【随想】コンテンツ・ビジネスの今昔(5/7)

 これまで、財やサービスの取引における対価の有無に注目して話を進めてきた。最近では、取引の目的であり対価を支払う対象でもある「財」の観念も曖昧になりつつある。
 とみに利用者を拡大させているインターネットを通じた映像や音楽配信ビジネスを考えてもらいたい。かつては、コンパクトディスクなりDVDなりの形態でお気に入りの映像・音楽コンテンツを購入していたものである。一方、インターネットを通じ、必ずしもコンパクトディスクやDVDのかたちで購入することがなくなっても、映像・音楽コンテンツがタイトルごとに値付けされ、ダウンロードする都度、それぞれの作品に対価を支払って購入していたはずだ。ところが、最近はどうであろう?
 多くのコンテンツ配信ビジネスにおいて月額◯◯円といったかたちで、定額制の見放題・聴き放題というビジネスモデルが一般的となった。ネットフリックスやアマゾンプライム、アップルミュージックやスポッティファイなど耳にしたことがある人も多いだろうし、もしかしたらすでに加入してエンジョイしているかもしれない。
 「サブスクリプション」というビジネスモデルである。
 考えてみれば、インターネット接続サービスや携帯電話サービスは、従来は基本料に加えて従量型の料金体系で提供されていた。徐々に基本料金の意義が薄れ、定額制で料金が課されるように変わっていく。有料テレビ放送も同じ経路を辿っている。ただ、チャンネルとか番組とかいう観念が希薄になり、編集とかチャンネルの個性によって選ぶのではなく、よりコンテンツ志向的になっている。視聴者は、好みの映像・音楽コンテンツを検索・選択し、場合によっては(AIに)好みを推し量ってもらってお勧めのコンテンツが流れてくるのを(料金を気にせずに)楽しむというかたちになっている(つづく)(2022年10月5日記)。

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