見出し画像

ウクライナ国内に対するロシアの情報戦 「In Ukraine, Russia tries to discredit leaders and amplify internal divisions」 #DFRLab_U2nd

これはDFRLabによるウクライナ侵攻2年目の総括のパート1です。
全体構成は
序章を参照。

ウクライナ国内に対するロシアの情報戦 「In Ukraine, Russia tries to discredit leaders and amplify internal divisions」 https://www.atlanticcouncil.org/in-depth-research-reports/issue-brief/in-ukraine-russia-tries-to-discredit-leaders-and-amplify-internal-divisions/

ロシアは2023年を通じて、ウクライナの士気と同国の戦闘意欲を低下させることに焦点を当てていた。一般的だったテーマは、ウクライナの文民や軍事指導者の信用を失墜させるナラティブ、ウクライナを信頼できないパートナーとして描写すること、国内闘争を増幅させるメッセージ、ウクライナの市民社会や一般市民を標的にした偽情報などが行われた。

以前は主にゼレンスキー大統領に焦点を当てていたが、2023年には他の政府高官、軍人、地方当局にまで対照が広がった。ウクライナの前国防大臣であるオレクシー・レズニコウを標的とした汚職疑惑を広める大規模なTikTokネットワークを発見した。TikTokで12,800 以上のアカウントが使われたのは異例の規模だ。TikTok はロシアを拠点とする秘密工作によるものとし、同プラットフォームで発覚した過去最大の情報工作で少なくとも7つの言語で公開され、各アカウントは1つの動画をプラットフォームにアップロードしていた。
このキャンペーンは、それほど洗練されたものではなかったが、その規模の大きさから数億回の閲覧に達した。さらに他のSNSにも拡散し、1つの動画がYouTube、Twitter、BitChuteで500万回以上再生された事例もあった。Xには翻訳されたものなども投稿され、広く拡散した。
他には、ウクライナのファーストレディが訪米中に高級宝飾品を購入したという動画が数百万閲覧されたり、ウクライナが西側の軍事援助を麻薬カルテルやテロリスト集団に流しているという動画などさまざまなものがあった。
ロシアは敵対国の国内問題を巧みに利用する。ウクライナ全土がミサイル攻撃、停電、空襲警報に苦しんでいるが、ロシアの侵攻による被害は地域によって大きく異なり、南部と東部が最も大きな被害を受けている。そこで、被害の大きな地域と小さな地域の差を煽るような発信もしていた。
Telegramやその他のSNSにウクライナの将来、苦戦する軍事的反攻、同盟国がウクライナを見捨てるといった有害で悲観的なコンテンツも増幅されていた。

こうした拡散の裏で、YouTubeやTikTokの動画に「いいね!」に対して報酬を支払っていた。また、ドッペルゲンガーとして知られる、大手メディアなどを偽装したサイトを使った作戦も行われた。

●感想

ロシアからウクライナ国内への攻撃はうまくいっておらず、日本の多くの識者はここだけをとらえて失敗としているようだ。しかし、ハイブリッド戦あるいは全領域での戦いとして考えるなら、それはあまりにも近視眼的と言える。
DFRLabの今回のレポートにおいて、ウクライナ国内への攻撃は6章のうちの1章に過ぎない。

●DFRLabによるウクライナ侵攻2年目の総括

序章 https://note.com/ichi_twnovel/n/n276580f76ffc
パート1 ウクライナ国内に対するロシアの情報戦 「In Ukraine, Russia tries to discredit leaders and amplify internal divisions」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n689b35630899
パート2 ロシア国内監視状況 プリゴジン後のネット監視 「After Prigozhin, Russia clamps down online」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n0578afbf9637
パート3 ロシアのヨーロッパとアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアに対する情報戦 「In Europe and the South Caucasus, the Kremlin leans on energy blackmail and scare tactics」
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc5fc96fed79a
パート4 ロシアのラテンアメリカに対する情報戦 「In Latin America, Russia’s ambassadors and state media tailor anti-Ukraine content to the local context」https://note.com/ichi_twnovel/n/nad62ce2dfc8a
パート5 ロシアのアフリカに対する情報戦 「Two-pronged approach to Africa pays dividends for Russia」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n9e812531321a
パート6 ロシアの中東に対する情報戦 「Complicated history helps Russian narratives about Ukraine find a foothold in the Middle East」
https://note.com/ichi_twnovel/n/ne3f0507fa308
DFRLabウクライナ侵攻2年目の総括の感想
https://note.com/ichi_twnovel/n/n4605b841d507

好評発売中!
『ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する』(原書房)
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。


本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。