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【二次創作小説】彼女の涙

こちらは「太陽よりも眩しい星」の二次創作小説です。

神城の独白形式です。
シチュエーションを想像しながらお楽しみください。


初めてさえの涙を見たのは小学生の頃です。
体育の時間のドッジボールでした。

さえは俺をかばって、俺の前に出てボールをキャッチしてくれた。
最高にかっこよかった。

でも俺は、さえが前に出てきてくれた勢いで尻もちをついてラインアウトしちゃって。

笑っちゃうよな?
めっちゃかっこ悪い……。

さえの泣きべそを初めて見て、俺がかっこ悪いから泣かせてしまったと思った。
もう最悪の気分だ。

元気を出してもらうにはどうしたらいいか、めちゃくちゃ悩んだ俺は、給食の時間になってぴんときた。
今日はたこ焼きがある!

さえは食べてる時がいちばんニコニコするんです。
たこ焼きをあげたらきっと元気になる。

あ、みんなめっちゃ頷いてる。
そうそう、さえを知ってたらわかりますよね。
本人はあまり意識してないみたいなんですけどね。

「たこ焼きあげる!」
そう言ってお皿を差し出したら、さえも同時に俺にたこ焼きを差し出してくれてて。

「ドッジボール、ぶつかっちゃって、ごめんね」って。

結局俺も慰めてもらっちゃったんだけど、さえに笑顔が戻ったことがすごく嬉しかった。

それは確か小2の頃だったと思うけど、きっともう、その頃にはさえのことが好きでした。

***

次にさえの涙を見たのは中1の時。
さえはテニス部の新人戦に出て、負けました。

コートの中でポロポロと涙をこぼす姿が痛々しかった。

俺とさえは中学ではクラスが離れて、なかなかしゃべる機会がなくて。

その時もさえに観に行くとかは言ってなくて、友達の彼女が出るからって一緒に行って、それで勝手にさえを応援してた。

だからさえのこと、フェンスのこちら側で見つめることしかできなかった。

その時に誓ったんです。
次にさえが泣く時には俺が隣にいて涙を止める、って。

さえは頭が良くて、運動ができて、優しくてかわいくて、背も高くて、昔チビだった俺にとっては本当に手が届かない存在だったから。

さえに見合う男になれるようにって、その頃から勉強やトレーニングに本気で取り組むようになりました。

***

次にさえの涙を見たのは中3の時。
その時も俺が泣かせちゃって。

運動会の借り人競争で「好きな人」って札が出たんですよ。
まだ告白はできないけど嘘はつきたくなくて、それでさえを連れてゴールしました。

で、お題チェック担当がそこに座ってる渡辺で。

渡辺がお題を見てびっくりして、俺の顔見てくるから、「言わないで!」ってゼスチャーしたら、かわりに「大きい人」だって言ったんですよ。

もう少し他に何かあると思いません?

さえ、身長高いの気にしてたから、その場は笑顔でごまかしてくれたんだけど泣いちゃって。

俺が追いかけて、お題は「可愛い人」だったんだよって説明したら、泣き止んでくれたんですけど。

まぁこれも他に何かなかったのかって感じですけどね。
ほぼ告白だし。

でもここまで言ってもさえ、俺の気持ちに全然気づかないんですよ。
めっちゃ勇気出したのに!

え?
中途半端なこと言わないで、きちんと告白すれば良かったのに、って?

鮎川、相変わらずツッコミ厳しいなー。

そう言われたら確かにそう。
でもその時は、それでも必死だったんです。

***

え、長い?
今日くらいよくね!?

えーと、ごめんなさい、じゃああとちょっとだけ。

実は高1でさえと付き合うことになった時、ある人と約束したんです。
「もう絶対泣かせない」って。

でもさえって芯は強いんだけど、実は涙もろくて。

あの、初めてキスした時とかも泣かせちゃって、ああやっちゃった!って焦ったら「信じられない」「しあわせ」って。
いやそんなのこっちの台詞なんだけど。

今朝も、すごくきれいなこのドレス姿で、「夢みたい」って涙を流してたんです。

涙が宝石みたいですごくキラキラして、なんか1枚の絵みたいで。
俺、さえは泣いてる時でもこんなにキレイなんだなって。

だから、「もう泣かせない」って約束は取り消そうと思います。

さえの涙はきれいだから、たくさん流してもいい。
でも、いつも隣に俺がいて、かなしい涙だったら笑わせたいし、しあわせな涙だったら一緒にしあわせを噛みしめたいって思ってます。


なんかうまくまとめられないけど…。
以上でご挨拶にかえさせていただきます。

ご列席の皆様、本日は俺たちふたりのためにお集まりいただき、本当にありがとうございました。
絶対にふたりで幸せになります。

fin.


あとがき

結婚式の披露宴で新郎挨拶をする神城、という設定でお送りいたしました。

読んでいくうちにだんだんシチュエーションがわかっていく、ライトな謎解きのような雰囲気を目指しました。

読みづらさが心配ですが、いかがでしょうか。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

なおイベントの掲示板にて嬉しいコメントをいくつかいただきました。

後ろ側の席の神城家の遠い親戚のおばちゃんの気持ちで読まさせていただきました!

一緒に、会場のスタッフとして参加して、一緒に泣きましょう

このおふたり、作者以上に没入感を持って読んでくださってる!笑

とっても嬉しかったです。
読んでくださった方、皆さんありがとうございました♡

ちー

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