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【二次創作小説】天使のハニートラップ

こちらは「太陽よりも眩しい星」の二次創作小説です。

架空のモブ目線の朔英と神城です。
朔英ちゃんの天使っぽさを表現したくて書きました。


その子の笑顔はキラキラしていた。
その日、ぼくは天使に出会った。


ぼくは正岡雄大。
北高2年生。男子テニス部所属。

成績は良い方だが運動は正直苦手だ。
でもテレビで錦織圭選手を見てからどうしてもテニス部に入りたくて、マネージャーとして入部した。

今、ぼくは焦っていた。
今日は早めに部室に行って、買い足したテニスボールを補充しなきゃいけない。
なのに突然、日直の仕事を押し付けられた。

「ああ、どうしてうまく断れなかったんだろ」

はやる気持ちで部室へいそぐ。
窓の外の蝉の鳴き声にも急かされているような気持ちになる。

しかし、焦りすぎたようだ。
あと少しで部室というところで、足がもつれて転んでしまった。

左膝に鈍い痛みが走る。
落としたテニスボールの箱が開き、ボールが放射上に散らばっていく。

「あああああ…!」

最悪だ。
廊下の壁にあたって跳ねながら四方八方に飛ぶ黄色いボール。
呆然としていたら、後ろから「大丈夫ですか?」と声をかけられた。

振り返ると、そこにはよく見る大柄な女子がいた。

「えっと、確か女テニの…」
「あの、岩田です」

彼女は頷いた。
そうそう、岩田さん。
新入生だけど背が高いしテニスが上手いから、ふだん話さないぼくでも覚えていた。

「ケガしたんですか?」
「あーちょっと…イテッ」

起き上がろうとしたら、思っていたよりも左膝が痛む。

「保健室行きましょう。ちょっと待っててください」

岩田さんはぼくを通路の隅に座らせると、とんでもないスピードでテニスボールを回収し始めた。

ぼくは思わず笑ってしまった。
「岩田さん、ボール拾い選手権があったらダントツ1位じゃない?」
「え」

岩田さんが早々にボールを回収してぼくの脇に置く。

「そうですか?」
照れるようにはにかむ笑顔。
周りにキラキラと何かがきらめいた気がして、ぼくは一瞬息を止めた。

岩田さんは目立つけど、普段はおどおどして無口な印象しかなかった。
この子、こんなふうに笑うんだな。

「岩ちゃん、どしたの?」
女子テニス部員が通りかかる。
同じ2年だと思うけど顔しか知らない。

「あの、先輩がケガしちゃったらしくて」
「ありゃー」
「わたし保健室連れて行きます。このボール、男テニに持って行ってもらえませんか?」

え、そうなの???
岩田さんがぼくを保健室まで?

「いいよ!」
「すみません、よろしくお願いします」

その2年は岩田さんに頼り慣れてるのか、「何で岩田さんがそこまで?」という違和感を持つことはなかったようで、ボールを受け取ってさっさと行ってしまった。

「じゃあ、いきましょう」

そう言うと、岩田さんはぼくに手を伸ばしてきた。
女子の手だ。
え、ぼく、女子に助け起こされちゃうの?
頬が赤くなってくるのがわかる。

どきどきしながら手を伸ばし返したら、岩田さんはぼくの手を握ることはなく、腕を掴んで引っ張りあげてくれた。

そうか、そりゃそうだよな、手をつなぐ必要はないよな。
と思ったら、左脇の下に岩田さんの体がするっと入ってきて心臓が跳ねた。

「歩けますか?」
「う、うん。ありがと」

岩田さんは背が高いので、身長172センチのぼくとずいぶん顔が近くなる。

やばい…なんかいい匂いする。
やばい。
頬どころか全身が熱くなってるのがわかる。

ぼくはとっさに岩田さんとは逆の右に顔を向ける。
心頭滅却のため、必死に話題を探す。

「あの、ていうか、ぼくのこと知ってたんだね」
「え。だって、男テニのマネージャーだし」
「話したことなかったじゃん」
「でも、あの、いつもすごく働いてるなって思って見てました」
「…そうなんだ」
「先輩、メガネだし、テニス部では珍しいから」

それって、それって、いつもぼくを見てくれてたってことなのでは。

いや、そもそも通りがかりでここまでやるか、普通?
やらないよな??
つまり、もしかして岩田さんはぼくを…!?

どきどきしながら、左にある岩田さんの顔を見る。
穏やかな表情。
また岩田さんの周りがキラキラときらめいている。
さっきよりもずっと。
かわいい。

ど、どうしよう。
もしかしてこのままお付き合いとかしちゃうのかな。
夏休みに映画とか見に行くのかな。

と、背後に走ってくる足音が聞こえた。
近づいたら早足に変わる。

「岩田!」
「あれ、神城」

ひょこっと顔を出して声をかけてきたのは、やたらと背の高いイケメンだった。

「岩田何してるの?」

そういって岩田さんに声をかけた男は、遠慮なくこちらを見る。
いや、見るというより完全に睨んでいる。
全身見られてる。
目線が突き刺さる。

いやいや、怖ッ!!!
煩悩なんて一瞬で吹っ飛んでしまった。

「部活の先輩がケガしちゃって」
「…え?女テニに男子いるの?」
「ううん、男テニのマネージャーで…」

岩田さんと会話してる合間にも、男はずっとこちらを見下ろしてくる。
圧を感じる。こわすぎる。

会話からするとたぶん1年なんだろうけど、全然後輩ぽくない。

と、急に男がにっこり笑う。

「岩田重いでしょ?俺代わる」
「え」「え」

あっという間に男が俺の左脇に収まった。

「先輩、平気すか?保健室行きますね」
そう言うとさっさと歩き出した。

こいつは背が高いうえに歩幅が大きいので、バランスが崩れて歩きにくい。
しかも汗くさい。
うう。
こんなにリアルな天国と地獄ありかよ…。

「神城、ありがと」
岩田さんはお礼を言っている。

いやいや、ここはお礼じゃないでしょ!?
ぼくとふたりが良かったでしょ!?

そう思って岩田さんに目線をやると、神城という男の横顔をぽわんとした顔で見ている。

あーーーーーー…。
うん。ぼくのこと見る顔と全然違うね。
ヨクワカリマシタ。

こうしてぼくの淡い気持ちは淡いままで終わったのだった。

数ヶ月後、学祭でふたりが付き合い始めたという噂を聞いた。

「イケてない大きい女子がイケメンと」という噂だったが、いや待て待て。
あれ、完全に男の方がロックオンしてただろ!
それに岩田さんはめちゃくちゃかわいい!

ぼくの…いや、テニス部の天使。
どうか幸せに。

fin.



あとがき

ストーリー上の関係上、表立って出てこなくても、朔英のことを良いなぁと思う人は必ずいる!(だって天使で女神でジャンヌ・ダルクだもの!)

…という強い信念(※妄想)のもと書いたのですが、結局セコム神城ストーリーになってしまいました。笑

朔英とモブが必要以上にくっついてるのが許容できない方がいないかハラハラです。
今のところお叱りの声は届いていないですが、不快な方がいたら申し訳ありません。

タイトルは「天然ハニートラップ」と迷いましたが、朔英は天使なのでタイトルにも天使要素を入れました。
(わたくし、いつでも朔英ファースト&朔英原理主義の強火ファンですw)

もちろん朔英と神城がわざとハニートラップを仕掛けたわけではないことを、念のため明言しておきます。

少しでも楽しんでいただけましたら幸いです♡

ちー

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