうございました。 予想以上のコメントの数に驚き、本当に有難い気持ちでいっぱいです。 自分では、なんとか絞り出しても「ビンドゥンドゥンを作る」止まりでした。 皆さまから頂いた中から、いくつかご紹介させていただければと思います。 「いっぱいくっ付けてスワローズ応援用メガホンを作りましょう」 ——公式で販売できそうなグッズ。 選手も会社の売り上げもどっちも応援

        • 『かわうそ』 春風亭貫いち

          かわうそーー漢字で書くと獺、または川獺と書く。学術的には食肉目イタチ科に分類されており、2000年代に突入してからは人気は鰻登りである。その愛らしい姿は人々を癒し、都内にはいくつものカワウソカフェ、ないしはカワウソもいるアニマルカフェが店を構えている。サンシャイン通りにもお店があり、コロナ前の休日には、スタッフがカワウソを抱えて店の前で呼び込みをしていた。その可愛さに惹かれて多くの女子高生やカップルが店に吸い込まれていった。ちなみに貫いちは吸い込まれていない。吸い込まれたい気

        『喧嘩別れ』 春風亭貫いち

          『ロールケーキ』 春風亭いっ休

          ロールケーキは、ケーキ目スポンジケーキ科の生物(なまもの)である。原産地はヨーロッパで、日本には明治以降に持ち込まれて定着したと見られる。 日本のロールケーキは、遠く南へ離れたマリアナ諸島の沖の深海で生まれる。生まれたてのロールケーキはまだ体が小さくて、スポンジもクリームも固い。幼いロールケーキは黒潮に乗って北上して日本にたどり着き、川をさかのぼって行く。体はどんどん大きくふわふわに育ち、クリームもたくさん蓄えるようになる。そして各地の川で過ごすうちに、スポンジの巻きも増え

          『ロールケーキ』 春風亭いっ休

          『日暮里』 春風亭与いち

          最近、「ステマ」なる言葉をよく聞く。 どういう意味なのか全く分からなかったが、 「ステルスマーケティング」の略で、それが広告だとバレないように宣伝することを言うのだそう。 なんとなく「捨て駒」とか「捨て石」みたいな、何かの為に犠牲になる「マ」のことを言っているのかと思ったらそうじゃないらしい。 そもそも「マ」ってなんだ。 その他にも、「リスケ」は「リスケジュール」。 計画を組み直すことを言うらしい。 「リスケ」と聞いたら私は間違いなく「柳家り助」しか出てこない。 そんなの本当

          『日暮里』 春風亭与いち

          『死ぬ前日にやっておきたいこと』 春風亭貫いち

          「この作文の為に嘘考えたろ」 と言われるのは悲しいので一応、冒頭で断っておきます。以下の文章はノンフィクションです。 兄さんからこのお題を弟子全員に伝えられた日の夜中――貫いちは二度、気を失いました。 順を追って説明します。 夜中の2時頃、何か胸がムカムカするというかゾワゾワするというか、気分が悪くなって目を覚ましました。次第に強くなる気持ち悪さと闘いながら、この感覚どこかで味わったことがあるな〜と考えてみると......あっ!これは熱中症特有のものだと気づきました。陸上部に

          『死ぬ前日にやっておきたいこと』 春風亭貫いち

          『五輪貴族』 春風亭いっ休

          スポーツ観戦の楽しさがまっったく分からない。 スポーツを1時間も見せられるぐらいなら、アリの巣を1日じゅう眺めている方がまだマシ。それぐらい興味が持てない。 そもそもスポーツに全然詳しくないから、というのはある。 私は自分でスポーツをするのも嫌いだ。小さい頃から体を動かして遊ぶのが好きじゃなくて、体を動かさないから運動神経が悪いままで、運動神経が悪いからますます遊ばなくなって……という負のスパイラルで、どんどんスポーツが嫌いになった。体育の授業以外でスポーツはほとんどやって

          『五輪貴族』 春風亭いっ休

          『死ぬ前日にやっておきたいこと』 春風亭与いち

          先日、師匠からこのお題が出されて震えた。 恐らく師匠は死ぬつもりだ。 才能のある人はそれが故に思い悩み、若くして自害してしまうということが多々ある。師匠もそのパターンだ。 そして、死ぬ前日にやっておきたい事を決めるに当たって、その参考程度に弟子に聞いてみようという魂胆だ。 阻止しなければ。 師匠自身が死ぬ前日にしそうな事の目星をつける。 それらをさせなければ悔いが残り、踏みとどまるはず。片っ端から潰していこう。 まず、家族には必ず会うだろう。 師匠が自害する前日の朝、おかみさ

          『死ぬ前日にやっておきたいこと』 春風亭与いち

          『クラウドファンディング』 春風亭貫いち

          クラウドファンディング......平たく言えば不特定多数の人からお金を集めちゃおう★的なことらしい。クラウドとついているので、私はつい「雲」を連想したが、そうではないらしい。雲のスペルは「cloud」であり、正しくは「crowd」と書いて「群衆」という意味らしい。L と R の違いに未だに翻弄されている。 このクラファンは意外と誰でも出来るようだ。お金を集める趣旨と目標額みたいなものをクラウドファンディング専用のサイトなどで公表すれば良く、目標達成したらこういうものを差し上

          『クラウドファンディング』 春風亭貫いち

          『こどもの日のあるべき過ごし方』 春風亭いっ休

          こどもの日は、子供を大事にする日です。こどもの日なのに子供を大事にすることなく、ただただ便乗して休みを謳歌するのは、いわば休みの不正受給とでも呼ぶべき悪行なのではないか? そんな考えに思い至ったのは、去年のこどもの日のことでした。 私には子供がいません。結婚もしていないし、彼女もいません。また、親類を見渡しても子供は1人もいません。 そんな私でも、子供を大事にする方法はないでしょうか? ユニセフに募金する? 間接的に子供を大事にすることにはなるでしょうが、お金を出すだけでお

          『こどもの日のあるべき過ごし方』 春風亭いっ休

          『座右の銘』 春風亭与いち

          皆さま、座右の銘はお持ちですか? ポイントカードみたいに聞いてすいません。 お恥ずかしながら私、産まれてから今年で二十三年になりますが、まだ持っておりません。座右の銘。 大学受験も、入社試験もして来なかった温室育ち野郎でして。 座右の銘無しでも不自由なくここまで育ってきてしまいました。 自動車の普通免許や、マイナンバーカードは取得したのですが。 人間として、やることの順番が逆です。 免許を取った時に親に言われました。 「座右の銘も持ってないくせに。よく自動車なんて乗る気になる

          『座右の銘』 春風亭与いち

          『死ぬまでにしたい10のこと』 春風亭㐂いち

          気付けば今年で33才だ。 『若いうちに色々やった方がいい』とこの間、稽古をつけてくれた師匠に言われた。 その師匠は今年で68才。 そりゃ68才からすれば33才は若いかもしれないが、正直もう私は若者じゃない。 すっかりおじさん。 でもおじいさんからすればおじさんは若者なのだ。 しかもこの業界はおじいさんで溢れかえっている。 まぁ、しかし一般的には自分はもうおじさんなのだと自覚しなければならない。 色々、もう出来なくなる事が増えてきたのだ、、、 そこで死ぬまでにやっておきたい事を

          『死ぬまでにしたい10のこと』 春風亭㐂いち

          『ガリンペイロ』 春風亭貫いち

          ある染物屋の店先に客がやって参りましてーー ペドロ「オイ……オイ…………オイッ!!」 熊五郎「はい、今行きますよーーお待たせしました…えっ、外人さん?何かご用ですか?」 ペ「オイ!ムイト プラゼール」 熊「は?」 ペ「ムイト プラゼール」 熊「麦とプラレール?そりゃ面白そうですね~麦畑の真ん中でプラレールで遊ぶのは」 ペ「ナウン、ナウン……ムイト プラゼール……はじめまして」 熊「あぁ~これはご丁寧に…で、あなた誰です?」 ペ「メウ ノーミ エ ペドロ」 熊

          『ガリンペイロ』 春風亭貫いち

          『アイリスオーヤマ』 春風亭いっ休

          コロナ禍で外出が減り、自室に籠る時間が長くなると、気が滅入ってきます。先日、何か住環境を改善する手立てはないかと考えているうちに、ふと思いついたのです。 床に人工芝を敷こう、と。 モノトーンで無機質な部屋が、緑あふれる明るい空間に生まれ変わって、きっと気分も明るくなるはずです。何より、室内にいながら、草原に寝転んでくつろぐ心地良さを疑似体験できるというのは、なんとも夢のある話ではありませんか! ふかふかの芝が、ささくれだった私の心を包んで癒してくれることでしょう。 考えれば考

          『アイリスオーヤマ』 春風亭いっ休

          『披露目の経過報告』 春風亭与いち

          三月一日に二つ目に昇進し、そこから十日空いて、三月十一日に新宿末廣亭昼の部で大初日を迎えた。 出番は師匠一之輔の前。 なんで。 どうして。 めちゃくちゃ緊張するじゃない。 せめて一本ぐらい離してくれても。 と思ったが、それがキッカケで取材なども入り、大初日に師匠と末廣亭の表で写真が撮れたのは嬉しかった。 師匠はすごく迷惑そうな顔をしていたが。 私のネタは「粗忽の釘」。 降りてすぐ師匠に「お先に勉強させていただきました!」と言ったら、 「俺がこのまま高座で釘やり直したいよ。」と

          『披露目の経過報告』 春風亭与いち