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百鬼堂農園

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土いじりなどしたことのないオッサンが畑に挑みます
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#60 百鬼堂農園(12) 岩と瓦礫と初収穫

#60 百鬼堂農園(12) 岩と瓦礫と初収穫

 「おはよう、がんばってるね」市民農園最年長のおばあちゃんが遠くから声をかけてくる。隣には同世代のご婦人。この友人とふたりでホームセンターに苗を見にいくという。

 まだまだ広大な遊休地がある我が畑をみて、ご友人から「キュウリでもトマトでもナスでも、何でもいいから(暑くならない)いまのうちに植えなきゃダメよ」とありがたいアドバイスを受ける。

 わが農園の現状は以下の通りである。

第1畝 オクラ

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#59 百鬼堂農園(11) 孫と農耕馬

#59 百鬼堂農園(11) 孫と農耕馬

 最近は米津玄師「さよーならまたいつか!」を聴きながら畑仕事をすることが多い。朝ドラ「虎に翼」は毎日欠かさず見ています。

 農具運搬問題の続き。原付を導入することで解決しようと思ったが、どうも買う気になれず。それなら大量の荷物が積める自転車はあるだろうか、とネットで検索してみた。農作業に適しているかはともかく、たくさんの荷物を運ぶという需要はあるはず。

 ありました。安定性に優れ、頑丈で、前に

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#58 百鬼堂農園(10) 祖父とスーパーカブ

#58 百鬼堂農園(10) 祖父とスーパーカブ

 夏場所6日目、開幕6連勝を決めた宇良の上手出し投げ、素晴らしかったですね。カッコいい。技はかくあるべし。

 農園経営において初期段階からの課題解決のため、大きな出費すべきか否かをずっと検討していた。農具や肥料や水などの運搬問題である。

 わが農園は住宅街の一角にあり、市民農園を管理する公社は、車での来園を原則禁止している。苗だの肥料だのを運び込むための一時的なものなら可ということで、たまに路

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#57 百鬼堂農園(9) 枯れども死なず

#57 百鬼堂農園(9) 枯れども死なず

 ここの文章は書きためたものを推敲した上で出稿しています。よって、時制としてはそれなりに遅れての掲載になります。本当に推敲してんのかという疑いを抱かれる向きもあるでしょうが、一応しています。

 大型連休は3日間休みがあり、出かけていたため畑の様子は見られなかった。前回の追加投入の直後に気温15℃の寒い日があり、連休中には真夏日を記録した。野菜たちにとって厳しい環境だったと思われる。これからもっと

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#56 百鬼堂農園(8) 意識高い系農耕おじさん

#56 百鬼堂農園(8) 意識高い系農耕おじさん

 サウナ、ロードバイク、合気道、座禅、そして趣味としての農作業。我が身を振り返ると、やっていることは意識高い系おじさんのそれではないだろうか。そう思われると、なんだか恥ずかしい。ちょっと余裕のある、そんな感じに見られたいんだろうな。でもまあ、おじさんになってしっくりくるものもあるのだ。温かい目で見守っていただきたいと思います。

 ジャガイモ、オクラを追加投入した。ジャガイモは種芋はもう売っていな

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#55 百鬼堂農園(7) 鉄の爪

#55 百鬼堂農園(7) 鉄の爪

 フリッツ・フォン・エリック一家の話ではない。映画「アイアンクロー」を観に行きたいが、そんな暇はない。「ゴジラ×コング」も観たいが、「悪は存在しない」はもっと観たい。市民農園を借りてからというもの、ゲームの時間は明らかに減ったが、ささやかな読書時間も減り気味。もう仕事やめて農耕に専念したいなあ、という妄想に駆られる。

 隣の区画の東さん(仮名)は、ちょうど一年前に市民農園を借りたという。スコップ

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#53 百鬼堂農園(6) 萌芽

#53 百鬼堂農園(6) 萌芽

 市民農園を借りてから、書きたいことがいくらでもある。畑仕事は単調なことはほとんどなく、必ず何か起きる。noteで書くことがない、という人は、プランターで何か育てるなどしてみてはどうでしょうか。

 一番ハードルが低いと思っていたハツカダイコンの芽が出ない。4~5日で発芽とあるが、土壌が厳しすぎたか。枝豆とスナップエンドウの葉が少し黄色くなり、強風で倒れかけている。トウモロコシは元気そう。なぜか植

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#52 百鬼堂農園(5) 農業ストロングスタイル

#52 百鬼堂農園(5) 農業ストロングスタイル

 市民農園に知り合いができた。東隣の区画の東さん(仮名)と、西側に2区画離れた大西さん(仮名)である。初心者の私に親切に声をかけてくれる優しいふたりである。大西さんは前回、ニラを自由に取っていいと声を掛けてくれたご老人。市民農園の先達であるふたりを追って紹介していきたい。が、しないかもしれない。

 育てやすそうな品種、4月半ばに種をまいたり苗を植えたりするのに向いている品種、収穫して食べてみたい

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#51 百鬼堂農園(4) 黒部の太陽

#51 百鬼堂農園(4) 黒部の太陽

 考えるな、動け。

 周到な準備を怠って痛い目に遭ってきた人生。でも勢いで適当にやって、うまくいったことだってある。いきあたりばったりでも、何とかなってきた人生ともいえる。準備したってうまくいかないこともあるし、周到な準備ができる能力もないのだから、適当にやるしかない。逡巡して何も始まらないというのが最悪、と思い定め、前へ。

 まずは、

❶耕して土を混ぜる ❷肥料など投入 ❸畝(うね)をつく

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#50 百鬼堂農園(3) ロードバイクに鍬しょって

#50 百鬼堂農園(3) ロードバイクに鍬しょって

 初心者が農作物をうまく収穫できるのは半分程度、というような文章をどこかで読んだ。ならばこちらの目標はそれ以下の4割だ。NPBなら首位打者である。ただ、この連載が続く可能性も4割くらいではないか、との危惧は正直なところ抱いている。

 今回は道具の話。

 農具が借りられる大規模な市民農園は、うちから遠い。契約したところは、すべて道具を自前でなんとかしなくてはいけない。農具を畑に置きっぱなしにして

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#49 百鬼堂農園(2) 過剰融資契約

#49 百鬼堂農園(2) 過剰融資契約

 「農業ほど知的な仕事はない。辞意表明をした静岡県の川勝知事は農業をやったことがないのだろう」との意見を、紙上で森永卓郎さんが開陳していた。なるほど、森永氏や伊藤翁の挑戦の記録を読めば、まさに農業とはそんなものという気がしてくる。

 妻はあまり私のやることに反対しない。おそらく夫のやることに興味がない。今回の市民農園契約プランを相談したところ、開口一番「私は絶対に手伝わない」と宣言し、その上で「

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#47 百鬼堂農園(1) そして僕は途方に暮れる

#47 百鬼堂農園(1) そして僕は途方に暮れる

 やっちまった。

 雑草もなくきれいに整地された20坪の畑に立ち尽くし、思わずつぶやく。広すぎる。先日、市民農園を借りる契約をした。血迷ったとしかいいようがない。

 何人かの同僚が野菜作りに取り組んでおり、楽しげに話しているのを聞いて、なんだかいいな、とは思っていた。そんな折、息子がこの春に家を出た。なんだか寂しくなり、ペットでも飼おうかと検討もした。だけど生き物は手間がかかるし死んだら悲しい

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