マガジンのカバー画像

TM NETWORK

214
TM NETWORKに特化した音楽体験notesです。
運営しているクリエイター

記事一覧

TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -YONMARU-

2021年に再起動したTM NETWORKによる約三年間の活動を閉じたのは、2024年の「YONMARU」です。2022年に「FANKS intelligence Days」というキーワードを冠して始まったツアーが、2023年(DEVOTION)と2024年1~3月(STAND 3 FINAL)のツアーを経て、2024年4~5月の〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -YONMARU-〉で完結しました。2022年のツアー初日をDay

TM NETWORK「GET WILD -SICK INDIVIDUALS Remix-」:絶え間ない変化を宿命づけられた曲がダブステップに染まる

TM NETWORKの代表曲「GET WILD」には多くのバリエーションがあります。TM NETWORKの名義で発表したリミックスやリメイクに加え、他のアーティストがリミックスした音源も世に出ています。そのなかでも異色といえるのが、SICK INDIVIDUALSが手掛けたトラックです。このリミックスは、2017年にリリースされたコンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』や、ストリーミングで配信されている『Get Wild 30th Annivers

TM NETWORK『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -DEVOTION-』:夜の都市に張り巡らされたエレクトロニック・サウンドとオーケストレーションとリズム

2024年4月21日、TM NETWORKが『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -DEVOTION-』と題したBlu-rayをリリースしました。2023年に敢行したツアーのライブ映像であり、11月末に迎えた最終公演の様子を収めています。 ツアー用に制作されたインストゥルメンタル「Avant」がオープニングを飾ります。縦に長い三つのスクリーンに映るのは、濃厚な光が照らすクールな三人の姿に赤いタイポグラフィーを被せた映像。パーカッシ

TM NETWORK「Get Wild Continual」:YONMARUに刻む新しい変化の痕跡、新しい印象を刻む2024スタイル

TM NETWORKの「GET WILD」を巡るストーリーは新しい章をいくつも書き綴り、僕らの印象を何度となく刷新しました。ライブでのパフォーマンス、リミックス、リメイクといった音楽的変化の試みは、曲が誕生した1987年から始まります。それは今もなお続き、2024年に新たなバージョンを発表しました。タイトルを「Get Wild Continual」といいます。デビュー40周年――YONMARU――を迎える4月21日にリリースされました。 Continualの構成はオリジナル

TM NETWORK『RAINBOW RAINBOW』:色を重ねるシンセサイザー・サウンド、多彩なリズムの魅力を伝えるファースト・アルバム

20240421からYONMARUを遡った19840421。TM NETWORKはアルバム『RAINBOW RAINBOW』をリリースしてデビューしました。一枚のレコードに収められたカラフルな9曲が、総じてポップな印象を残します。40年を数えるキャリアの黎明期、すなわちグループの軸をダンス・ミュージックに据える前のTM NETWORKを知るには欠かせない作品です。ポップな要素を凝縮して作り込むアプローチは、EDMを主軸にした現在から見れば新鮮に感じます。音楽シーンにおけるポジ

TM NETWORK『NETWORK -Easy Listening-』:トランス系エレクトロニック・サウンドに乗せて、歌詞のフィールドで試みた実験

TM NETWORKのアルバム『NETWORK -Easy Listening-』がリリースされたのは2004年3月。デビュー20周年を祝うDOUBLE-DECADEプロジェクトの核となったアルバムです。シングル「NETWORK」と「CASTLE IN THE CLOUDS」に収録した曲のアルバム・ミックス、新曲の歌モノとインストゥルメンタル、TMNの名義で発表した曲のリメイクとリミックスで構成されました。 トランスとポップスの融合をテーマとして、新たなシンセサイザー・ミュ

TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -STAND 3 FINAL-

前回のツアーが終了したのは2023年11月末のこと。わずかなインターバルを挟み、TM NETWORKの2024年が〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -STAND 3 FINAL-〉と題したツアーで幕を開けました。少し先の未来には、40周年記念のプロジェクトが予定されています。埋め込まれたキーワードは「YONMARU」という文字列。サブタイトルに「STAND 3 FINAL」を加えた今回のツアーは、YONMARUの前夜祭といった位

TM NETWORK「TOMORROW MADE NEW」:1990TMNロックの痕跡、1970年代初期的ロックのリワインド

TM NETWORKの「TOMORROW MADE NEW」は、ロックを軸にした〈RHYTHM RED TMN TOUR〉のステージで初めて披露された曲です。低めのBPMで、YAMAHA EOSの音を重ねつつも全体的に渋さを醸すサウンドでした。特にギターがブルージーな雰囲気を漂わせる、1960年代末から1970年代初期にかけてのロックを感じる演奏です。このツアーから参加したギタリストの葛城哲哉がイントロで「Heartbreaker」を弾いたライブ映像が残っています。 〈RH

TM NETWORK『Major Turn-Round』:20世紀の終幕に新たな像を結んだプログレの音楽世界

プログレが隆盛を誇った1970年代前半から二十数年後。2000年12月にTM NETWORKがアルバム『Major Turn-Round』をリリースしました。それまで曲単体ではアプローチしたことがあるプログレに、アルバム単位で取り組んだ作品です。メジャーのレーベルから離れ、ROJAMというインディーズのレーベルで発表しました。 アルバムの幕を上げるのは「WORLDPROOF」と題した、ハワイの海にマイクを入れて録音したSEです。海の底に深く潜り、聴き手を『Major Tur

TM NETWORK「Angie」:ひとつの物語に溶け込み、別の物語に導く音楽

アルバム『DEVOTION』とシングル「Whatever Comes」に続き、2023年の最後にTM NETWORKが発表した新しい曲は、タイトルを「Angie」といいます。『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』の挿入歌のひとつであり、秋の始まりから終わりまで全国を回ったツアー〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -DEVOTION-〉で披露されました。 ピアノが生み出すのは、心を揺さぶる旋律。穏やかに、けれども

TM NETWORK「TENDER IS THE NIGHT」:どこにも行けない場所で、どこにも行けない想いが漂う

TM NETWORKのアルバム『RHYTHM RED』には木根さんが書いた二曲のバラードが収録されています。そのうちの一曲が「TENDER IS THE NIGHT」です。さまざまなアーティストが演奏する同名の曲がいくつもありますが、僕は音楽ではなくF. Scott Fitzgeraldが書いた小説(邦題:夜はやさし)を思い浮かべました。 音で埋めていないからか、余白を多く感じるアレンジです。音や歌の輪郭が浮き彫りになり、それぞれの魅力に直接触れられます。美しいコントラスト

TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -DEVOTION-

聞こえてきたのは、街を行き交う人々の話し声や走り去る車の音などが入り混じった雑多なノイズ。TM NETWORKが2023年9月から全国ツアー〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -DEVOTION-〉を開催し、11月の終わりに東京国際フォーラムのホールAで最終公演を迎えました。2022年のキーワード「FANKS intelligence Days」を継承し、2023年に掲げたキーワード「DEVOTION」と2024年のデビュー40周

TM NETWORK「COME ON EVERYBODY」:スタイルを変え、音を変えて、踊りたい欲望を刺激するダンス・ミュージック

TM NETWORKの「COME ON EVERYBODY」はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の収録曲です。アルバムが発表される直前、1988年の11月にシングル・カットされました。シングルとアルバムでアレンジの方向は同じですが、音の抜き差しやエフェクト処理などミックスが異なります。シングルは音が厚くなっているものの、起伏はあまりなく、アルバムの音は細く聞こえますが、強弱のつけ方が明確です。 イントロからAメロを貫き、そして

TM NETWORK「CUBE」:誰もいない部屋で音が響き、色のないモノローグは虚空を漂う

2000年の終わりにTM NETWORKが発表した『Major Turn-Round』は、30分超の表題曲を軸としたプログレのアルバムです。最後に収録され、閉幕の役割を担った曲は、タイトルを「CUBE」といいます。 アルバムにはMellotronやMoog Minimoogなどの多彩なキーボード・サウンドや、Simon PhillipsやCarmaine Rojasといった手練れの演奏が詰め込まれました。そうしたなかで、ピアノやHammond B-3など音の数を絞り、簡素な