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【二次創作】”炎上”について考える

昨今のSNSは「炎上」で溢れています。オタクコンテンツに関しても、様々なジャンルで様々な炎上が日常的に起こっています。
自ジャンルやカップリング界隈など、自分の推しの周辺が炎上すると、当然ですが精神的に負担ですよね。大好きなものを傷つけられるわけですから、悲しい気持ちになるのは当然のことです。落ち込むのはもちろん、場合によってはメンタルに支障をきたしてしまうこともあると思います。
今回は、「なぜ炎上は起きてしまうのか」をSNSマーケティングの観点から考察していきます。「なぜ」を知ることでSNSの負の側面に適正に対処し、自分の心を守ることにつなげたい。客観的な視点をもつことでトラブルに巻き込まれることを防ぎたい。ご参考いただければ幸いです。


【1】SNSは「マッチ売りの少女」のようなもの


・SNSの投稿は「切り取られた一瞬」
・一番キラキラした瞬間、格好いい瞬間が「切り取られている」
・日常ではない幻想、あるいは背伸び、嘘も多い

インスタ、FB、Twitter(X)……そこにアップされた写真や文章、そのすべてが「等身大」の「本物」であると思っている人は少ないと思います。あらゆるSNSで、あらゆる種類の「背伸び」や「嘘」が横行しています。では、なぜ背伸びをしたり、嘘をつくのか。それは、現実世界での足りない何かをSNSという架空の空間の中で満たそうとしているからです。
マッチ売りの少女の物語を思い出してみてください。少女は貧しい暮らしをしていますが、売り物のマッチを擦った瞬間だけはあたたかい家や豪華な食事が現れます。マッチに火をともした瞬間だけは、素晴らしい夢を見ることができるのです。SNSで背伸びをしたり嘘をつく行為は、マッチ売りの少女の哀しさとよく似ています。現実は得られないもの、愛や尊敬、経済的な満足、社会的な栄達、そして誰かから認められるということ。現実では得られないそれらもSNSの上では比較的容易に見つけることができます。まるでアイドルのように愛されたり、大金持ちのように羨ましがられたり、専門家のように頼られたり……
これらは、オタ活の場にも通じることです。神絵師と呼ばれる人でも絵を仕事にできる人はわずかです。その殆どはジャンルという小さなコミュニティの中だかこそ慕われているに過ぎません。グッズを沢山買ったり遠征を頻繁にしている人も、特別なお金持ちではなくお給料やバイト代をやりくりしてお金を捻出している人が殆どでしょう。絵や文章が上手い人、オタ活にたくさんお金を使える人は、確かに羨ましいです。だからといって、彼女たちはものすごく特別な人間というわけではありません。少し背伸びや努力して身を削って「いいね」を集めているごく普通の人です。SNSを離れれば、悩みや苦労もある、私たちと同じ人間です。そう考えると、いくらか気持ちが楽になるのではないでしょうか。

【2】炎上はワイドショーのゴシップと同じ


・いい話よりも「悪い話」「下世話な話」がウケる、盛り上がる
・炎上はワイドショーや週刊誌のスクープよりスピードがあって面白い
・SNSの炎上は「背徳の快楽」

その昔、芸能人のゴシップを載せる週刊誌や新聞がたくさんありました。しかし、今は随分と減ってしまっています。その原因の一つにSNSの登場があると言われています。秘密を暴き、裏の顔を覗いて、有名人や芸能人の転落を楽しむ……そういう背徳的な快楽をもたらすものが、週刊誌やスポーツ新聞、ワイドショーの役割でした。
しかし、今はSNSがあります。そして、SNSで繰り広げられる「炎上」のほうが週刊誌やワイドショーよりもずっと面白いのです。なぜなら、SNSには遠慮がなく、スピーディーで、拡散によって多くの人がその話題に参加できるからです。毎日毎日供給される新しい「炎上」。たとえ芸能人のゴシップでなくても、昨日まで知らなかったインフルエンサーの炎上でも、あるいは一般人が叩かれるだけでも十分すぎるくらい面白い。まさに背徳的な快楽です。だからこそ、炎上は頻繁に起こるし、あっという間に延焼していくのです。どんなジャンルにも、残念ながらそういう「背徳的な快楽」が好きな人は存在します。オタ活界隈も同じです。ジャンルを荒らさないで欲しい、推しを傷つけることはしないで欲しいと思う大半のファンに混じって、炎上魔は確実に存在しています。そして、彼らが一旦暴れ始めると、匿名というSNSの特性のせいでますます燃え上がってしまうのです。

【3】燃料が注がれる限り、炎上は終わらない


・参加者がいる限り続くお祭りのようなもの
・どんどん勝手なことを言い出す「お気持ち」の連鎖
・無視することが沈静化の近道

炎上は、多くのファンの心を傷つけます。ジャンル自体の評判を下げることにもつながり、せっかく興味をもってくれた新規ファンにも「怖いジャンルだから、関わるのはやめておこう」「二次創作をして叩かれたら嫌だからやめておこう」とネガティブなイメージを与えてしまいます。
それでも、炎上が止まらない理由は、「燃料」が注がれつづけるからです。SNSは基本的に匿名であり、アカウントを複数もつことも容易です。そのため、一度燃え始めると、次々と匿名アカウントがつくられ、あることないこと発信し続けます。マシュマロなどの匿名ツールやDMを介した裏のやりとりもこれを加速させます。「燃料」が注がれる限りそれに感想を抱く人がいて、さらに面白がる人が加わって、炎上は続いてしまうのです。
他人の行動を止めることはできません。しかし、「自分は燃料を投下しない」という選択はできます。匿名アカウントは作らない、マシュマロにメッセージを送らない、エアリプはしない。そう行動できる人が増えれば、騒いでも相手にされなないと知った炎上魔もいずれは大人しくなるはずです。

【4】”正論”は鬱陶しい


・SNSは「プロ<インフルエンサー」な世界
・お気持ち派は反抗期の子供、子供にとって正論は「お母さんや先生のお説教」
・AIによって「自分と似た意見」ばかりが表示される

「ジャンルを愛する本当のファンなら慎むべき行動」というのは勿論あります。しかし、まずそもそも「本当のファン」ばかりではありません。ジャンルに乗っかって承認欲求を満たそうとしている人、自分だけが楽しければいいという身勝手なファンも存在します。そして、そういう人にとって「正論」は鬱陶しいだけです。彼らは反抗期の子供のような存在です。彼らにとって「正論」は「学校の先生のお説教」のようなものであり、自分の意見や感情を否定されると、納得するどころかむしろどんどん反抗的になっていきます。
こういう発想になってしまう人が多い背景には、SNSの特性も関係しています。SNSは友達のように身近な存在である上に、AIによって似たような投稿が次々と表示されるようになっています。そうやって「友達はみんなそう言ってるもん」という発想に陥ってしまうのです。そして、一度思い込んでしまうと、なかなか間違いを認められないのが人間の悲しいところです。炎上させているのは自分たちのほうなのに「原因になった〇〇が悪い」「自分は傷ついたのだから、文句を言うのは当然の権利だ」とどんどん悪い方に暴走してしまうのは、どうにかして自分を正当化したいからではないでしょうか。

【5】”インサイト”を知れば、炎上は怖くない


・目立ちたい?わかって欲しい?投稿主の本音はどこ?
・言葉の裏にある本音(インサイト)を知れば、冷静になれる
・熱心でもお金を落としていても、ジャンルの発展を阻害する人は結局「害悪なファン」


「インサイト」というマーケティング用語があります。消費者の購買意欲の核心、つまり本音のようなものを指します。SNS上での投稿は本心や内面が現れやすいため、過去のログをさかのぼっていくと、その人の人間性やオタ活におけるインサイトを知ることができます。
同じジャンルで活動しているといっても、SNSに投稿する理由は様々です。シンプルに交流を楽しみたい人、二次創作を通して承認欲求を満たしたい人、お金をかけたオタ活を自慢したい人、寂しがり屋でかまって欲しい人など、様々な人がいます。そして、このようなオタ活の「動機」を知ることが、「インサイトを知る」ということです。そして、インサイトを知ることで「害悪なファン」を見つけることもできます。害悪なファンとは、界隈で活動している人や新規のファンに「面倒なジャンルだな」と思わせてしまう、ジャンルの発展を阻害するファンのことです。本人は一生懸命推しているつもりでも、独自ルールをつくって参入しにくい雰囲気をつくってしまったり、解釈にこだわって周囲が発信しにくい環境をつくってしまう場合はままあります。
オタ活のインサイトを知ることで、ミュートやブロックをすべき相手を見極めることができます。どんな呟きが流れてきても大丈夫!という人は別ですが、他人の発信が気になってしまう人はフォローする前に相手がどんな人なのかを過去のログから推察してみると良いでしょう。

【6】そもそも色んな人がいる


・合わない人と関わらなければ「心」は守れる
・SNSで知り合う人は、年齢・性別・職業・環境が全然違って当たり前
・無理して理解しようとしなくていい、ミュートやブロックは悪いことじゃない


SNSは「匿名」であり、「相手がどんな人かわからない」場所です。同じジャンルにいる、同じキャラを推しているというだけで、普段の生活では関わることのない人がほとんどと言えるでしょう。どこに住んでいるのか、社会人なのか学生か、どんな仕事をしているのか、勉強は得意なのか、友達は多いのか、他にどんなものが好きなのか……本当にバラバラです。学校や会社であれば、ある程度自分と近しい環境の人が集まっているはずですが、SNSはまったく違います。
学校や会社の中でさえ、「自分とは合わないな」「何を考えているのかわからないな」ということは多いです。SNSで知り合った相手のことは、もっとわからなくて当たり前です。
同じジャンルで二次創作をしている、同じキャラが好き、だからといって自分と似た価値観とは限りません。全然違っていてむしろ当然なのです。ネットではなくリアルで、自分とまったく違う属性の人と出会った時、普通はどうしますか。いきなり距離を詰めたりせずに、少し距離をおいて観察して、大丈夫かな?大丈夫そうならもうちょっと話してみようかな?とちょっとずつ近づいていきますよね。同じ趣味をもった人がつながるSNSの世界では、いきなり親しくなることも珍しくありませんが、あくまで相手は自分とは遠い存在で、価値観や考え方が実は違うかもしれないということを忘れずにおきたい。そうやって考えることで減らせるトラブルは多いと思います。

ありがとうございます。 好きを形に!たのしく同人活動!を目標にがんばります!