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北朝鮮、雲山鉱山にかけた父の夢

前回の記事で触れた父の北朝鮮合弁事業に関する話を書いておこうと思う。

父は2006年にガンで他界した。
生きている間にもっと話を聞いておきたかったと悔やまれる。

2022年の夏、韓国のテレビ番組『いま、会いにいきます』で日本人拉致問題を扱うことになり、出演の依頼を受けた。資料を探す過程で、この本を偶然手に取った。まさか父の話が出てくるとは…

混乱と驚きの中、実家に一時帰省した2022年の秋、亡き父の書斎から初めて見る写真の束を偶然発見した。

1986年、若かりし頃の父。
この事業に関わった後、人生を方向転換した。
北朝鮮の雲山鉱山

本の著者、張(チャン)氏はすでに他界したようだが、張氏と両親は若い頃からの顔見知りだったという。

父はこの本の存在を知ることなく亡くなったので、張氏の「黒い蛇」としての秘密任務について最後まで知ることはなかったと思う。

母も張氏について何となく覚えていると言うので、この本を最近読ませたところ、相当なショックを受けていた。

「若い頃、貧しい総連活動家(商工会)だった張さん」が「黒い蛇」という秘密工作員だったなんて、今でも信じられないという。

その後に見つけたこの本『朝鮮総連の大罪』(2003年、金昌烈著)にも、「雲山金山開発プロジェクト」について詳細に書いてある部分があった。(219ページ~236ページ

2冊の本、父が残した写真、父から直接聞いた話、母の証言と記憶を繋ぎ合わせると一つの大きなパズルが完成し、当時の私に理解できなかったことが見えてきた。父の苦悩と心痛に思いを馳せながら、ここに整理したい。

本文中の写真には、著者の張龍雲氏、日本人拉致を実行した工作員の韓竜大(神戸でラーメン店経営、店員の田中さんを北朝鮮へ拉致した実行犯)等、秘密組織「洛同江」メンバーが一緒に写っているはずだ。
(本文には複数の写真が含まれますが、父以外のメンバーの顔には基本的にボカシを入れています。)

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