【随想】アテンション市場!?(6/7)

 サブスクリプションというビジネスモデルにおいては、視聴者は、よりコンテンツ志向的になり、話題のコンテンツへのアクセスは検索ツールを通じて行われる。いつでも無制限に視聴することができるから、気に入ったコンテンツを、ダウンロードして手元に置く必要もない。編集やチャンネルの役割は相対的に小さくなる。視聴者は、コンテンツを目指して、ネット上や配信サービスサイトを探索するので、どの出版社や報道機関の記事なのか、どの映画会社の作品か、どのテレビ局の番組かは、それほど重要とはならなくなっている。
 そのせいか、最近の人気コンテンツの指標はもっぱら「再生回数」であり、発行部数とか、視聴率とかではなく、さらにはダウンロード数さえ言及されることは少なくなってしまった。「何回、再生され、視聴されたか」が重要なのである。いくら再生されても、追加的に対価を支払う必要はない。コンテンツに対する「投票」はこれまでのような金銭的な支出を伴うものではなく、視聴者(ユーザー)の「いいね」によるか、視聴者の限られた時間のうち、どれだけそのコンテンツへの視聴に振り向けたかという事実によることになったのである。
 つまり、コンテンツ間では、視聴者の限られた時間をめぐる競争が行われている。
 最近、こうした視聴者の限られた時間をめぐる競争、端的にいえば、「いいね」という視聴者の関心・注意をめぐって行われる競争や市場のことを「アテンション市場」と呼び、コンテンツ間の競争だけではなく、デジタルプラットフォーム事業者の市場における支配力を図る尺度として精緻化することができるのか、できないのかなど議論が展開されている(つづく)(2022年11月5日記)。

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