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【加筆訂正あり】離婚が成立して考えた。私はまだ女として生きられるのか。からの、いま。

2回目の離婚が成立して一番はじめに思ったことは「私はまだ女性として生きられるのかどうか」だった。

それで、誰でもいいから試してみたかった。
私の身体はまだセックスができるのかどうか。
私という人間は誰かの性欲の対象となりうるのかどうか。

でも、身体だけの相手なんてそうそう見付からないし、どうせセックスするなら「恋人」と、したかった。
だから恋人を作ろうと思った。

そんなとき、ある男の子が、私の恋人になりたいと言ってくれた。前から私のことが好きだったと。離婚が成立するのを待っていたと。

それで、その男の子のことはよく知らなかったけれど目的を果たすために恋人になった。

はじめてふたりで会った日に、良く知らないその男の子とラブホでセックスした。

そして私は自分が誰かの性欲の対象になることと、セックスできる身体を持っていることを知った。

しかし男女関係というものはセックスだけでは成り立たない。
最終的に私は、その男の子を大切にできなくなってしまった。
そして他の人との出逢いを探しはじめた。


そんなとき、今の恋人と知り合った。
今度はセックスではなく、信頼関係の構築を目的にした恋愛をしようと思った。

前の男の子とは作れなかった「お互いを大切にし合う関係」を作りたかった。

しかし恋人は手強かった。
彼は不安が強くて警戒心が強かった。
表面では楽しく明るく優しい人だったが、私はなかなか、彼の心の内側に入れてもらえなかった。
そして彼は少しでも不安を感じると私から離れようとした。

信頼関係の構築を目的にしていた私は、どうにか彼の心に入り込みたいと諦めずに努力した。

どうしたら彼の不安を和らげられるのか。
どうしたら彼は安心できるのか。
日々その事ばかりに心を砕いていた。


ある日、酔った彼の話の中から知ったのだが。

彼には、私からすると、とうてい許しがたい過去があった。
そのことを知った私は、彼のしたことを許容できないかもしれないと怯んだ。

このまま離れるべきか。
悩んだ。

自分の心の大きさを「自分に」試されていると感じた。

私が知っている情報は、あまりにも少なく、私による推測の部分が多すぎた。
もっと深いところまで、彼がしたことを知りたかった。
どうしてそうなるに至ったのか、当時の彼の心を知りたかった。

それで。
全部教えて欲しいとお願いした。
私がちゃんと納得したいから。
あなたのしたことを教えて欲しい。
と。
納得できないままでは一緒にいられないから。
と。

断られるだろうと思った。
そんなことまで話したくないと言われるに違いない。
本来なら人に言うべきようなことではないから。

しかし。
予想に反して。
彼は全てを語ってくれた。
彼が犯した出来事を事細かに。
それから自分の経験した辛さと苦しさを。

「さくらと、ずっと一緒にいたいから、何でも話す。だから、どこにも行かないで欲しい。」
絞り出すように、彼は言った。

そうして彼の過去を詳細に知った私は。
ようやく。
彼の強い不安の原因を見つけた。

私は。
辛さと苦しみを抱えた、その時の彼の気持ちを想像した。
そうして、今の彼の中にある、過去の彼を抱き締めて「辛かったんだね。苦しかったんだね。悲しかったんだね」と言った。

彼は「ありがとう」と言ってくれた。

それで。
私たちの。
ふたりの心は繋がった。

付き合いはじめに決めた「信頼関係を構築する」という目的は、達成された。

それと同時に彼への愛おしさが爆発しそうな勢いで溢れ出てきた。

彼と心が繋がったことの達成感と、彼への愛おしい気持ちが。
どうやったら彼に伝わるのか考えて。

「心が繋がったから身体も繋がりたい」と言った。

そうして私たちは、はじめて。
性欲が目的ではないセックスを、した。

それは想像を遙かに超える貴重な体験だった。


私の性欲は離婚直後ほど強くなくなっていた。

だから付き合い始めてからずっと、恋人の性欲が先行したセックスを繰り返してきた。
でも恋人からのセックスの申し入れを断ったことは一度もなかった。
「いつでもあなたを受け入れる。」
その気持ちを行動で示したかったから。

もちろん彼を好きな気持ちや愛おしい気持ちは持っていたけれど、それでも「好きな人がセックスをしたいと言うから受け入れる」という気持ちからの行為だった。

だが、今回は違った。

私の心が、彼と繋がりたがった。

それで、身体を繋げて。

もう、離れられないだろうと。

心も身体も、認識した。

逃げるのはやめよう。

どこをどう考えても。
この人とは離れられない。

たとえセックスできなくなったとしても。
私はこの人の、心も身体も愛し続けるのだろう。

愛し続けること。
と。
愛するのをやめて離れること。
と。

どちらが苦しいのか考えた。

それで。

一緒にいることにした。

一緒にいることに、決めた。

モヤることもある。
泣くこともある。

でも。
「さくらの、その笑顔をずっと見ていたい」
と言ってくれた彼の言葉を。
抱えながら生きようと思った。

彼の隣にいれば、私は。
ずっと笑顔でいられる。
そう思えた。

50数年生きてきて、そう思うのだから。
あながち間違いではない。
きっと叶う。

そうして。

万が一、それが叶わなかったとしても。

私は、悔いることはないでしょう。