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14日目 尾道から始めよう

石原団地の朝は早い。朝4時半に起きてトイレットペーパーBOXを10個とティッシュペーパーBOXを10個を車に積み込む。義母が新聞購読の返礼でため込んだ品である。大量のトイレットペーパーを積み込む姿を見られるのが恥ずかしいというのもあるが、島根ー神戸は休憩しながら帰ると自動車でも7時間以上かかるために早朝出発だ。今回は初めて尾道に寄り道をすることにした。というのも塩屋で始める空き家対策事業のベンチマーク事例として挙げているので、どんな取り組みなのかを見ておきたかった。

千光寺山ロープウェイの目の前にある100円パーキングも平日朝9時ならさすがに空いている。車を止め山頂駅まで登り、休憩所で私はユブネの定例会議にオンラインで参加。妻と息子はレモネードとアイスクリームを食べていた。近くの尾道市立美術館ではちょうど古材や空き家を扱ったアーティストが展示をしていたので、そこにも立ち寄ることにした。

シュシ・スライマンによって尾道で実際に古民家からレスキューされた釘や瓦、とたん、壁土などがアーカイブとして展示されている。とりわけ驚いたのは、空き家で死んでいた猫のミイラが猫が倒れていた布団ごと展示してあり、それは猫の街でもある尾道にとって貴重な財産として同等にアーカイブされているということだった。私が見ているのはかつて猫だった「何か」であり、かつて猫とその布団の周りにあった生活であり、かつて猫が歩いていたであろう尾道の坂道である。そしてその暮らしが消滅した事実である。

商店街まで降り、尾道ラーメンを食べる。息子も一人前に「当店人気NO.1角煮ラーメン」を譲らない。まったくラーメン通ではない私は尾道ラーメンが何なのかもまったく知らないのだが、坂道を降りてきて汗びっしょりの身体にはほどよい塩加減である。あくまで私にとってではあるが、ロープウェイで登るところからすでに尾道ラーメンは始まっていたに違いない。まちの構造そのものが尾道ラーメンなのである。神戸に向けて再出発したワーゲン号の車中では息子が新曲「尾道ラーメンのうた」を披露してくれた。どうやら彼も気に入ったようだ。

順調に山陽道を走り、自宅まで後1時間半というところでエアコンのヒューズが飛んだ。全く冷房が効かなくなった。しかし、旧車乗りはこれくらいでは動じない。私だけではない。もう3年も旧車に乗ると妻も動じなくなってきた。窓を全開にして夕暮れの高速を走った。暑いぞ。

20230919

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