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教師としてレゴブロックに触れて

 先月、とある機会を頂き、レゴブロック×教育を考える研修会に参加しました。自分自身、幼少期はさまざまなレゴ作品を作ることにハマっていた時期があり、今回の機会がとても嬉しく…。
 今後に向けて、感じたこと・そして研修の後に実施した実践についてまとめておきたいと思います。


1.レゴ×教育のキーワード

 レゴが、子どもたちそれぞれの創造性を引き出し、AIがますます発達して、その人らしさ・人間だからこそできることが大切になってくる時代だからこそ必要な学びだと実感しました。
 以下の3つのキーワードが、特に印象に残っています。

1.ハンズオン教育

 自らの手を使ってものを作り、試行錯誤を繰り返しながら問題解決を行う。単に知識を詰め込むのではなく、体験活動を通して、実社会に出た時に実際に使える知恵や考え方を身につける

2.オープンエンド

 ある提示された課題から作品を作り、最後にその作品について説明をする(このアウトプットによって自分の思考と作品がより結びつく)。子どもの数だけ答え・課題解決への道筋があり、それぞれの価値観が尊重されるというレッスンのステップと考えが、とても素敵だなと思いました。
 一連の作品作り、考えのアウトプットを繰り返すことで、実社会で未知の課題に直面した時に、自分の創造力に自信をもち、新しい価値を創造することができるな、と思いました。

3.『遊び』×『学び』

 そもそも、本社のあるデンマーク語で「よく遊べ」を意味する “LEG GODT” から2文字ずつ取ってつけられたのがLEGOという社名です。(↓の映像もすごく興味深いです。)

 我々大人は、どうしても遊びが勉強や教育に対立するものとして捉えがちです。(最近になってようやく、エデュテイメントという概念も世の中に出てきており、これから風潮も変化していくと思いますが…)遊びの中でさまざまな力を使いながら、人間として大切になる基礎の力が自然と育まれていくー。そうなるよう、私たちが適切な声をかけ、ヒントを与えてあげることが大事だな、と思っています。

2.レゴで行った実践2選

 研修のあと、ご紹介頂いたものを含めこれまで大きく2つの実践を試してみました。

A.レゴで作るアヒル『LEGODUCK』

 下の画像にある6つのレゴパーツを使って、アヒルを作ります。実際の教室では、2分間の時間で1つ作るよう指示しました。
 これが本当に単純な作業なんだけど、楽しく、小学生も没頭していました。

レゴダックの6パーツ

 その後、できたものを友達同士で見比べ、違い・自分のこだわりについて話します。

『トサカがかっこいいでしょ』
『そのあひる背が高すぎない?笑』
『しっぽをつけてかわいくしたよ』

などなど。
 普段、特にみんなが見る前で自分の意見を発表することが苦手な児童でも、この活動の中で、注目の的となるのはレゴブロックー。自分の考えを投影したレゴの作品を見せ合いながら発表したり、会話に参加することが自然とできていて、支援の必要な子への配慮の面で優れているなと思いました。
 あまりにも活動が盛り上がった為、パーツを自宅や休み時間の学校など好きな時間に組み立て、写真を撮る→Padlet(教育用オンライン掲示板)にアップして【アヒル図鑑を作る】というプロジェクト型活動にも繋げてみました。実際作ったPadletには、現在70を超えるアヒルたちが掲載されています。コメントやいいねもつけ合え、本当のカタログのようになり楽しいので、この発展形も含め、ぜひ皆さんもお試し下さい。

LEGODUCK図鑑

最近始めたstand.fmでも、レゴダック実践について語らせて頂きました↓


B.レゴでピラミッドを作る

 こちらも単純なので、できた作品をそのままご覧下さい。

レゴピラミッド爆誕!

 見ての通り、ピラミッドの頂上には2×2のピースがあります。その下段に、それぞれの辺から上下左右1ポチ分はみ出るように(つまり4×4となるように)⚫︎の形のピースをくっつけていく。その下の段は6×6となるように…これを続けていきます。
 写真には収めていないのでこれだけでは把握できないですが、このピラミッドの中は空洞。帽子のように被ることができる状態です。1番外側の辺のみのジョイントで繋げていくことになります。

 この写真の通り、21段のピラミッド(最下段は42ポチ×42ポチ)が出来上がりましたが、25段目を作成しているときに事件は起きました。持ち上げた時にピラミッドが総崩れし、落とした作品が粉々になってしまったのです。
 一緒に作っていたクラスの児童たちは一気に意気消沈しますが、休み時間に遊びにきた上級生がわずかに残った作品をみて一言言いました。

『ここ(下の写真の青丸の部分)みたいに、上下がしっかり繋がれてない部分がたくさんあったから多分崩れたんだよ。』

なるほど!

 分かりますか?ピースの端っこ同士が上下に重なっているということは、つまり上下で並んでいるピース同士がしっかり結合されていないということです。赤丸部分のように、ずらして繋げることで、上下がしっかりくっ付きます。
 自分たちで試し、失敗しないと分からない気づきに出会える(トライアンドエラーの好循環)。子どもたち自身はあまり意識してはいないと思いますが、これこそ貴重な体験だったのではないかと思いました。
 より良くする手立て、解決策が見つかってそれに納得できたことで、最終的には仕切り直して40段のピラミッドが出来上がりました🎶

 教室にあるレゴの量や教育課程の制約などもありなかなか思う通りにはいきませんが、子どもたちの生き生きとした姿を目の当たりにでき感動したし、間違いなく得られるものが大きかったので、できる範囲でこれからも実践を続けていきたいなと思っています。
 算数の実践の中に取り入れる(分数の概念×レゴ、三角形と四角形×レゴなど…)ことを考えながら、指導書と睨めっこしている今日この頃です。

3.最後にー今こそレゴ型の学力をー(藤原和博さんのことばから)

 今、新しい教育として学習指導要領にも登場しているキーワードが、STEAM教育です。特にこれまでのSTEM→STEAMに関わる A、“Art(芸術)”について、子どもたちの内なる能力・創造性を引き出すのがまさにレゴの教材だなと思いました。
 プログラミング等と掛け合わされたレゴの商品(マインドストーム、WeDo)も発売されており、導入している学校もあると聞きます。これからまさに注目されていくのではないでしょうか。

 20世紀、これまでの社会は、知識を蓄える・覚える、いち早く正解を導き出す、目の前にある情報を処理する能力が求められてきました。我々も物事をいかに覚え、早く計算できるようになるための学習をしてきました。私自身教員としてもそんな教育をしてきたかもしれません。ーその力も、今後も大事なのは間違いありません。
 ただ、これからのAIの時代は、その部分を得意とするAIをどのように我々が使っていくかが大事になっていくと思います。いかにAIに要領よく仕事を割り振り、人間にしかできない領域に集中するかーです。

 先ほどのアヒルの実践のように、たった6つのレゴピースで、想像力豊かに自分ならではの思いを表現することができます。その考えを周りが納得するように説明する。お互いのその考えを認め合う(コミュニケーション)、最終的には、正解のない問いに対して、多様な考えをもとに、より良い納得解を皆で紡いでいくーこのレゴで身につく考えや過程そのものが必要になっていくのがこれからの時代なのかなと思いました。
 前和田中学校校長の藤原和博さんも、求められる能力の時代変化を、このように例えてお話しされています。(分かりやすいお話なのでぜひ参考に。)

 今回頂いた機会とこの気持ちを無駄にせず、ぜひ今後、レゴの教育が本格的に行われている学校現場や、レゴスクールなどに実践を見学しにいき、これからの時代間違いなく求められる教育の一端を学んでみたいなと思いました。機会をいただけるみなさまいましたら、ぜひお声かけよろしくお願いします…✨

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