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ロシア国内監視状況 プリゴジン後のネット監視 「After Prigozhin, Russia clamps down online」 #DFRLab_U2nd

これはDFRLabによるウクライナ侵攻2年目の総括のパート2です。
全体構成は
序章を参照。
ロシアは、国内での戦争に対するネガティブな発言に神経をとがらせていた。2023年における最も大きな問題は2023年6月に起きたプリゴジンの反乱だった。当初、ロシア政府はプリゴジンのメッセージの拡散を制限しようとしたが、抑えきれなかった。Telegramの親ロシア派のチャンネルはロシア政府とワグナーへの支持でやや分裂した。
ロシアのプロパガンダメディアは、まずプリゴジンの信用を失墜させようとし、次にプリゴジンを取り上げないように変化した。2023年7月13日から8月22日までロシアの主要プロパガンダメディアにプリゴジンの名前は登場しなかった。
ロシアは国内での検閲と監視を強化し続けた。監視検閲機関であるRoskomnadzorはOculusと呼ばれるインターネット監視システムを立ち上げた。このシステムは画像やシンボル、指定されたシーンや行動を認識し、写真やビデオのテキストを分析し、過激なテーマ、大規模な違法イベントの呼びかけ、自殺、麻薬推進コンテンツ、LGBTのプロパガンダなどを検出するという。
RoskomnadzorはVeprというプロジェクトも運営していた。反戦的なソーシャルメディアへの投稿を検閲し、ロシアの公式見解を広めるためにボットファームを使用するプロジェクトだったようだ。
ロシアと中国が検閲やインターネット統制の方法について協力していたことがわかっている。

デジタル徴兵制の施行により、厭戦ムードを払拭するための徴兵の通知を無視すると罰則も定められた。徴兵に応じないと、運転免許を停止し、私有財産を処分できることができるようになっている。

西側社会内の分裂もうまく利用した。イデオロギー的には正反対の西側の極右と極左の政党が、ロシアに有利な条件での和平合意を求めるプーチンの要求と同じ主張をしていたこともある。
ハンガリーのヴィクトール・オルバン、フランスのマリーヌ・ルペン、ドイツのサハラ・ヴァーゲンクネヒトのようなロシアに同調するポピュリストの指導者たちとともに、戦争を引き起こしたのは西側諸国とNATOの拡大だと非難しながらロシアの地域的野心を軽視する知識人や影響力を持つ人々をうまく利用した。

イーロン・マスクがツイッター社を買収した後、ツイッター=Xは西側におけるロシアのプロパガンダの重要なツールとなった。青いチェックマークをつけたXのアカウントがウクライナに関する親クレムリン派のシナリオを増幅させ、プラットフォーム上の何百万人ものユーザーにリーチしている事例が研究者によって数多く記録されている。


●感想
国内の話だったのが後半は国外の話が多くなったので、よくわからなかったけど、これは国外と国内両方に影響を与えようとしたという話なのかもしれない。正直、このパートはいまひとつだった。
国内の監視検閲については、このnoteで以前取り上げた下記を情報源としているが、実態はかなり手作業だったようだ。
GRFCによるAI監視 ロシアの検閲強化 https://note.com/ichi_twnovel/n/n05cf1f760ec5
本レポートではOculusとVeprの2つが紹介されていたが、実際にはMIR(インターネット監視情報システム)、Vepr(情報脅威の発見、予測)、Oculus(AIによる画像、動画検閲)の3つがあった。

イーロン・マスク買収後のXがプロパガンダの狩り場になったのはほんとうにその通りで、下記のグラフ(例としてRTのフォロワー数)のようにプロパガンダの活動が急増した。

「State-controlled media experience sudden Twitter gains after unannounced platform policy change」(2023年4月21日、https://dfrlab.org/2023/04/21/state-controlled-media-experience-sudden-twitter-gains-after-unannounced-platform-policy-change/)

ツイッター社が3月29日にロシア、中国、イランのプロパガンダメディア規制を緩和し、フォロワーとエンゲージメントが急増 https://note.com/ichi_twnovel/n/naa355bceaf24

●DFRLabによるウクライナ侵攻2年目の総括

序章 https://note.com/ichi_twnovel/n/n276580f76ffc
パート1 ウクライナ国内に対するロシアの情報戦 「In Ukraine, Russia tries to discredit leaders and amplify internal divisions」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n689b35630899
パート2 ロシア国内監視状況 プリゴジン後のネット監視 「After Prigozhin, Russia clamps down online」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n0578afbf9637
パート3 ロシアのヨーロッパとアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアに対する情報戦 「In Europe and the South Caucasus, the Kremlin leans on energy blackmail and scare tactics」
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc5fc96fed79a
パート4 ロシアのラテンアメリカに対する情報戦 「In Latin America, Russia’s ambassadors and state media tailor anti-Ukraine content to the local context」https://note.com/ichi_twnovel/n/nad62ce2dfc8a
パート5 ロシアのアフリカに対する情報戦 「Two-pronged approach to Africa pays dividends for Russia」 https://note.com/ichi_twnovel/n/n9e812531321a
パート6 ロシアの中東に対する情報戦 「Complicated history helps Russian narratives about Ukraine find a foothold in the Middle East」
https://note.com/ichi_twnovel/n/ne3f0507fa308
DFRLabウクライナ侵攻2年目の総括の感想
https://note.com/ichi_twnovel/n/n4605b841d507


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