見出し画像

店長VS統括


#はじめての仕事

降水量はやけに多く、羽織るものが無いと風邪をひきそうな季節に、初めて私は社会の一片を知った。

大学生にもなって親の脛をかじり続けることに罪悪感を持った私は、一念発起し、バイトを提供する某サイトで喫茶店の仕事を見つけた。

そこは見る限り、女学生に人気そうな雰囲気のお店で、働いていると
「そこのお兄さん。良ければこれを」といって番号の一つや二つ渡されたりするんではないかと、私はまっすぐな心を下腹部に隠しながら面接に向かった。

面接をしてくれたのは店長(以後、天使長と呼ぶことにする。)と、
統括(以後、自己管理不足豚足五十路コンプレックス激イタJD狙い勘違い哀れ不憫不愉快ファッキン統括と呼びたいが流石に長いので悪魔と呼ぶ温情を与えるとする。)だった。メタ的な話をすればなんとなく上の文で内容はわかったと思う。

初めに対応してくれたのは天使長だった。この方は小童である私から見ても品性と知性にあふれている人間であり、社長夫人であった地元にいる父方の祖母を思い出してしまうほど素敵なお人柄をした方だった。

天使長は、高校を出たばかりの社会経験のしゃの字も知らない洟垂れに対して驚くほど低い腰で対応し、忙しい中、荒天も凪ぐような穏やかな口調でお店のことを説明してくれた。

そのことに感銘を受けた私はここに骨をうずめては良いんでないかとまで考えるに至っていた。
だが、私の骨はそれを拒否したようで、また、嫌な予感が骨の髄をかすめたようで、すでに帰り支度を始めていたような気がする。知らんけど。

面接が終わり、帰ろうとすると例の如く奴がやってきた。
あっ、蛇だ!いや鬼だ!いやあれは悪魔だ!
的な感じでやって参りました。この話の華である、悪魔。
華は華でもショクダイオオコンニャクとかの部類の奴です。

奴は奥の部屋で仮眠をとっていたみたいで、その自己管理能力が欠如しているとも捉えられかねない体躯を左右に揺らしながらやってきた。

私も伊達に19年生きてきたわけではない。ある程度、そうゆう人間とは渡り合ってきた。そんな私の相棒である脳みそ君はちゃんと警告してくれていた。こいつまずいぞ。と。

そいつは面接を始めるや否や私の所属学部について突っ込んできた。
私の学部は経営について学ぶところだった。ので、それを伝えるとなぜだか悪魔の顔が得意げになり、
「米株の乗り越えの壁問題について知ってる?」と聞いてきた。
別に率先してニュースを見る質でもなかったので
「知らないです」と正直に答えた。

すると悪魔は
「経済学部なのに?????」ときっしょい面を拝ませてくれた。
(※因みにこの時私はまだ大学の門すらくぐってはいなかった。)

そのあとについてだが、延々と近年の経済事情について高説を垂れまくっていた。湿度は増した。多分世界のどこかに新種のきのこが生まれた。

私はずっと赤べこしていただけだったが、なぜか合格で”いい”と言われその日から務めることになった。

最終的には1か月そこらしかいなかったが、良くも悪くもたくさんの経験ができた。(割合としては1:9くらいだけど。ふぁっきゅう)

基本、普通の飲食店の仕事だったがなんせ仕事場に悪魔がいるもんで、気が気ではなかった。一回、店の皿を一枚割ってしまって焦りながら悪魔に謝ったのだがそれが気に入らなかったらしく低俗な説法を食らった。高架下の電車くらいの声量で。
1週間後、悪魔は20枚の皿を割った。芸術点が高すぎる。

悪魔は永遠と私か厨房のばばあに対してマウントを取っており、キレイな女子大生がシフトに入っているときはそれが顕著になっていた。
かつて昔の話を語られたことがあった。
聞いてもいないのにグレていたことを後悔したフリをしながら得意げに陳じていた。お前今年で45だろうが。

対して天使長はいつもニコニコしていてこの人よく悪魔とやってけるなあと驚きと不憫が私の顔に出てたと思う。

少し逸れるが悪魔の傘下の人間みたいなやつもいて
まあ、いわゆるお局というやつ。
そいつもなかなかになかなかで、私が決められた休憩時間を取ろうと思い、そのお局にいつのタイミングで行けばよいか尋ねると、
「大して働いてもないのに?」と。
こいつのバックグラウンドが気になった。多分闇落ちしたサスケみたいな人生なんだと思う。

そんなこんなで交通費が出ないことを建前にやめることになった。
逃げるようにやめていったので天使長に感謝と思いを伝えることができなかったのでここに記そうと思う。
まじ辛かったらあいつらぶん殴ってくれ天使長。多分ぎり合法だから。
あと天使長がつくったパフェマジうまかったありがと!
お金何回か払うの忘れちったけど!




この記事が参加している募集

はじめての仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?