見出し画像

個人レベルの誤・偽情報対策のツールボックス公開

27人の世界の研究者が参加した誤・偽情報対策のツールボックスが公開された。

Toolbox of Interventions Against Online Misinformation
https://interventionstoolbox.mpib-berlin.mpg.de/index.html

●概要

81の論文で取り上げられた誤・偽情報への対処方法のConceptualツールボックスと、裏付けとなるEvidence(対策をテストした方法と実験など)ツールボックスがある。ツールボックスには、下記の9つの種類の対策がある。
accuracy prompts
debunking and rebuttals
friction
inoculation
lateral reading and verification strategies
media-literacy tips
social norms
source-credibility labels
warning and fact-checking labels

・Conceptualツールボックス

概念的な要約であり、9種類の対策は3つのカテゴリーがある。

Nudges 誤った情報を共有しないようにするなど行動に影響を与える。accuracy promptsやsocial normsなどが有効。
Boosts and educational interventions 教育によってリテラシーを向上させたり、ヒントを与えることで誤りを冒さないようにするなど。lateral reading and verification strategies、inoculation、media-literacy tipsなどが有効。
Refutation Strategies デバンキンやプレバンキング。debunking and rebuttals、source-credibility labels、warning and fact-checking labelsなどが有効。

・Evidenceツールボックス

9つの対策について、81の論文をもとにした証拠が整理されている。ここで注意しなければならない点が3つある。

1.ほとんどが欧米、特にアメリカのものであることだ。debunking and rebuttals、accuracy prompts、media-literacy tipsなどは文化などによる違いが出る。今回の論文でもインドやパキスタンでの結果は欧米のものと異なっていた。
2.長期的有効性についての論文はほとんどなかった。
3.調査、測定方法は論文によって大きく異なり、そのまま比較することはできない。この点についてはかなり掘り下げて議論しているので関心ある方には役に立つと思う。

●感想

このツールボックスは、81の論文の内容を精査、追試しているわけはなく、SNSプラットフォームなどが行っている対策は含まれていないなどの限界があることが示されている。論文も数も他の研究に比べると多いとは言えず、パイロット研究的な意味合いが強そうな印象を受けた。ちなみに以前とりあげた過去の研究を調査した記事の紹介は下記。

10の偽情報対策の有効性やスケーラビリティを検証したガイドブック
https://note.com/ichi_twnovel/n/n01ce8bb38ef3
誤・偽情報についての研究がきわめて偏っていたことを検証した論文
https://note.com/ichi_twnovel/n/n3f673e3d2b3e

好評発売中!
『ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する』(原書房)
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパ

本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。