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好調な不動産企業決算を支えた背景とは? 企業風土異なる2社が六本木でタッグ

 三井不動産や三菱地所、住友不動産など3月末決算の大手不動産企業5社の決算が出揃いました。一言で言えば各社好調な決算内容でしたが、その評価や財務的な分析は経済紙などにまかせるとして、ここでは今回の好決算を支えた背景や、今後のトピックスなどについて私なりの見解を示していきます。

 まずは今回の決算内容を支えた背景ですが、大きくは2つのことが指摘できます。一つは、コロナ後のオフィス需要が思っている以上に強かったことでしょう。不動産企業のビジネスモデルとしては、オフィスビルや商業施設、物流施設などを建設して、テナントからの賃料収入やオフィスビルなどの施設自体を売却することで収益を得るのが代表的です。大量供給があった2023年は、当初オフィス市況が崩れるとの予想もありましたが、既存のオフィスからの移転需要や賃料水準の上昇もあって、業績に反映されました。

 加えて、コロナで低迷していた商業施設やホテルの稼働が急回復しました。特に、ホテルは円安で外国人観光客の需要が急拡大し、宿泊料金も上昇するなどコロナの頃が嘘のような盛況ぶりです。

 そして、もう一つは、新築マンション需要の強さです。都心部だけでなく、都心に近いエリアの駅前立地では1億円の新築マンションが当たり前になり、都心立地の中古マンションも1億円になっています。高まる需要に対して、供給が少ないことが理由にあげられます。大手不動産企業はマンション立地を数年先の分まで確保しています。マンション価格上昇が、早めに取得しておきたいという消費者の心理を後押しする要因にもなっています。

 好調な業績を背景に、株主優待策の導入や配当金の増額など株価を意識した動きも付け加えておきます。

不確定要素あるも、当面大きな環境変化なく

 これから先、懸念となるのは建築コストと金利の上昇です。住友不動産のように2028年までに供給予定分は工事費用を契約で確定している分もあるようですが、コスト面からのマンション価格の下落要因は見当たりませんので、消費者がついてこれる価格水準がどこまでなのかという点が注意すべきことでしょう。

 さらに、金利の上昇は、住まいの取得負担を増やすのはもちろんですが、不動産企業の用地の保有コストも引き上げます。金利上昇は、オフィスや商業施設のテナント賃料上昇圧力にもなりますので、賃料負担に耐えられなければ空室につながります。

 これらの不確定要素はありますが、年内は不動産企業を巡る環境が大きく変わることはないと思われます。先ほど示した懸念点は、ある程度想定されていますので、各社は有望な地方都市での開発強化や海外事業の拡大などといった対応策を進めています。また、インフレは資産価格を引き上げますので、不動産価格上昇が有利に働く面もあります。円安は、海外から見れば東京の不動産を割安にしますので、高額な物件の需要は伸びる余地があります。

六本木ヒルズ近接の再開発、2社の化学反応に期待

「六本木五丁目西地区」再開発の完成イメージ(出典:東京都資料)

 最後にトピックスを1つ紹介しておきます。一部のメディアで「第2六本木ヒルズ」と呼んでいる「六本木五丁目西地区」再開発が2024年3月に都市計画決定しました。区域面積は10haを超え、総事業費は約8000億円。この再開発は、森ビルと住友不動産の共同事業であり、その意味でも森ビル単体で手掛けた「六本木ヒルズ」とは異なるものです。地上66階、高さ327mのオフィス中心のタワー棟、約1000戸の住宅やホテル、商業施設などを整備する計画です。2030年度の竣工を予定しています。

 「六本木五丁目西地区」再開発は、オープンしたばかりの「麻布台ヒルズ」と「六本木ヒルズ」との中間に位置し、歩行空間を整備して、それぞれのヒルズとの連携も視野に入れたものになります。ヒルズの連携については、森ビルが言い続けていることでもあります。森ビルは非上場であるため、六本木ヒルズは最も高い賃料が取れる最上階に美術館を整備するといった思い切ったことができました。また、タウンマネジメントにも力を入れており、六本木ヒルズでは自治会と共に地域活動を継続しています。住友不動産は上場企業であり、大手不動産の中でも効率的な経営で高い利益を上げてきました。投資家からの評価も高いです。

 このように企業風土が異なる2社がどのような化学反応を起すのでしょうか。「六本木五丁目西地区」再開発の完成を待ちたいと思います。


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