歩く

    どうも私は人よりも歩くのが速いようだ。体が痩せていたからだと思う。例えば、富士山の五合目から頂上までを、普通の人は5時間かかるところを3時間で登った。
ある時、私の仕事帰りの夕方7時ぐらいに近所の小路で(その当時は風呂屋もありまぁまぁ人通りもあるのであるが)前にいた(と思われる)女の人が、突然、(他)人の家の玄関の戸を激しく叩き・助けてと叫び始めたことがあった。どうしたのだろうと思いながらその横を通り過ぎたが、しばらくして私がその原因だったんだろうと思い至った。私は、私の前を女の人が歩いていることさえ気づかなかったのだが、その女の人にして見れば、男の人が後ろからすごい勢いでどんどん近付いて来ていると思ったようだ。まったく3者(その家、女の人、私)共に迷惑な話だ。             

こんなことも、今思い出した。私が中学生ぐらいの時だったのではないかと思う。帰宅途中で歩いていると犬(若干大きめ)を連れた人が前から歩いて来た。私は、犬は嫌いではないので、その横を通り過ぎようとした。その瞬間、いきなりその犬が私の脛に噛みついてきた。  とっさに(0.数秒遅れで)横に跳んだ私に、 驚くことに、その犬を連れた飼い主が(私に向かって)大声で「お前、なにかしたろう!」とどなった。これは私が(犬も普通でないと思うぐらい)速く歩くせいなのだろうか?そうではないと思うが、こんなことも考えてしまう。

     歩くのが速いと同時に、私は歩くことが苦にならず、かなりの距離を躊躇なく歩く人間だった。例えば東京に行くと東京中、歩き回っていた。新宿から皇居近くまで歩いたこともあったように思う。人と一緒に歩くことはあまりないが、今思うと一緒に歩いた人が驚きの感情を持っていたようだ。             

こんなことも思い出した。学生の時、帰省をかねてテントとおにぎりを入れたリックを背負い6人で歩いたことがある(7月の20日頃)。初日に60km歩いた。朝暗い内(3時半ぐらいだったか)に出発して、夜暗くなる(20時ぐらいだったか)まで歩き続けた(途中、昼とかにおにぎりを食べる時には休憩した)。次の日の朝、疲労困憊ということはなかったと思う。また、足の筋肉及び心臓等も全員なんともなかった。しかし、全員  足の裏に豆(多数の水ぶくれ)が出来ていた。次の日は、痛みに耐えながらの歩行となった(多数の水ぶくれが一歩歩く毎に擦れるのである)。その時、知らされたのは、長距離の歩行は足の裏がやられるということだった。後日、考えたが、人は長距離歩くと、足の裏の皮膚とその上に接している筋肉が剥がれてしまうようだ。長距離歩行の人間の弱点は意外な所にある。   昔の軍隊は、一日の行軍距離を40kmまでと決めていたようだ。その理由は上記によると思われる。40km以上歩くと次の日は行軍出来なくなる。

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