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製造業における「量産でのワーク表面の異物検査」の自動化のニーズ

製造業で自動化支援の問い合わせが増えてきています。
問い合わせには、『量産時にライン移動中のワーク表面の異物検査を自動化したいが、カメラ撮像の向き不向きがあれば教えて欲しい。』『また自動化する場合の検査内容を教えて欲しい。』等がございます。
今回は、①異物検査に対しカメラ撮像が難しい製品、②検査内容、③自動化のニーズについてまとめてみました。
 
製造現場で、製品や製造工程中部材のワーク表面異物検査の自動化を検討中にされている方々の参考にあればと思います。


1.カメラ検査自動化移行難易度

カメラを使用して検査するのが難しい製品(以下:ここでいう製品には中間部品を含む)の概要と、自動車やモビリティ以外の様々な製造業界における検査プロセスの詳細について説明します。

カメラで撮影することが難しい製品

カメラでの撮影が難しい製品は、製品によっては複雑な形状や反射面、サイズの小ささ等によりカメラでの撮影が難しい場合があります。

  1. テクスチャーのある表面:布地、カーペット、又は不規則なパターンを持つ特定の種類の素材等、複雑なテクスチャーを持つワークピースは、影や反射のため、カメラで正確にキャプチャすることが困難な場合があります。

  2. 透明又は半透明の素材:ガラス、プラスチック、その他の透明な素材は、反射や屈折を引き起こして画像を歪める可能性があり、異物の識別が困難になります。

  3. 反射性の高い表面:磨かれたスチールやクロム等の金属は、細部が見えにくくなり、小さな異物の検出が困難になるぎらつきや反射を引き起こす可能性があります。

  4. 複雑な形状:複雑な形状や内部構造を持つ部品では異物が見えなくなる場合があり、複数のカメラ角度や検査方法が必要になります。

  5. 様々な表面状態:濡れた表面、油っぽい表面、ほこりっぽい表面等、様々な表面状態を持つワークピースは、画像の鮮明さと品質に影響を与える可能性があり、異物の検出が困難になります。

  6. 回路基板等のコンポーネント:複雑な詳細や様々な素材を備えた製品を正確に画像化することが困難な場合があります。

  7. リチウム電池:欠陥検出のために鮮明で安定した画像を取得することは困難な場合があります。

2.検査内容

製造における検査には、次のようないくつかのステップが含まれます。これらの手順は、製品及び製造プロセスの特定の要件によって異なりますが、参考にして下さい。

  1. 検査プロセス

  2. サンプル検査計画

  3. 製造前、製造後、継続的な検査の実施

  4. 不適合を特定して文書化

  5. 製品の再検査

  6. 許容品質限界(AQL)とサンプリング要件を指定

  7. リスクを特定して排除

具体的な検査ポイント

  1. 物体サイズ:検出する必要がある異物のサイズは、小さな粒子から大きな破片まで大幅に異なります。

  2. 材料の組成:金属、プラスチック、有機材料等の異物の組成を特定することは、品質管理にとって非常に重要です。

  3. 場所:異物が出現する可能性がある特定の場所を知ることは、カメラの配置と検査アルゴリズムを最適化するのに役立ちます。

  4. 生産ラインの速度:生産ラインの速度は検査に利用できる時間に影響を与える可能性があり、高速で効率的な画像処理アルゴリズムが必要です。

  5. 偽陽性/陰性:正確な検査には、偽陽性(存在しない欠陥の特定)と偽陰性(実際の欠陥の見逃し)を最小限に抑えることが不可欠です。

3.自動化のニーズ

製造業における自動化のニーズ製造業における自動化は、工場現場、製造業の雇用の性質、多くの製造部門の経済を変革しています。これはロボット工学、人工知能、機械学習の進歩によって推進されており、機械が様々な作業活動において人間と同等又はそれを上回るパフォーマンスを発揮できるようになります。自動化により、製造業務の効率、安全性、有効性が向上します。また、職場の危険を軽減し、虚偽の賠償請求を解決し、重大なインシデントを特定してアラートを発することにも役立ちます。 

●具体的な項目

  1. リアルタイム検査:リアルタイム検査が可能な自動システムは、品質管理を確保しながら高い生産速度を維持するのに役立ちます。

  2. データのログと分析:データをログに記録し、詳細な分析を提供できる自動検査システムは、傾向の特定、プロセスの改善、長期にわたる欠陥の削減に役立ちます。

  3. 既存のシステムとの統合:既存の製造システム及び装置との互換性は、シームレスな統合と最小限のダウンタイムにとって重要です。

  4. 適応性:生産要件の変化や新しいタイプの欠陥に適応できるシステムは、長期使用に有益です。

ただし、自動化の導入は、実装コスト、タスクの複雑さ、潜在的な投資収益率等、様々な要因によって決まりますので、自動化の必要性はありますが、各製造プロセスの特定の状況に基づいて、それが必須であるか否か?、あると便利なのか?を製造部門のみでなく、品質保証部や営業等関連部署と協議・検討することが重要です。

製造業では手作業の削減、身体的負担の最小化、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の必要性を踏まえ、自動検査ソリューションの需要が高まると考えられます。この分野はニッチかもしれませんが、効率、精度、コスト削減の点で潜在的なメリットが得られるため、新しいテスト方法やテクノロジーへの投資が正当化される可能性があります。

4.検査の自動化における課題

製造業における検査の自動化には、実際にいくつかの課題が存在します。 

  1. 様々な製品:検査の量と製品の多様性により、視覚的な品質チェックを自動化することは困難な場合があります。欠陥は製品のどこにでも発生する可能性があり、そのサイズも様々です。

  2. 外観検査の複雑さ:コンピュータービジョン(CV)ベースのアルゴリズムは、外観検査プロセスの一部を自動化するのに役立ちましたが、まだ解決されていない課題が残っています。

  3. 熟練労働者の不足:自動化では、多くの場合、自動化システムの管理と保守に熟練労働者が必要になります。業界ではそのような熟練労働者が不足しています。

  4. コストとROI:自動化の導入コストと潜在的な投資収益率は重要な要素です。各製造プロセスの特定の状況に基づいて、自動化が必須であるか、あると便利であるかを評価することが重要です。

  5. 規制上の懸念:自動化された検査ルーチンおよびソリューションを導入する際に、業界規制への継続的なコンプライアンスを確保することは課題となる可能性があります。

  6. 環境条件:クリーンルームを含む製造施設の条件は、製造プロセスと品質プロセスの両方を通じて製品とコンポーネントに影響を与える可能性があります。 

これらの課題に対処するには、課題を十分に理解し、それを克服するための戦略と取り組みを実行する必要があります。また、自動化は多くのメリットをもたらしますが、常にあらゆる状況に最適なソリューションであるとは限らないことに留意することも重要です。それぞれの製造プロセスは独特であり、それぞれの利点に基づいて評価される必要があります。

5.AIやDXの検査自動化への関わり方

製造業における人工知能(AI)とデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用は、大きな変革をもたらしています。これらの使用については次のような考えがあります。 

  1. 製造業におけるAI:AIは単なる自動化ツールではありません。それはイノベーション、効率性、持続可能性の触媒となります。これにより、製品とプロセスのイノベーションが大幅に強化され、サイクルタイムが短縮され、メンテナンスとセキュリティが向上すると同時に、炭素排出量も削減されます。製造におけるAIは、機械や装置からのセンサーデータを分析することで予知保全を可能にします。これにより、メーカーは機器の故障時期を予測し、故障が発生する前にメンテナンス作業を実行できるようになります。

  2. ものづくりDX:生産活動のDXは、生産ラインや製造機械等工場内の様々な設備をネットワークで接続し、生産活動の最適化や情報管理の効率化を図る「スマートファクトリー」とも呼ばれています。

  3. 課題:潜在的な利点にもかかわらず、これらの利点を享受する前に克服しなければならない課題がいくつかあります。DXプロジェクトで最もつまずく点のひとつは、明確なビジョンやロードマップが欠如していることです。社内と社外の役割分担が明確でなく、連携がスムーズでないプロジェクトも多い。DX推進に必要な知識やスキルを持った人材も揃っています。場合によっては、不足のためにプロジェクトが軌道に乗らないこともあります。

  4. 実現に向けた戦略:DXを阻害する壁を乗り越えるためには、各プロジェクトや部門間の連携・統合を図った全体計画を策定する必要がある。解決策としては、(1)自社で人材を育成するか、(2)外部パートナーを活用するか、あるいは(3)その両方を行うかの3つのパターンが考えられます。

製造業におけるAIとDXの活用は、効率の向上、コストの削減、イノベーションの推進に大きな期待を寄せています。ただし、導入を成功させるには、慎重な計画、熟練した人材、および望ましい結果についての明確なビジョンが必要です。

6.製造業におけるDXの成功例

 製造業界におけるDXの成功の実例をいくつか紹介します。

  •  エアバス:AI、IoT、ロボティクス等の先進テクノロジーを導入して、製造プロセスを最適化しています。

  • マクドン:収穫機器のメーカーで、製造プロセスと製品品質を向上させるデジタル変革戦略の導入に成功しました。

  • ダイキン工業:大手空調メーカーであるダイキンは、工場にIoTを導入して、生産状況を可視化し、潜在的な問題を予測および防止しています。

  • 内田製作所:自動車金属部品の小規模メーカーである内田製作所は、熟練労働者の技術を再現するロボットの導入に成功し、生産性を大幅に向上させました。

これらの例は、デジタル変革が製造業の効率、生産性、顧客満足度の大幅な向上にどのようにつながるかを表していると考えています。

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