見出し画像

【二次創作小説】ふたりは従兄妹

こちらは「太陽よりも眩しい星」の二次創作小説です。
昴ちゃん目線の、神城昴✕神城兄のお話です。

※神城兄の名前が未公開のため、「神城 大輝(だいき)」と仮名をつけさせていただいています。
名前ごと妄想なのでご注意ください🙇

※イラストは たぽさん に描いていただきました。たぽさん、キュートな昴ちゃんをありがとうございました♡


北高の入学式から3日目の朝。

「ねぇ、あれって神城先輩の…」

背後から話し声が聞こえる。
はぁ、またか。

私はゆっくり振り返り、こちらを見てヒソヒソ話していた二人組の前に立つ。

焦る女子ふたりの目を見てにっこり笑った。

「2年の先輩ですよね?言いたいことがあるなら、コソコソしないで本人に言ったらどうですか?」

***

私は神城昴。
私には家族のように仲良くしてきた従兄弟がいる。
大輝と光輝のふたりだ。

2コ下の光輝はガキだから置いとくとして、2コ上の大ちゃんは呆れるほどモテる。

確かに、勉強もスポーツもできるし背は高い。
顔も整っていると言えなくもない。
ゆるふわの天パは、小さい頃はモジャモジャ頭とか言われてたのに、いつの間にかオシャレっぽい雰囲気を醸し出すのに成功している。

ヘラヘラしてて弟をパシってばかりの大ちゃんのどこがそんなにいいんだかわからないけど、女子の皆様には余裕ある男の立ち振る舞いに見えるらしい。

そんなわけで小さい頃から大ちゃんの一番近くにいる私は、中学では大ちゃんを好きな女子から煙たがられたり、無関係な外野に「ふたりお似合いじゃん?」と無責任にくっつけられそうになったりしてきた。

高校こそは大ちゃん関連の面倒から逃れようと思っていたのに、偏差値の兼ね合いで結局同じ北高になった。
しかも新入生代表で挨拶したあと、わざわざ大ちゃんが「おー、かっこよかったぞ」って声をかけてくるからあっという間に親戚だとバレてしまった。

あー、めんど。

***

「なー、昴対戦しよ」
「やだ、いまこれ読んでる」
「ちぇー」

うちは親が共働きで帰りが遅い。
だから用事のない放課後は、近所にあるおばさんの家で好きに過ごすことが多い。

光輝は部活なので今日は大ちゃんとふたりだ。
と言っても大ちゃんはゲーム、私は好きに本を読んでいる。

「あっくそ」とか言いながらゲームしてる大ちゃんを私は横目で見る。

「あのさ、一応訊くけど受験生じゃなかった?」
「まだ春だしへーきへーき」

テキトーなことを言ってヘラヘラ笑っている。
これがモテるってほんとに意味がわからない。

「なぁ昴、生徒会入るの?」
「なんか祭り上げられそうな雰囲気」
「ふっ中学んときと同じじゃん」
「別に人前に出るのきらいじゃないからいいんだけどさ」
「お前はそうだよね、むしろ好きそうだよな」
「好きって程じゃないんだけどね」

でも、モタモタしてるリーダー役を見てイライラするよりは自分でやったほうが気が楽なんだよね。

こんなこと言ったら一気に嫌われるんだけど。

「昴は他の奴が苦労してるの見るより、自分でやるほうが気楽なんだよな」

思わず大ちゃんの顔を見る。
こいつ、心が読めるのか?

大ちゃんもこっちを見てニヤリと笑う。
「図星だろ」

「あーイトコってやだやだ」
「昴の考えてることなんてお見通しだよ、めっちゃ顔に出るし」
「そお?怖いとかよく言われるけど」
「嬉しいときはニコニコして、面倒くさいときは怖い顔して、すげーわかりやすいじゃん」

そ、そうなのか。
気をつけよう。

***

もうすぐ高1が終わる。
嫌がらせみたいなものが断続的に続いた1年間。大ちゃんが卒業したら、きっともう少しは平和になるだろう。

いや、大ちゃんだけのせいとも言えないか。
私も気が強くて、何でも口に出しちゃうから。

結局、高校でも大ちゃんの影響からは逃れられなかった。

特に今年の学祭で、ミスター&ミスコンでふたりで優勝して並ばされて、大ちゃんの彼女から呼び出されて泣かれたのはキツかった。

ついでにミス北高だからと興味のない男たちから告白されまくった。
もちろん一蹴したけれど、なぜか一部の女子に恨まれる羽目になっていいことなしだ。

「来年は生徒会から圧力をかけて、ミスター&ミスコンを廃止する!」と固く決意する。

大ちゃんは明日卒業する。
結局ヘラヘラ遊んでたせいで志望校に落ち、浪人するらしい。
いちおう、日本でいちばんの大学を目指してるらしいのだが。受験舐めすぎでしょ。

あんなんを予備校に通わせるおじさんおばさんはめちゃくちゃ心が広いと思う。

***

高2。
私は生徒会に部活にと忙しく、大ちゃんちに行く頻度はかなり減った。

それでもあの家でのんびり過ごす時間がむしょうに恋しくなることがあり、時間を見つけて遊びに行っていた。

さすがに真面目に勉強するようになった大ちゃんはもうゲームをしないので、家の中で勝手に本を読んで過ごした。

おばさんが料理をする音を聴きながらリビングで読むのもすきだし、大ちゃんの部屋で過去問を解くシャーペンの音を聴きながら読むのも意外と居心地がよかった。

秋からの大ちゃんは、浪人生のくせに光輝の受験勉強を見ていた。
光輝は秋頃からいきなり北高を目指し始めたのだ。
光輝の成績だと北高はわりと無謀なんだけどね。
兄ちゃんの背中目指してんのかな?と思ったりした。
ブラコンだから。

光輝は塾には通わないらしく、大ちゃんは自分が予備校に通っているせいだと思って面倒見てたのかもしれない。

しかし冬。
絶対ムリだと思っていた光輝を北高に合格させたうえ、自分も東大に合格した。

「え、すごくない???」
思わず言ったら、大ちゃんはいつものようにヘラヘラ笑って言った。

「昴、俺のすごさにいまさら気づいたの?」

得意げに言うから、「現役ならもっとかっこよかったけどね?」と言い返した。

そんなわけで、春から大ちゃんは東京へ行く。

***

大ちゃんのお見送りは親戚が集合して賑やかだった。

ついでだからと新千歳空港の温泉にみんなで行くことになったのだ。

「みんな俺の見送りじゃなくて楽しんでるだけじゃない?」
大ちゃんがブツブツ言っている。

「それでもこんなに集まってくれるなんてありがたいじゃん」
従兄の優ちゃんが柔らかく笑う。

「俺も温泉入りたくなるよね」

大ちゃんがのんきなことを言い始めたので、
「飛行機遅れるよ」
と私はツッコむ。

そんな軽口を叩きつつ、「もうこんなふうに話すこともなくなるんだなぁ」とぼんやり考えていた。

「あのさ」
大ちゃんがこちらを向き、改まって言う。

「光輝のこと、頼むな。あいついつまでも子供だから」
「わかった、大ちゃんのぶんもイジメとく」
「それでこそ昴」
大ちゃんはニヤリと笑う。

「君らはほんとに仲がいいねぇ」
優ちゃんがのんびりと言う。

「ねぇ、もしかして俺の話してる!?」
急に光輝が割り込んできて、私と大ちゃん、優ちゃんの3人は顔を見合わせて笑った。

その日、大ちゃんは旅立った。
大ちゃんの彼女は見送りには来なかった。
とっくの昔に別れたのだと、あとから聞いた。

***

光輝は北高に入学して、私の後輩になった。

めちゃくちゃウケることに、中学の間に背が伸びた光輝は女子にモテるようになっていた。

同学年の子たちに「サッカー部の神城って昴の弟?」とよく訊かれる。

しっかり者だと思ってた友達にまで訊かれて、思わず本音が口をついた。

「ねぇ正気?2コ下だよ?あいつガキだよ?」
「全然いける。大輝先輩よりも真面目そうだし、可愛くてかっこいいとか最強!」

学祭前夜、大ちゃんからLINEが届いた。

「ねぇ、こんなの届いたんだけど」
友達とのトーク画面のキャプが送られてくる。

何だこりゃ!思わず大ちゃんに電話をかける。

「ちょっと何あれ」
「確かに光輝のこと頼んだけど、昴、よろしくやりすぎてない?」
「やりすぎてない!学祭手伝ってもらうことになっただけ」
「ふーーん?」

大ちゃんが探るような声を出す。
あ、これ、目の前でやられたら隠しごとできないやつ。

「それで何でお姫様だっこ?」
「あー、それはちょっと貧血で」
「お前はまた、ロクに食べずに動き回ってたんだろ」
「……」
「何でもかんでも抱え込んで倒れたら、結局周りにいちばん迷惑かけんだからな」
「………」

そ、そのとおりすぎて何も言えない……。

「で、体調は?」
「もうへいき!げんき!」
「ほんとかー?」

さらにお説教が続きそうなので、私は慌てて話を変える。

「てか光輝、すきな子いるよ。さえちゃん」
「え。さえちゃんて、小学生の頃にあいつがよく話してた?」
「そう!よくすぐ思い出せたね」
「毎日家で、さえさえってうるさかったから」

確かに、あの頃の光輝はいつも「さえ」の話ばかりしていた。

「すごく良い子なんだよ。おとなしいんだけど陰口とか言わないし、ちょっとドジだけど一生懸命で真面目で優しくてさぁ」

むかし光輝から聞いた「さえ」はすごく凛々しいイメージだったから、目の前のおどおどした子がその子だって、なかなか気づかなかった。

「今日も私が倒れたら、血糖値低いかもってわざわざ差し入れ買ってきてくれて」

「ふ」
スマホ越しに大ちゃんの笑いが耳元で響いて、一瞬はっとした。

「昴もさえに惚れちゃったのか」

そういえば電話って初めてだ。
なんか、すごく近くで話してるような感じがして、妙にもぞもぞする。
もちろん、そんなこと考えてるのは口には出さないけど。

「語弊がある表現」
「昴なら女もいけるのかと」
「だとしても横恋慕はしないよ」
「横恋慕!」

大ちゃんが爆笑する。

「昴ってたまに古めかしい言葉使うよな」
「そお?読書のせいかな」
「明治の文豪とかすきだよね」
「恋愛の仕方が情熱的で面白いんだよ」
「変わってるよな」
「大ちゃんが恋愛にテキトーすぎるんでしょ」
「ひでーなぁ」

大ちゃんはくつくつ笑いながら話す。
東京に行っても大ちゃんの話し方は変わらない。

「別に俺、テキトーじゃないよ」
「何人つきあった?来るもの拒まずだったでしょ」
「そんなことはない」
「悪い男に騙されたかわいそうな女子が何人私のとこへ来たか」
「それは迷惑かけて悪かった」
「ほんとだよ」

「俺その子たちにさ、昴と話すなとか言われて、それは無理って断ったりしてたんだよね。昴は彼女じゃないけど特別だからさ」

「は??そんなこと言ってたの?」
そりゃ私のとこ来るわ。

「だって昴のかわいくない仏頂面、見ないと落ち着かないんだもん」
「何それ、ミス北高なめんな」
「それ黒歴史なんじゃなかった?」
「う、る、さ、い」
「声低っ!こえー!」

大ちゃんは電話の向こうで爆笑している。
イラッとして大声で怒鳴ってやろうかと思ったけど、途中でアホらしくなってやめた。

「ほんと大ちゃん、いつまでも子供だね」
「昴もな」

また大ちゃんがくつくつと笑う。

「こう見えて、俺は昴が大人になるのを待ってるんだけどね」
「何それどういう意味?」
「さぁね」

***

いよいよ受験本番。
高校の中庭で進路希望調査票を広げ、私は悩んでいた。

渡り廊下をさえちゃんが通りがかる。
「あっさえちゃーん!」
大きく手を振ると、こちらに気づいたさえちゃんが近くまで来てくれた。

「先輩、お久しぶりです」
「元気そうだねぇ、光輝と順調?」

さえちゃんは顔を真っ赤にして、こくんと頷いた。
「はい」

さえちゃんと光輝は学祭から付き合い始めた。
どんどん綺麗になるさえちゃん。
はにかむ笑顔がかわいい。

一方、光輝は私よりも先に恋人を作って完全に調子に乗っているので、会うたびにイジり倒している。

「ねぇさえちゃん、私、どっちが合うと思う?」
悩んでるのは、大ちゃんと同じ難関大学と、有名女子大だ。

担任のかおりちゃんには、私の性格には女子大のが合うんじゃないかと言われた。
教師とは言え女同士、神城兄弟関連で苦労してきたことをうっすら勘付いてるのかもしれない。

「えっそんな大事なことを私に」
「別にさえちゃんの意見だけで決めないからさー!参考までに」
「うーん……」

さえちゃんは真剣に悩んでくれている。

…体感、3分経過。
ちょっと悪かったかなと思った時、さえちゃんが質問してきた。

「先輩は、大学でやりたいことはないんですか?」
「やりたいことかー。好きなものはたくさんあるけど、これってものは特にないんだよね」

「じゃあ、どんな瞬間がいちばん幸せですか?」
「幸せ……」

私の幸せ。
友達としゃべったり、ダンスしたり、勉強だってわりと楽しい。
おいしいものを食べたり、アロマオイルを垂らしたお風呂に入ったり、家族で出かけたり。

幸せを感じる瞬間はたくさんある。

でもいちばんは。
いちばん最初に頭に浮かんだのは。

「さえちゃん、ありがと!私決めた!」
「え」
「ほんとにありがと!また今度お礼するねー!」

今すぐ記入したくて、さえちゃんに手を振って教室へ急ぐ。

私のいちばんの幸せ。
うるさいゲームの音をBGMに、本を読んでいるとき。

***

「うわ、ほんとに来た」
「ふふふーん♪」
「来るならもう少し丁寧に連絡しろよ」

羽田到着時間だけLINEしたら、大ちゃんは「は?バイトあんだけど」と文句を言いつつ、休んで迎えに来てくれた。

「荷物これだけ?」
肩にかけてたドラムバッグを奪われる。

「ありがと!」
「ん」
「他の荷物は送っといたから、今日大ちゃんちに届くよ」
「初耳なんですけど…」
「だって私、買い物であちこち出かける予定なんだもん」
「ダンボール何個も置くとこないぞ」
「じゃあ鍵渡すからうちに入れといて」

私は大ちゃんと同じ大学に合格した。
見事現役合格なので、大ちゃんには一生自慢し続けるつもりである。

同じ部屋に住む!という主張は親と大ちゃんに即却下されたものの、大ちゃんの隣の部屋が空き部屋と聞いて万事丸く収まった。

「いいじゃん、彼女はいないんでしょ」
「たまたま今はね」

「あのね大ちゃん、知ってる?」

私はうんと背伸びして、大ちゃんの耳元に口を寄せる。
足を止めて少しかがんでくれた大ちゃんに、私史上いちばん可愛く言ってみた。

「従兄妹って結婚できるんだよ?」

fin.



あとがき

24話「すばるスポです〜」のにこにこ昴ちゃんがあまりにもキュートでかわいくて。

「ああこの笑顔が100%本心だったらいいなぁ」と思って、「神城光輝を弟としか見たことのない神城昴」の世界線でお話を考えました。

本当のところは原作では明かされていないけれども、昴が苦しい想いを圧し殺さず、こんなふうに好きな人にまっすぐだったらいいなと思います。

そしていつか原作でも、最愛の人とハグして幸せそうな昴の笑顔を見てみたいです♡

3年間を駆け足で書いたので、もしかしたら物足りないと思う方もいるかもしれません。
長編を書く根性がなくて申し訳ないですw

この創作をしたら昴のことがますます好きになったので、またいつか機会があったら、何か書いてみたいなと思います。

あと個人的に、幻の「優ちゃん」を出せて嬉しかったです。
(優ちゃんは4巻14話60ページで名前だけ出てきた光輝と昴の大学生の従兄です。)

あとがきまで長くてすみません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました♡

ちー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?