META(旧フェイスブック)社の2021年影響工作振り返りレポート

昨日、META社が2021年に同社が対処した影響工作をまとめたレポートを掲載したので、ご紹介したい。

Recapping Our 2021 Coordinated Inauthentic Behavior Enforcements(2022年1月20日、https://about.fb.com/news/2022/01/december-2021-coordinated-inauthentic-behavior-report/)

META社の一連の影響工作に関するレポートは関係者必読の充実ぶりである。特に下記は充実している。

フェイスブックの影響工作レポートは安全保障関係者およびサイバー関係者必見の力作!
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc1e0c22aa003

なお、よく登場するCIBとは、協調的違反行動(Coordinated Inauthentic Behavior)のことで戦略的目的を持った影響工作のための連携した活動を指す。私がネット世論操作と呼んでいるものの一部であり、フェイクニュースもその一部に含まれることもある。

●META社の活動概要
2021年にMETA社は、30カ国以上から発信された52のネットワークを削除したが、その大部分は、自国の国内利用者をターゲットにしていた。戦略的な目的のために国民の議論を操作したり、堕落させたりするために協調して活動しており、正体を隠すために偽のアカウントを大量に使用していた。これらのネットワークは、ラテンアメリカ、アジア太平洋地域、ヨーロッパ、中東、アフリカを含む34カ国で確認された。

META社は、2017年以降、150以上の影響工作について、各ネットワークの詳細を報告してきた。これにより、多くの人々に、META社が直面している脅威について伝え、調査ジャーナリスト、政府関係者、業界関係者の役に立てた。

ネット世論操作で自国内向けが多いのは基本だが(グラフでも50%がそう)、経年変化がけっこうあるのは興味深い。

・研究者への分析データの提供
2018年以降、META社は研究者に情報を共有している。2021年には、新たな戦術や脅威の進化に関して深堀りしたレポートの公開を開始行った(3月、4月、7月、10月、11月)。先月、約100種類のデータセットを備えたベータ版の研究プラットフォームを、多くの研究者に拡大提供した。このプラットフォームでは、研究者がこれらの活動を定量的・定性的に可視化して評価できる生データへのアクセスやMETA社独自の調査・分析結果も公開している。
(筆者の疑問)日本でここに参加している研究者はいるんだろうか?

・脅威の報告を新たな分野に拡大
2020年以降、META社は脅威の報告対象を、サイバースパイ、金銭的な動機による活動などの有害な活動までに拡大した。


●2021年12月の調査結果の概要

META社のチームは、国内外を問わず、世界中で行われている不正な行動(CIB)の発見と排除に引き続き注力している。12月には、イラン、メキシコ、トルコの3つのネットワークを削除した。

12月に削除した新たなCIBネットワークに関連する数字は以下の通り。

削除したFacebookアカウントの総数 61
削除したインスタグラムのアカウント数 151
削除したページの総数 305
削除したグループの総数 3

・削除したCIB
1.イラン
スコットランドを中心とした英国の視聴者を主なターゲットとしたイランのフェイスブックアカウント8件とインスタグラムアカウント126件を削除した。この活動は、この地域でCIBの可能性について調査を行った結果、英語を教えている経歴を持つ人物など、イランの個人とのつながりが発見された。

2.メキシコ
フェイスブックの12アカウント、172ページ、インスタグラムの11アカウントを削除した。このネットワークは、主にメキシコで現れ、ホンジュラス、エクアドル、エルサルバドル、ドミニカ共和国、メキシコの視聴者をターゲットにしていました。この活動の一部に関する報告を確認し、メキシコのPR会社Wish Winとのリンクが見つけた。

3.トルコ
41のフェイスブックアカウント、133のページ、3つのグループ、14のInstagramアカウントを削除した。主にトルコから発信され、リビアの人々をターゲットにしていました。このネットワークは、過去に報告された「なりすまし」に関連したリビアでのCIBに関する内部調査で発見された。この活動は、ムスリム同胞団傘下のリビア正義建設党と関連していた。


●CIBについて
META社は、CIBを、戦略的目標のために公共の議論を操作する協調的な取り組みであり、偽のアカウントがその活動の中心であると考えている。このような活動には、次の 2 つの段階があります。1)国内の非政府キャンペーンの文脈におけるCIB、2)外国または政府機関のためのCIB。

・CIBへの対処
偽のアカウントを使って正体を隠しているアカウントやページのグループを含むキャンペーンを発見した場合、この活動に直接関与している不真正および真正のアカウント、ページ、グループの両方を削除する。

・継続的な取締り
以前に削除したネットワークが、フェイスブック上で再び存在感を示そうとしているかどうかを監視している。自動検出と手動検出の両方を用いて、過去に削除したネットワークに関連するアカウントやページを継続的に削除している。

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Metaの四半期脅威レポート、プリンストン大学の情報戦統計は他ではあまりないかも。Metaは四半期毎なので数も多いです。 どちらも元は無償公開されているのでそちらを読んだ方がよいのは確かです。

Metaの四半期脅威レポート、プリンストン大学の情報戦統計、民主主義指数、V-Demなど定期的な資料の紹介記事。ご自分で記事を遡れば無料で…

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