見出し画像

目標は日常の中で”ハイタッチ”を目撃すること!若手職員が「まちのコイン」に込めた想い ~日立市役所 コミュニティ推進課 永井 康介主事~ VOL.1


 茨城県の北東部に位置し、東は太平洋、西は多賀山地を抱えているため、夏は涼しく冬は暖かな気候で、海と山の豊かな恵みを享受することができるまち日立市。

「ものづくりのまち」として知られ、産業の発展過程で発生した公害問題に対し、自然環境を回復するために桜の植栽に取り組んできたことから、「さくらのまち日立」としても知られています。

 そんな日立市も、現在は他の自治体同様、人口減少や少子高齢化による構造的課題に直面し、大きな転換期を迎えています。
 
 今回は、ある「アプリ」を使って、まちの課題解決に全力で取り組む、日立市生活環境部コミュニティ推進課の永井康介主事に「事業にかける想い」と、「アプリを通して目指す未来」について話を伺いました。

VOL.1 換金性がないコミュニティ通貨「まちのコイン」

 梅の花が顔をほころばせる2月下旬。日立市には、同じく見ごろを迎える桜の花がある。「日立紅寒桜(ひたちべにかんざくら)」という、その早咲きの桜は、淡紫ピンク色の美しい花が魅力で日立市固有の桜として登録されている。

 日立市が発展していく過程で大規模な煙害が発生。発展の中心だった日立鉱山は自然環境の回復を図るため桜の苗木を育成し、約17年に渡りオオシマザクラを中心とする推定500万本もの桜の植栽に取り組んだ。

 現在では、様々な品種の桜の花を観賞することができ、その景観は市の春の風物詩となっている。

 この歴史ある桜を次世代に引き継ぐため、市役所の中に「さくら課」が設置されているのも、桜の花をシンボルとする日立市ならではの取り組みだ。

2006年に新品種として認定された『日立紅寒桜』

 そんな日立市で、新たに始まる注目の取り組みがあると聞き市役所を訪ねた。

 担当するのは、コミュニティ推進課 永井康介主事、入職5年目を迎える若手職員である。

日立市が大好き!という永井主事

 「日立市は、新たにスマートフォンアプリを使ったデジタルコミュニティ通貨『まちのコイン』を導入します。でも、導入するのは換金性のないコミュニティ通貨なんです。

 

 換金性がないコミュニティ通貨!?

 

 もともと地域内にお金が循環する仕組みとして注目され、発行数を増やしてきたコミュニティ通貨。
 スマートフォンが普及し、電子マネー決裁の浸透が進んだことで、導入や運用コストの低いデジタルコミュニティ通貨に一層注目が集まっている。利便性の高さなどもあり、全国自治体への導入と浸透が加速している現状だ。

 

 しかし、「換金性がない」となると、まちにお金が循環しない。

 なぜ、そのような地域通貨を採用したのだろうか?

 

「日立市には、23の地域(学区・地区)「コミュニティ」があり、地縁の繋がりで美化活動や防災活動を行っていますが、少子高齢化が進みコミュニティ活動も担い手不足が課題です。それを解決する手段の一つが、『まちのコイン』でした。

 

「まちのコイン」は、2019年に神奈川県の「SDGs繋がりポイント事業」として採択され、以降は「地域の魅力を発見するコミュニティ通貨アプリ」として全国に広がっているとのこと。

現在は、27の地域が導入し、10万人を超えるユーザーが活用しているという。(※2024年3月1日現在)

 まちの目的にあわせた「コンセプト(テーマ)」を設定し、コンセプトに沿った加盟スポットや体験を用意することで、住民がまちの課題に取り組みやすくなったり、まちの個性を伸ばすことに繋がるという設定だ。

引用元:まちのコイン公式ホームページ


まちのコインは、アプリでインストールできて、自分で集めたい地域のコイン(コミュニティ通貨)を何個でも選べます。

 それぞれの地域に出向き、イベントやボランティア活動に参加してコインをGETすることはもちろんですが、その地域に行かなくても、アプリ上でアンケートやクイズに答えてコインを貯めることも可能なのです。反対に、登録している人や事業者を応援したいと思ったら、持っているコインをあげることもできます。

 そして、一定数のコインが貯まると、どんどんレベルが上がっていき、「レベル5」になると、対象地域のコインが他の地域でも使えるようになるのです。

 他地域の方が、アプリ上で日立市のまちのコインを楽しんでくれることで、日立市に興味を持ち、日立市に行ってみたいと思う方が増えたらとてもうれしいです。そして、まちのコインをきっかけに、交流人口の増加にもつながれば最高ですね。

 でも、まずは日立市に住んでいる方や通勤通学している方などが、まちのコインを通じて「つながり」について考えるきっかけになることを考えています。

 ちなみに、日立市のコイン名(単位)は『タッチ』で、「つながる楽しさ ふれ合うワクワク」がキャッチコピー。

「ひたち」の“たち”とあらゆる人が“ハイタッチ”でふれあうことができるまちになることをイメージして「タッチ」というコイン名にしました!

「1000タッチいただきます! いえ~い!!」

といったアクションにつながったらいいなという想いも込められています!」

日立市のコミュニティ通貨「タッチ」のロゴマーク


 日立市の “たち” とハイタッチを合わせて「タッチ」。歯切れのよいフレーズで、みんなすぐに覚えてくれそうである。

 

 しかし、やはり換金性のあるコミュニティ通貨の方が、地域が盛り上がる起爆剤になるのでは?と考えてしまう・・・。

 なぜ、そこで敢えて換金性のないコミュニティ通貨なのだろうか?

VOL.2 へ続く