一田和樹のメモ帳

広義の文筆家。小説家と呼ばれることが多い。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員…

一田和樹のメモ帳

広義の文筆家。小説家と呼ばれることが多い。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員 https://ichida-kazuki.com 連絡先 https://ichida-kazuki.com/post/650695238157058048/

マガジン

  • デジタル権威主義

    デジタル権威主義についての情報を発信してゆきます。 当面は備忘録代わりにニューズウィーク日本版などに発表した記事の資料を掲載します。余裕できたらオリジナル記事を書くかもしれません。

  • 民主主義の現在

    民主主義に関する資料や記事などを紹介します

  • 余談ですが……

    日常的なものごとです

  • ファクトチェックを取り巻く課題

    ファクトチェックを取り巻く課題をビジネスなどの側面。特にパトロンとなっているフェイスブックやグーグルの問題点を取り上げています。

  • 2022年ウクライナ関連

    ウクライナ関連のネット世論操作などの記事です

最近の記事

中国のプロパガンダシステムの全体像をインタラクティブなモデルに整理した画期的な「Truth and reality with Chinese characteristics」

Australian Strategic Policy Institute(ASPI)は2024年5月2日に中国のプロパガンダシステムの全体像を整理したレポート「Truth and reality with Chinese characteristics」( https://www.aspi.org.au/report/truth-and-reality-chinese-characteristics )を公開した。 網羅的で貴重な調査研究であり、莫大な情報はレポートに収まり

    • ロシアによる情報ロンダリングをEast Stratcomが分析、レポート

      024年5月1日(WEBには5月1日、PDFには4月と記載)、East Stratcom Task Forceの運営するEUvsDisinfoで「Building a false façade」( https://euvsdisinfo.eu/building-a-false-facade/ )が公開された。このレポートはロシアによる西側のウクライナ支援を弱体化させることを狙った情報ロンダリングについてまとめたものだ。 ロシアによる作戦「false façade」は23以上

      • アフリカの安価な労働に支えられるAI AIは偏見と権力をより強化する

        AIは現在、研究サプライチェーンの上位に位置している。下流には発電所、資源採掘、AIトレーニングなどさまざまな労働が存在している。ケイト・クロフォードは、「Atlas of AI」の中でAIの搾取現場を見て歩いている。AIを支える搾取構造が示すのは、偏見と権力をより強化する新しいメカニズムの誕生に他ならない。 AIの学習に使われている過去のニュースなどの著作権の話題がよく出るが、ネットで収集可能な過去のデータ蓄積は圧倒的に欧米が多い。ナイジェリアの家族に起きた事件などはそこに

        • クライアントの望む記事をWikipediaに登録するビジネスを統計的に可視化

          ISDは2024年4月29日に、「Identifying Sock-Puppets on Wikipedia: A Semantic Clustering Approach」( https://www.isdglobal.org/isd-publications/identifying-sock-puppets-on-wikipedia-a-semantic-clustering-approach/ )を公開した。このレポートはWikipediaに広がっているクライアントから

        中国のプロパガンダシステムの全体像をインタラクティブなモデルに整理した画期的な「Truth and reality with Chinese characteristics」

        マガジン

        • 民主主義の現在
          331本
        • デジタル権威主義
          189本
        • 余談ですが……
          160本
        • ファクトチェックを取り巻く課題
          34本
        • 2022年ウクライナ関連
          81本
        • 定期資料置き場
          21本
          ¥10,000

        記事

          誤・偽情報対策の決め手? 公衆衛生フレームワークは汎用的な情報エコシステム管理方法だった

          2024年4月19日に公開された論文「Beyond misinformation: developing a public health prevention framework for managing information ecosystems」( https://doi.org/10.1016/S2468-2667(24)00031-8 )はコロナ禍でのインフォデミックを反省材料にして、インフォデミック予防するためのアプローチを整理したものである。ここで提示されたアプ

          誤・偽情報対策の決め手? 公衆衛生フレームワークは汎用的な情報エコシステム管理方法だった

          ドイツで成功した中国の影響工作

          ロシアがドイツで影響工作を進めていることは何度も紹介したが、中国も同様に成功していたことが2024年年10月に暴露された。 Das China-Gate des AfD-Spitzenkandidaten https://www.t-online.de/nachrichten/deutschland/innenpolitik/id_100247784/afd-maximilian-krah-das-geld-aus-china-und-die-geheimdienste.h

          ドイツで成功した中国の影響工作

          国内が崩壊しつつあるのはアメリカだけではない ISDのイギリス国内過激派レポート

          ISDが2024年4月26日に、イギリスが直面している過激派、ヘイトグループ、海外からの干渉の脅威を分析したレポート「Beyond Definitions: The Need for a Comprehensive Human Rights-Based UK Extremism Policy Strategy」( https://www.isdglobal.org/isd-publications/beyond-definitions-the-need-for-a-compr

          国内が崩壊しつつあるのはアメリカだけではない ISDのイギリス国内過激派レポート

          気になった論文や記事2024年4月26日

          4月20日から4月26日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。 ●プーチンのファクトチェック権威主義国では「ファクトチェック」に名を借りた言論統制がよく行われており、世界のフェイクニュースに関連した法律のほとんどは言論の抑圧に用いられている。 ロシアではRTを始めとするプロパガンダメディアを駆使して、「ファクトチェック」にいそしんでいる。検証されたわけではないものの、ファクトチェックが誤・偽情報対策に

          気になった論文や記事2024年4月26日

          欧米の轍を神速で駆け抜ける日本の誤・偽情報対策

          すでに何度か書いたようにアメリカやヨーロッパで行われている誤・偽情報対策には検証された効果なく、逆効果になっている可能性が指摘されている。そのことを如実に示しているのは民主主義関連指標の悪化と、SNSに起因する暴力行為の増加や抗議活動の大規模化だ。誤・偽情報が社会を不安定化し、混乱に陥れるものであるなら、その成果はこうした指標によって確認できる。結果としてはやればやるほど悪くなっている。 最近の論文や資料から見えてくるデジタル影響工作対策の問題点 偏りがあるうえ有効の検証が

          欧米の轍を神速で駆け抜ける日本の誤・偽情報対策

          世界最大の民主主義イベント インド選挙の実態

          2024年4月19日Asia Democracy Research Network(ADRN)のADRN Issue BriefingにNiranjan Sahooの「Decoding India’s 2024 National Elections」( http://www.adrnresearch.org/publications/list.php?cid=1&idx=358&ckattempt=3 )が掲載された。この論考は注目を浴びる世界最大の「民主主義国」インドの選挙

          世界最大の民主主義イベント インド選挙の実態

          AIのもたらす経済変化が極右を増加させる

          ブルッキングス研究所が4月25日に公開した「Does automation increase support for the far right?」( https://www.brookings.edu/articles/does-automation-increase-support-for-the-far-right/ )によると、作業の自動化によって起こる経済不安は政治的偏向を強める傾向がある。 ドイツ、スイス、イギリスでは仕事を失ったり辞めたりした労働者は左翼政党を支

          AIのもたらす経済変化が極右を増加させる

          ロシア影響工作には効果があるのか? 論文からわかる答え

          デジタル影響工作が人間の行動に与える影響については科学的に検証され、答えが出ているわけではない。では、なぜこれほど騒ぎになっているかといえば攻撃が可視化されているからである。攻撃されているのが国民にわかる状態である以上、対策を行わないわけにはいかないためだろう。しかし、ニュースで取り上げたり、対策を大々的に行うことは警戒主義に陥る可能性が高い。 実際、効果についての検証を行った論文のひとつは、直接の効果は検証できなかったものの、二次効果の可能性に言及している。2016年のアメ

          ロシア影響工作には効果があるのか? 論文からわかる答え

          中国で新設された情報支援部隊を煽る日本のメディアと、防衛研究所などの温度差

          「中国、戦略支援部隊の廃止と組織変更 日本、台湾のメディアを利用して失敗を糊塗?」( https://note.com/ichi_twnovel/n/n2ad2a18b196e )で書いたように、NHK、読売、日本経済新聞、朝日新聞など大手メディアの多くは中国発の情報をそのままあるいは大きな変化とか脅威増大ととれる表現を用いていた。 一方、前・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和の「突然発表された中国人民解放軍の大改革、その詳細とこれまでの経緯」( https://jbpres

          中国で新設された情報支援部隊を煽る日本のメディアと、防衛研究所などの温度差

          ステージが変わったアメリカのデジタル影響工作 主役は中露イランではなく国内アクター?

          ●概要アメリカのデジタル影響工作が変化している。予想された当然の変化だが、ここまで無策だったことに驚く。下記の記事によると、アメリカで匿名のX利用者がヘイトや偽情報を発言するとイーロン・マスクやトランプなどウルトラ・インフルエンサーが拡散するようになっている。イーロン・マスクが閲覧数に応じた報酬を与えるようにしたため、それを狙う利用者はイーロン・マスクやトランプなどのウルトラ・インフルエンサーが好むヘイト、偽情報、陰謀論を投稿を増やす。こうしたエコシステムが出来ている。 A

          ステージが変わったアメリカのデジタル影響工作 主役は中露イランではなく国内アクター?

          デジタル影響工作ゲームが紹介されていた 真偽判定、なりきりBBCレポーター、世論操作のシミュレーションまで

          ゲームで学ぶデジタル影響工作というわけで、「Educational Games」( https://conflictmisinfo.org/educational-games/ )で8つのゲームが紹介されていた。 なお、ゲームの安全性が保証されているわけではないので利用はご自身の責任でお願いします。 1.EUvsDisinfo Quiz( https://euvsdisinfo.eu/quizzes/euvsdisinfo/ ) 情報の真偽判定ゲーム。画像と文章を読んで真偽

          デジタル影響工作ゲームが紹介されていた 真偽判定、なりきりBBCレポーター、世論操作のシミュレーションまで

          中国、戦略支援部隊の廃止と組織変更 日本、台湾のメディアを利用して失敗を糊塗?

          まだあまり情報が出ていませんが、どうも戦略支援部隊(SSF)がうまくいかなかったために組織を変えることにしたという見方も多いようです。私は軍事には素人なので、あくまで主としてデジタル影響工作をいろいろ調べていて感じた個人的な感想であり、備忘録の思いつきメモとしてご覧ください。 もちろん、日本や台湾では認知戦、心理戦に本格的に対応した新部隊の設立ということで危機感を持った報道が多くなることが予想される。言い方は悪いが、ウクライナとガザさらには中東情勢悪化から、台湾への国際的な

          中国、戦略支援部隊の廃止と組織変更 日本、台湾のメディアを利用して失敗を糊塗?