見出し画像

開き直った卑怯者

恋愛には勝ち負けがあるという説がある。
惚れた方が負けであって、相対的に惚れられたほうは勝ちになる。

私はどうやら勝ったらしい。
そんでもって私は生まれてこのかたほとんど勝ち試合しかしたことが無い。そりゃそうだ。負けるとわかっている試合に参加するほど馬鹿じゃない。
それに高校3年間で一度コテンパにやられたから。

勝てるとわかっている試合にしか参加しない。
いま大学でゲーム理論を勉強しているが、ちゃんとその視点でも説明がつく。私は卑怯者ではない。理論的には。

私の心は私の思考を卑怯者と紛糾して止まない。


彼女ができた。その整理でここに書こうと思う。
やけに長くなる気がするし、結論がすぐに出てしまう気もする。
飽きてしまう気もするし、ほかのことに気を取られてしまうかもしれない。
大した文の量じゃないのに徒に時間がかかってしまってそれに自己嫌悪するかもしれない。
それでいいから書いておくれ。
ゆっくりでいいよ俺。大丈夫だから。途中でやめても誰も咎めないから。

・・・

2月10日と11日のあやふやな境目。
私たちは、暖房の効きかかった車の中にいました。
後部座席には誰もおらず、
強いて言えばさっきまで舞台で私に沿っていたベースが一本。
白というには黄ばんでいて、良い様に形容すると「クリーム色」のようなベースがケースの中で座席に靠れかかっていた。

往復2時間ほどかかる送迎を嫌な顔せずやってくれた女に、
私は私のことを好いてくれているという自信を募らせた。
(そうか、私のことを好いてくれているからこの程度やってもらって当然なんていう考えがあったのか。振り返ってみると失礼極まりないなあ。)

私が住んでいる寮の近くの駐車場に車を止めてくれ、
お互いの心を前戯するような、そんな風な雑談が始まった。
何を話したかはもうほとんど覚えていない。大事なのは話の内容じゃなくて、あの時間だったから。同じ目的のはずがそれを直隠して、でもそれさえもお互い分かっている、端から見れば不毛も甚だしい会話。

(情景描写に気を取られて筋からハズれてしまいそう。その子のことを女って言ってるのは描写としてだから。普段から女の子のことを女って言ってるわけじゃないから!!!)

0時を過ぎてしばらくしたころ、女に急に触れたくなって、
話の流れをわかりやすく体温の話にして、口実通り、手を握った。
やけに暖かかった。その暖かさっていうのは、
女に触れたいっていう欲求から、ほんの少しだけその子に触れたいという欲求に変わる理由になった気がした。

この状況が好きだった。心地良かった。
好きという感情で私のすべてを肯定してくれる女だけが同じ空間にいて、ほかに邪魔は何もなく、空の暗さも、やけに人の肌を欲してしまうような寒さも、ほとんどが私の味方でいてくれて、満たしてくれた。

ただ、たった一つ足りないものがあった。
その女でなければならない理由だった。
それさえあれば私はそこにある全ては自信に満ちた恋愛になりえていた。

恋愛に不可欠なものの一つは
「その人でなければならない理由」
を見つけることだと思ってる。だって大体の恋愛は代替で平気じゃないか。

平気じゃないと思うのは、ほとんどが思い込みだと思う。
どうせ平気な顔をしだすんだ。みんな。

(こうゆう風に思ってしまうのは、私がこれまで幼稚な恋しかしたことがないからなのかなあ。書いていていくらでも反論できそうだなあと思っちゃうね!!わろ)

私には断固としてその女じゃないといけない理由は無かった。
ただ、異なる性別と、生理的に大丈夫な外殻と、好意があればその状況はなりえた。
でもその女がどこかに行ってしまうのはとてつもなく嫌だった。

なんて稚拙で卑怯な考えなんだろう。
そんな考えを持っていることに耐えられなくて全部女に吐き出したかった。
吐き出して、罪滅ぼしをしたかった。救われたかった。
でもそれをしてしまうと、自分が自惚れた人間だと吐露してしまうようなものだった。

黙って幾分か考えたのち、私は私の胸の内を晒すことにした。
つまるところ、告白をした。
愛の、恋の告白ではなかった。
私が孕んでいる罪の告白だった。

その告白ができるのは相手が私のことを好いてくれているという確信があるからできるものであって、とても失礼で自惚れたものであった。
それにこれを受け入れてくれるだろうという甘えもあった。
(文字にすると悉くひどいなあ)

これを一通り聞いた彼女は、私への好意を語ってくれた。
私の考え方や、話し方なんかに好意を持っててくれたようだった。

私にその女でないといけない理由なんてものはほとんどなかったが、
その女は私にしかないという魅力を語ってくれた。 
女は思考と言葉に齟齬が無いように私に伝えてくれた。

それは普段私がやっている思考そのものだった。

その一挙手一投足はとてつもなく愛おしい、なにかどうしようもない感情を
私に気づかせた。だがその感情さえも私は信用できなかった。その女を好きといえる根拠にはならなかった。
私みたいな卑怯者が恋愛をやっていいとは思えなかった。

でももう開き直ってみてもいいんじゃないのかと。
今までの自分の哲学はもう私にとって枷にしかならないんじゃないのか。

そうして私は開き直った卑怯者になって、
その女と番になった。

・・・ 

なんだか飽きたので。




















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?