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ちょうかい? とりうみ? いいえ、とりかいです。 (3/5)

人物紹介です

たかやまさん

金髪スレンダーの麗しい女の子。スポーツは球技全般好き。野球ではスワローズを長年応援している。食欲旺盛で、スポーツ観戦中はずっとなにかしら食べたり飲んだりしている。

ささづかまとめちゃん

幼い頃にヴァンフォーレ甲府に所属していたハーフナー・マイク選手を好きになり、それからヴァンフォーレのファンになった。わたしです。


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本文です

リョータローのこと

わたしたちは自分たちの席がある方向と逆向きに歩いて、国立競技場をぐるっと一周してみることにした。

たかやまさん
「やっぱり気になるなあ、天井」

ささづかまとめ
「配管出てますねえ」

たかやまさん
「ここに木の板貼ろうとは思いつかなかったんだな」

ささづかまとめ
「あんまり皮肉を言わないでください」

たかやまさん
「うん。そういえばさーさちゃんは応援してるサッカー選手いる?」

ささづかまとめ
ハーフナー・マイク選手だったんですけど、引退しちゃいまして」

たかやまさん
「日本代表にいた人?」

ささづかまとめ
「あ、覚えてますか? だから今はいないんです」

たかやまさん
「私は中村さんを応援しようかな」

たかやまさんが今日の試合のスターティングメンバーを確認して、ボランチの中村亮太朗選手を選んだ。

ささづかまとめ
「中村選手はちょっと前までヴァンフォーレの選手だったんですけど、アントラーズに移籍して、でも今は期限付き移籍で戻ってきてるんです」

たかやまさん
スワローズの選手みたいな名前で好き」

ささづかまとめ
「あー、言われてみれば確かにいろいろ合体してますね」

たかやまさん
「新潟市の秋葉区出身なんだ」

ささづかまとめ
「秋葉区っていうと、新津あたりですよね」

たかやまさん
「あーやっぱり顔かわいいな」

ささづかまとめ
羽越本線キハ40系美男美女しか乗ってない事件ですね」

たかやまさん
「あれはやっぱり錯覚じゃなかったんだ。かわいかったんだ」

ささづかまとめ
「いちがやさんも含めて3人で体験しましたから、あれは本当ですよ」

たかやまさん
「いいな、リョータロー。かわいい選手を応援しよう」

ささづかまとめ
「推しができてよかったです」


もつ煮と山梨のこと

たかやまさん
「お店少ないね」

ささづかまとめ
「野球場に比べると少なく感じますね」

たかやまさん
「サッカーって時間短いし、試合観ながらごはん食べないんだろうね」

ささづかまとめ
「試合前に食べるんですよ」

たかやまさん
「たしかに外にキッチンカー出てた。片付け始めてたけど」

ささづかまとめ
「野球は長いし、休憩あるしで」

たかやまさん
だらだらやってくれるほうがごはん食べるにはいいね」

ささづかまとめ
「なにか食べたいもの見つかりました?」

たかやまさん
「んー。もつ煮くらい」

ささづかまとめ
そそられてないですね」

たかやまさん
「うん。本当はホームランバーガー食べたい。外野の」

ささづかまとめ
お肉4段重ねの。神宮は食べ物おいしいですよねえ」

たかやまさん
「そこの売店で売ってるもつ煮って普通のもつ煮かな?」

ささづかまとめ
「そうだと思いますけど」

たかやまさん
山梨のもつ煮食べたいな。何年か前にほうとう屋さんで食べたやつ」

ささづかまとめ
「ああ、馬もつ煮ですか」

たかやまさん
「そうそう、馬もつ煮。また甲府にごはん食べに行きたいな」

ささづかまとめ
「久しぶりに行ってみてもいいですね」


いろんな事情のこと

メインスタンド側の端まで進むと、鉄格子でできた扉が閉じている。

たかやまさん
「通路塞がれてる」

ささづかまとめ
「サポーター同士の衝突を防ぐためなんですかね? メルボルンのサポーターは30人くらいしか来ていないように見えますけど」

たかやまさん
「戻って席座ろうか。そろそろ前半終わって座りやすくなるだろうし」

ささづかまとめ
「そうしましょう」

メインスタンドから再びヴァンフォーレの応援団の後ろを通って、バックスタンドに戻る。その途中で、たかやまさんがあることに気がついた。

たかやまさん
「あのへん、ちょっとカラフルだね」

ささづかまとめ
「あれは他のJリーグのチームのファンですね。ヴァンフォーレは他のチームのファンにも応援に来てってお願いしてるんです。ヴァンフォーレのファンだけだと国立競技場埋まらなくて、赤字になる見込みでしたから」

たかやまさん
「ホームゲームなのに赤字?」

ささづかまとめ
「国立競技場借りてますからね。しかも、山梨から東京はわりと近いですけど、水曜の夜っていうのが集客的に難しいんだと思います」

たかやまさん
「普通の人は明日も朝から仕事だもんなあ…。山梨でできない事情があるの? スタジアムが小さいとか?」

ささづかまとめ
「キャパは満たしてるんですけど、スタジアムの設備がACLの基準に合ってないらしいです。座席の仕様とか」

たかやまさん
「そっかあ。でも呼びかけたら本当にほかのチームのサポーターが来てくれるなんてすごい。甲府って好かれてるんだ」

ささづかまとめ
「ヴァンフォーレのファンって基本的に温かい感じですからね。あんまり尖ってないというか」

たかやまさん
「ウェルカムな感じなんだ」

ささづかまとめ
「だと思います」

たかやまさん
「でもさ、東京でやってくれたおかげで私たちも気軽に観に来られてるし、実際お客さんはたくさん来てそうだし」

ささづかまとめ
「そうですね。たぶんこの感じは成功してますよね」

わたしたちが見るかぎり、1階席はアウェイ側の応援席を除いてほとんど満席のようだ。もともと2階席は使わない予定だったようだが、ヴァンフォーレのゴール裏に限っては2階席を開放しているほどの混みようだ。黒字になっていればいいなと思う。


シュールなたこ焼き屋と追加点のこと

たかやまさん
「あー、もうたこ焼きでいいから食べたいな。お腹すいたし」

バックスタンドまで戻ってくると、たこ焼きの専門店があった。目の前で男の子たちがせっせと焼いていて、香ばしい匂いが漂っている。

ささづかまとめ
「わたしも少しお腹空きました」

たかやまさん
「買ってくる」

たかやまさんが注文して商品を受け取るまでの間、わたしはたこ焼きの実演販売の様子を眺めていた。

たこ焼きの焼き台がいくつも横一列に並んでいて、男の子たちが串をくるくると回して器用にたこ焼きを焼いている。その後ろには学校の調理室のような大きなテーブルと白い壁。殺風景な中でたこ焼きが次々に焼かれていく様子はどこかシュールな感じがした。

たかやまさん
「さーさちゃん。ビール持ってくれる?」

たかやまさんの声で我に返る。たかやまさんはたこ焼きの入ったビニール袋を左腕に提げ、ビールのカップを両手に持ってこちらに歩いてきていた。急いで左手のビールを受け取る。

たかやまさん
「とりあえず乾杯」

ささづかまとめ
「かんぱーい」

本当は通路で試合を立見するのは禁止だが、通路をうろうろしながらビールを飲みつつちらちらと試合の様子をうかがう。前半も残り数分。ハーフタイムに入ったら席に着くことにしよう、と思っていると、ヴァンフォーレ甲府に追加点が入る

味方からのロングボールに相手ディフェンダーと競走になった鳥海芳樹選手がジャンプしながらバウンドしたボールに右足で触ると見事なループシュートになった。ふわりと浮いたボールはゴールに吸い込まれていく。国立競技場は大歓声。

たかやまさん
「すっごい身軽。上手だなー」

ささづかまとめ
「ディフェンダーの裏狙ってましたね! これで2-0!」

それから数分後、試合はハーフタイムに入って中断。観客たちがスタンドの階段をぞろぞろと上ってくる。たこ焼きのお店を見るといつの間にか何重にも列ができている。ビールを買うだけの人もいるだろうに、なんだか大変そうだ。

たかやまさん
「サッカーも15分くらいずつ休みながらやればいいのにな」

階段を上ってくる観客の列がなかなか途切れないのを見て、たかやまさんはぼやいていた。

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