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是枝裕和 ベイビー・ブローカー

待ちに待った是枝裕和監督の最新作。

前作の真実に続き今回も海外でのチャレンジ。言葉が通じなくてもヴィジョンを共有できれば問題ないと本人が語っていた通り、どこで撮ろうと是枝節を感じられる。

赤ちゃんポストとブローカーという命を巡る切り口と相変わらず役者のナチュラルな芝居を引き出す手腕は流石。張り込みをしている警察のフード描写も純粋に食欲が湧いた。

ただ今回はストーリー構成に違和感があり、あまり感情移入できなかったのも事実。韓国映画の金字塔パラサイトの影響なのかサスペンス要素を導入していたが、是枝監督が生み出す家族映画には死はあるにせよ陳腐な殺人はご法度ではないか。

作品ごとに自分達の価値観を揺さぶり、劇場を出た後私たちの社会や生活の見え方を変えてくれる監督。今回は海外資本で色んなバランスを取りすぎた結果、いつもの毒気が薄まり中途半端なまま終わってしまった印象。

樹木希林がいた頃の無邪気で我儘な作品に振り回されたい。