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TM NETWORK『DEVOTION』:音が刻む再起動の痕跡、現在を映し未来を示すキーワード


DEVOTION

2021年の「How Do You Crash It?」、2022年の「FANKS intelligence Days」に続く新しいキーワードは「DEVOTION」です。2023年4月21日にTM NETWORKが情報を更新し、アルバム『DEVOTION』のリリースを予告しました。そして二ヶ月の潜伏期間を経て、アルバムが世に出ます。

『DEVOTION』に刻まれたのは2021~22年における活動の痕跡です。ライブのために制作した曲や、新しいアレンジで披露された既存の曲が聴けます。いずれもBlu-rayには残っていますが、音の調整などにより細かい部分で印象が異なります。また、ストリーミング・サービスで配信される点も重要です。2021年以降の新曲は多くの人が聴ける形になっていなかったので、アルバムで痕跡が残る意味は決して小さくありません。

2021年から始まる再起動の起点となった「How Crash?」は、ライブから音をアップデートしたスタジオ録音がアルバムに収録されています。「Please Heal The World」は短いバージョンがNFTで販売された後、音を加え厚くしたフルレングスがライブのオープニングで披露されました。本作ではこのフルレングスが聴けます。「End Theme Of How Do You Crash It?」「intelligence Days」は、2021~2022年のライブの終幕に使われたインストゥルメンタルです。前者はピアノやアコースティック・ギターを支えるベースとパーカッションのリズミカルな音、後者はスネアが咆哮する強烈なリズムが印象に残ります。どちらも次の展開を示唆する映像とともに流れたためか、一連の物語を想起させます。

2021~22年のライブで演奏された「RESISTANCE」「WE LOVE THE EARTH」「KISS YOU」「TIME TO COUNT DOWN」のリミックスが『DEVOTION』に収録されています。新しいフレーズや構成などライブで加えた変化をもとにバックトラックを再構築し、ウツのボーカルも再録した新バージョンです。曲ごとに異なる雰囲気のエレクトロニック・サウンドが聴けて、複数の角度からTM NETWORKのEDMを体験できます。また、ボーナス・トラックとして収録された「TIMEMACHINE」は、1984年のデビュー当時からライブで演奏されてきた曲であり、40年の時を越えてレコーディングが実現しました。

『DEVOTION』が見せるものは過去の記録だけに留まりません。現在を映し、未来を示すふたつの新曲が収録されています。そのひとつが、木根さんが書いた「君の空を見ている」です。メロディは大事な人に語りかけるように優しく穏やかで、木根さんらしさが窺えます。音は厚すぎず、薄すぎない絶妙なバランスで組み合わさってメロディとそれを運ぶボーカルを支え、間奏で盛り上げることも忘れません。

アルバムを象徴し、今後の活動の核になる曲が表題曲の「DEVOTION」です。小室さんが手掛けた歌詞は、世界情勢を捉えるマクロな視点と身近な人に向けたミクロな視点が交差して「DEVOTION」というキーワードを表現します。言葉を届けるサウンドはギターとシンセサイザーとリズムが衝突、交錯、混淆し、その力強さが僕らの心を満たして熱くさせます。

DEVOTION

RESISTANCE -TK Remix-, WE LOVE THE EARTH -TK Remix-, KISS YOU -TK Remix-, TIME TO COUNT DOWN -TK Remix-

How Crash?, 君の空を見ている

Please Heal The World -Studio Mix-, End Theme Of How Do You Crash It? -Studio Mix-, intelligence Days -Studio Mix-

TIMEMACHINE






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