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洋楽体験初期の大切な1枚 『Agent Provocateur』 FOREIGNER

私にとって初めてのフォリナーはMTVで観た “I Wanna Know What Love Is” でした。

その荘厳さに「世の中にはこんな曲があるのか⁈」と驚き、感動したのを覚えています。いま思えばこの曲がフォリナーらしいかというとそうでもないわけですが、最初のきっかけとしてはインパクトが大きく、今でも時折フォリナーを聴いているのはこの曲のおかげと言えます。

この曲が収められている『Agent Provocateur』(1984年)は、前作にあたる『4』と同様に、ミック・ジョーンズ(ギター)、ルー・グラム(ヴォーカル)、デニス・エリオット(ドラム)というバンド創設時から在籍しているメンバーと、3rdアルバム『Head Games』から参加しているリック・ウィルス(加入前にはピーター・フランプトンやスモール・フェイセズ、デヴィッド・ギルモアと仕事していますから華やかな経歴ですね)の4人でレコーディングされています。

当時はFM録音した中から好きな曲を集めたカセットテープを作っていましたので、他のヒット曲なんかと一緒に “I Wanna Know What Love Is” を聴いていました。そのうちに次のシングル “That Was Yesterday” もヒットして、もっとフォリナーを聴いてみたくなって本作のLPレコードを借りてきたんだと思います。

2曲しか知らなかった私にとって、⑴ Tooth and Nailは想像もしていなかったハードなロックであり、こんな曲もあるんだと驚きました。

そして衝撃だったのが ⑸ Reaction To Action です。これは当時、CM(確かケンウッドかなんかだったと思うのですが、調べてもわかりませんでした)で使われていた曲で、「これもフォリナーだったの⁈」と知りたかった曲がわかったことと、それがフォリナーだったことで二重の喜びでした。冒頭のギターとその後の「Check, one, one, one」がカッコ良すぎるのですが、公式You Tubeでは別ヴァージョンになっています。残念!

しかしながら、(あくまでも私にとってですが)⑹ を過ぎたあたりからこのアルバムはやや失速していきます。⑽ She’s Too Tough で盛り返しますが、当時で言えばカセットのB面を聴くことはあまりありませんでした。

実際、フォリナーとしても取り上げられる機会が多いとは言えないのが本作だと思いますが、特にA面は今聴いても本当に素晴らしい曲ばかりです。ルー・グラムの歌声は言うまでもありませんが、リズム隊も全曲を通じて「こんなに上手かったんだ」と驚きます。

そして、決してテクニカルとは言えないミックのギターの音のカッコ良さは全ディスコグラフィー中、最高です。この音がのちにプロデュースすることになる『5150』の音に繋がっているんじゃないかと密かに思っているくらいです。もちろん、リフはそれまでの名曲の数々と同様にシビれるものばかりです。

最近、音楽雑誌「レコード・コレクターズ」では年代別のロック・ランキングをやってくれていまして、隅々まで楽しませてもらっていますが、改めて80年代に少なからずある恥ずかしさ、薄っぺらさ(それは音だったり姿勢だったり)を思い知らされます。その頃に洋楽を聴き始めた自分としては、あの頃の音楽体験そのものが恥ずかしいものだったかのように感じる時もあります。

このフォリナーも、産業ロックという言葉で括られることが多いですし、それはある種の蔑称でもあると思いますが、そんなフォリナーに限ってみても、創設期から聴いている人達からすれば「4人になってからは恥ずかしい歴史」なのかもしれません(バラードが大ヒットするとどうしても…)。

確かに、イアン・マクドナルド(元キング・クリムゾン)とかの名前があるとバンドの格が上のように感じるのは事実ですし、最初の3枚にちょっと違う雰囲気があるのは間違いありません。私も後追いながら初期3作はよく聴きました。

それでも、50歳前後からすればおそらく本作や『4』(1981年)、ルー・グラムのソロアルバム(Midnight Blueは最高)、バンドの次作にあたる『Inside Information』あたりは、その音楽的背景とか質とかを抜きにして、大切な思い出の音楽になっている人達が結構いるんじゃないかと思いますし、私はこの頃の音楽、この頃のフォリナーが大好きです。

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