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なぜかよく20キロ袋を運んでいる人生


先月から、隣町の農家さんにバイトに行かせていただいている。農業法人として、なかなかに大規模に農業を営んでいるところだ。

アスパラが主力商品なので、今は5月からの収穫に向けてアスパラ畑へ肥料を入れたり、畝に土を足す作業などをしている。なかなか重労働。

農業は昔から「3K(「きつい」「汚い」「危険」と言われている産業の一つである。やってみて改めてわかるけれど、確かに体力は相当必要である。女子だときつい作業も多い。特に思うのは、肥料・土・種、なんにせよ全てが大体重い。大体一袋20キロくらい。これが運べないとお話にならない。

この前は、土を畑まで運んで撒く作業をやった。
1日に3人で20キロ袋の土を300袋くらい運んだ。
単純計算で6トン….!一人あたり換算すると2トン….!
ちょっとハードな筋トレをしたくらいの筋肉の使用感で家路に着くわけだが、数字をみて納得。

この重さの袋を運ぶのは、初めてではない。
新卒で入社した会社でも20キロ袋をせっせと運んでいたのことがあった。

私は建材商社のタイル部門の営業をしていた。
お客さんは主に現場のタイル職人さん達で、職人さんから注文が入った材料を指定された場所までお届けするのが主な仕事である。

タイルのおうちに目がいく職業病


タイル工事に使用する材料も基本全部重い。
まず、タイルが重い。お茶碗などと同じく土からできた焼き物なのでどっしり。1ケース20キロくらいある。1ケース40キロくらいある大きなタイルもあった。

そして施工に使うモルタル、砂、接着剤、目地、それぞれ基本砂的な素材であり、これも一袋20キロであることが多い。これをまた水で練って使うんだから、現場も相当「重たい」仕事だ。

タイル職人の仕事は若者には不人気だそう。これもまた「3K」と言われてしまうのだろう。しかも数ある職人の中でも、一人前になるまでなかなか時間がかかる業種らしい。(クロス屋さんとかの方が早く一人前になれるから人気があると聞いたことがある。)

そんなタイル職人さんを相手に材料を販売する仕事。
基本は配送担当の人が注文があったものを運ぶのだが、営業ついでに納品したり、急ぎの現場で自ら運ばないと間に合わなかったりする時には、軽バンに積み込んで運んで現場まで運んで荷下ろししていた。
もちろん現場の職人さんも会社の人も運ぶのを手伝ってくれたけど、なかなか肉体労働な部分も多い営業の仕事だった。

でも、現場の仕事を見せてもらうのはすごく好きだった。職人さんそれぞれ自分のやり方やコツがあって、作業しやすい道具を手作りしていたり、使うタイルやその日の天気や気候でも施工の具合が変わるから、そういうのを都度読んでいたり、メーカー営業のマニュアル通りの知識を現場感覚で培った経験で言い負かしたり、お客さんから言われなくても自分のこだわりと美意識をもって仕事をしている人が多かった。

これは私が農業に対して感じるかっこよさとも似ていて、農家さんもタイル職人さんと同じように、自分の哲学と経験則の中で作物を育てていると思う。自然が相手だから、思い通りにはもちろんいかないし、バイト先の社長は「野菜を育てるのは子育てと一緒!」と言っていた。現場でパートさんやバイトに指示をするのも大変そうである。わたしも一生懸命理解しようとしてやってはいるが、分かりかねる部分も多いのは、マニュアル通りが通用しない世界の仕事だからだろう。

その感覚とかカンで決めていく感じ。農家さんやタイル職人さんに言わせれば、「当たり前のことをやっているだけ」なのだろうけど、農家でも職人でもない私からすれば、それがすごくかっこいいと感じる。

少し話はずれるが、中島岳志著の「思いがけず利他」という本の中で、著者は「民藝には与格性がある」と述べており、民藝の美しさについて「美はつくるのではなくやってくる」と表現していた。

ここでいう与格性とは「流れに身を任せ宿ったものを表現すること」であり、反対語は「主格性=私が生み出すこと」である。

また、「このような与格的主体のあり方は、多くの「名人」「職人」「達人」と言われる人たちによってさりげなく語られてきた。」とも書かれており、「技の極意=やってくる力(not自分の力)」らしかった。
(端折りすぎている説明なので、詳しくは本を読んでみてください!)


でもこれを読んで、なるほど、農家さんもタイル職人さんも与格的主体なあり方で仕事をしている方々なのかもしれないなと思った。本人たちが意識せずとも、そこに宿っている何かに私は惹かれるのだろうか。


まあそれを言ったらどの仕事にもそれは宿るのだろうとも思う。
その道でない人から見たら、すべてすごいしかっこいいし特別。
わたしはたまたま農家さんとタイル職人さんを身近で見てくることが多かったからその二つの仕事をする人に対して、そう思うのかも。

「20キロ袋を運びがち」という共通点からそんなことを思った最近だった。

外で汗かいて働くのは気持ちがいいから20キロを運ぶのもきついけど苦ではない。
ジムに行かなくても筋トレできるなんて経済的だし。
次のシフトでも重いの運ぶ作業あるかな(わくわく)。
体力つけておこう。



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