通り魔になりたいんだ。
飛切の通り魔になりたいんだ。
大きい、良く研いだ包丁を
道行く人たちに振りかざしたいんだ。
僕は出血や人の四肢の欠損にはまったく興味がない。
胴体から溢れる臓物や、顔面に同情が生じるほどの傷をつけることなんて論外だ。見ていられない。
僕は道行く人の耳や目から侵入する。
そうして気づかぬうちにたった一つの大きい傷をつけるんだ。
かつて僕がそうされたように。
・・・
恐らく、2か月ぶりにちゃんとした文章を書いている。
かつて自信があったはずのタイピングの速度が私の怠慢を責めている。
恋人ができるっていうのは恐ろしいね。特に僕みたいな人種には。
他の何一つ手につかなくなってしまう。
それにある程度、幸せになってしまう。
これが特によくないんだ。
今まで文字を書く理由ってのは不幸に対する当てつけってのがでかかったからね。
それも質が悪いのが、言い切ることのできる幸せなんじゃなくて、
なんかこう複製に複製を重ねた、誰でも享受できるような、
ひねくれ者の私からしたら
享受することを拒んでしまいたくなるようなそれなんだ。
45度の風呂に入るのはそれなりに人を選ぶだろう。
15度の風呂に入るのも上に然り。
ただ言えるのはそれを好んで入浴する人からしたら、そこにはその人なりの幸せが存在するんだ。
私が今感じているのは36度。入っても入らなくても感じる温度は何も変わらない。そこに特別な感情はあるんでしょうか。
2か月ここを留守にしていた私にあるコメントが届いた。
かつて不幸を謳歌していた私が書いた文章に対して、共感を感じたというコメントだった。
更に、私が文末に飾った「あなたの好きな曲について教えてください」
というお願いに律儀に答えてくれていた。
私は、その瞬間通り魔の片鱗を感じたのだ。
四肢でもなく胴体でもなく、顔面でもない。
だが、確かにその人の人生にほんの少しの仇をなした。
ほんの少しだったのはわかってる。
それは今後の人生に大して影響しなかったとて、
私の、私が研いだ文章が彼に刺さったのだ。
今まで研いできたものは無用の長物ではなかった。
それが分かっただけで十分だった。
出来れば、明日も書こうと思う。
そうしていつしか誰かにとっての通り魔として
一生消えない仇を残したいから。
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