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絶笑世界/5G/文フリ

ゲンロン五期生による同人誌『5G』に寄稿させて頂いた拙作『絶笑世界』がおおむね好評で涙が出るほど嬉しい。

原稿用紙にして数十枚の短編だが、これを私は何か月も悪戦苦闘したうえでお蔵入りにしたのであった。この時期、わたしは迷走し、途方に暮れ、まるで自信を失ってしまっていた。

同人誌の話を頂いた時、新しい短編を書こうとしたのだったが、持ち前の貧乏性のせいかボツとなった『絶笑世界』をここでリサイクルできないかと思いついた。他所でボツとなったものを載せるのは、使えないゴミを押し付けるようでどこか後ろめたかった。自分は、同人誌をナメているのではないかという意識もあった。しかし、やっぱりどうしてもわたしにはこれがゴミだとは思えなかった。

『5G』のため『絶笑世界』を改稿しながら多くのコンテストや公募に挑戦した。成果の上がったものもあればそうではないものもあったが、そういった中で商業誌ではない場の豊かさと刺激を知ることになった。幸運にも最終選考にまで残ったぐやSFコンテストに応募したのもゲンロン関係のN氏に勧められた(そそのかされた?)からだった。

やがて完成した『絶笑世界』は、今度の文フリで安くはない商品の一部として掲載された。いわゆる「オルタナティヴ」という横文字にはカッコよく、意味ありげだったが、同時にわたしにとって胡散臭いものでもあった。ゲンロン関係の人たちとの付き合いが深まる中で東浩紀氏の『ゲンロン戦記』を手に取る機会があり、その中でもオルタナティヴの価値を著者はSF系のイベントで認識した、とあったが、まさに文フリでは多くのSF系同人ブースが軒を連ねており(これは大袈裟か)大手の出版社が介在しない作品が個性を放っていた。

オルタナティヴとはメインストリームでは価値を判定できないものを新しい物差しで測り直す場であるなら、そこにおいて評価されなかったらついに行き場がなくなってしまうだろう。そんな恐れもあった。いや、そこからさらにまた別の価値を創出することがオルタナティヴの本意ならば、挑戦は無限に継続できるのかもしれない。

冒頭に戻るが、つまりそんなわけで『絶笑世界』を褒められると「涙が出るほど嬉しい」のである。本作の主人公コンビ・全損バルヴの五十嶺と吾妻はまさしく「笑い」という定まらぬ価値観と時代の制約に翻弄されながら、自分の居場所を求めて彷徨する、そんなところもこの作品の境遇にぴったりだった。

なにより同好の士と創作し語り合える環境はいままでの自分には得難いもので本当に楽しかった。文フリではネットやSNSでしか面識のなかった人たちの生の肉体を出会え、イメージの齟齬に驚いたりもした。書く場所を自分で作り出せる人たちには本当に尊敬の念しかない。なかでもやはり縁あって出会うことのできたゲンロン5期生の皆さんには特大の感謝をしたい。

ちなみにご興味のある方はこちらから購入できます!かなり面白い作品が揃っています。


リロード下さった弾丸は明日へ向かって撃ちます。ぱすぱすっ