いつまで家族との関係が良好なフリをし続けるのだろう。

誰にでも他人には言いにくいことの1つや2つあると思う。

毒親育ちに限らず、何らかの事情があって家族と距離を置いている人にとって、連休が近づくたびに交わされる職場や学校の人たちの

「実家に帰省するの?(したの?)」

ほど返答に困るものは無いと思う。

かくいう私もそうだ。

現在家族との関係があまり良好ではない、なんなら「嫌い」という感情すら持ってしまっているとも言える状態を、職場にカミングアウトするべきなのか。するべきだとしたら、どのようなタイミングで、言葉で切り出すべきなのか。

そもそも職場という仕事をするための公の場所で、個の自分を出してしまうのは妥当といえるのか。

そして、果たして

両親と「関係があまり良好ではない」

という表現が適正といえるのか。

実際「関係があまり良好ではない」と感じているのは私だけで、当の本人たち(私の家族)は全くそうは感じていない、気づいていない可能性もある。

これまでの両親の言動から推察するにしても、

「自分たち親は娘(私)を思って心配しているのに、また娘が一人で拗ねて、片意地を張って接触を拒否している」

と考えている可能性もある。全く外野から見ても、単に

「娘さん(私)が、就職を機に実家を出た後、こちらに戻らずほとんど連絡も取れていない」

と認識されている状態にすぎない。
事情はあるにせよ、私が一方的に距離を置いている状態と捉えられるのが自然だ。

職場には様々な世代の人がいる。
私のような若手の人、結婚して小さい子供を育てている中堅層の人、既に子供が成人してちょうど私の両親に近い年齢にあたる人。

当然、他人同士である以上考え方も一様ではない。

だからこそ、自分の子供と同世代の若手の口から、

「いや~今両親との関係があまり良好ではないんですよね~・・・」

なんて言葉が出てきたらどう感じるのか。

私は結婚も、出産も、子育ても、自分の子供が成人を迎えるのも経験したことがない。だから想像することしかできない。にしても、それを聞いてしまった瞬間少なくとも明るい気持ちにはならないことぐらい想像に容易い。

私は幸いまだ遭遇したことがないけれど、

「親も色々大変だったんだよ~」

とか、

「1番目の子供だから心配だったんだよ~」

とか、

「もういい年した大人なんだからさ、許してあげなよ」

といった、毒親育ちが最も望んでいない、かつ強力なダメージを与える、これ以上説明しても無駄だという絶望感を感じさせるような返答が返ってくる可能性もある。

過去に家族と関係を上手に構築出来なかった苦しみは、当の本人にしか理解しえない。

ならばもっと軽い、しれっとした感じで

「実家に帰ると疲れちゃうんですよね~(笑)」

という感じで話してしまおうか。実際の私にとって家族との関係は

「疲れちゃう(笑)」

で済ませられるほど生易しいレベルではないのだけれど。

一方で、家族への愛情が全く0になってしまったかと訊かれれば、必ずしもそうではない。
最後に家族と面識があったのは、1ヵ月半前。就職で職場のあるこちらへ引っ越してきた時。

安くはない賃貸の契約に係る初期費用や引っ越し代を負担してくれた両親。
荷物の運び込みや買い出しを当たり前のように手伝ってくれた家族。
帰り際、アパート前で見送った時の寂しそうな表情。
その後も忘れ物の郵送や公共関係など、私の生活に関わる手続きに仕事の合間の時間を割いてくれた両親。

最後の両親の優しさを覚えているからこそ、まるで自分が一方的な反抗心で家族を拒絶しているような錯覚に陥る。

けれど、実家を飛び出すまでの約22年間、たびたびの暴力と残酷な言葉、態度でじわじわと痛めつけられてきたのも事実。進路選択や就活の際に否定され、傷付く思いをしてきたのも事実。

両親にとっては既に忘れ、全て無かったことになっているのだとしても、私の中では無かったことには度できない。今更出来るわけがない。

許すことで苦しみを手離せるのだとしたら、許したい。
しかし、約22年間(+α)で受けた仕打ちを数日、数カ月間で許せるだろうか。

きっと私は、連休が近づくたびに悲しい気持ちになる。
いつまで職場で

「休みの時に当たり前のように帰省する、ごく一般的に実家との関係が良好な人」

を演出し続けるのだろうか。
もういっそカミングアウトしてしまえば、楽になるのだろうか。

まだ家族との関係を完全に断ち切っているわけではない。
LINEも電話もブロックしていない。

もしまた次の連休前に、両親から

「たまにはこちらに帰ってきたら?」

「今度(職場のある)そちらに遊びに行こうと思うんだけど」

と連絡があるとすれば、

「自分勝手で、わがままで、自分さえよければ良くて、可愛げが無くて、勉強だけ出来ていい気になってる、気持ちの悪い、疫病神の、クソ女の娘の顔なんて見たくないでしょう?」

とでも返信してやるだろうか。

これらは全て母親から過去に言われた言葉だ。母親の機嫌を損ねるたびに、上記のような暴言で侮辱されてきた。

いや、しないだろう。
臆病な私は、再び両親との間で面倒ごとが起こるのを恐れ、
親への反撃の言葉全てを飲み込んで、

「仕事で忙しいから今回はムリかな~」

なんて無難な返答をするのだろう。

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