桑島良紀(住まい・まちづくり研究家)

長く住宅・不動産の専門紙に勤務。2024年に「住宅新報」執行役員編集長の職を辞し、57…

桑島良紀(住まい・まちづくり研究家)

長く住宅・不動産の専門紙に勤務。2024年に「住宅新報」執行役員編集長の職を辞し、57歳にして博士の学位を得るべく大学院に進学しました。空き家に関する研究活動のかたわら、住宅や不動産、まちづくりについての情報発信をしていきます。

最近の記事

外国人と空き家が変える 住宅・不動産業界

 5月に入ってから、住宅・不動産業界の大手企業決算や政府の空き家に関する統計の公表などが相次いでありました。住宅・不動産業界と一言でいっても新築から流通、リノベーションなど幅広く、つながりつつもそれぞれの分野での大手にも強弱があります。この機会に、外国人と空き家をキーワードに各分野との関わりを示しながら、住宅・不動産業界の全体像を私なりに整理しました。  まず、住宅・不動産業界の手掛けるビジネス分野を「不動産開発」「住宅・アパートメーカー」「不動産流通・管理」「リフォーム・

    • 再エネ事業と地域活性化の意外な関係 東急不動産が北海道・松前町に拠点

       東急不動産は先日、北海道松前町で「TENOHA松前」を2024年5月15日にオープンしたことを発表しました。この施設は、近隣にある「道の駅」との機能補完を目指して、町内外の人たちが仕事や勉強などに使える場を提供し、さまざまなイベントを企画して、松前町の情報発信の場とすることを計画しています。「TENOHA松前」は木造2階建てで、主要幹線道路である国道228号線「松城バス停」に隣接して立地。コワーキングスペースやラウンジ、貸しオフィスなどを備えるとともに、同社のオフィスも入居

      • 【ニュースの見解】 空き家売買仲介手数料アップの意味

         2024年5月22日付の日本経済新聞(ウェブでは5月21日に速報)に「放置空き家の流通促す 国土交通省、仲介料上限上げ」という記事が出ました。この記事が出る少し前に、こうした方向性を検討していることを個人的に関係者から耳にしていましたので、このニュースに関する私なりの見解を示していきたいと思います。なお、この記事については基本的に関係者・プロ向けということを念頭に有料記事としました。  さて、まずは簡単に記事の内容を確認しておきます。国土交通省が不動産仲介事業者の受け取る

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        • MRは全世代の住まいの選び方を変える 東京・池袋で新たな新築マンション販売

           MR(複合現実)を導入した新築マンション販売が始まっています。三井不動産レジデンシャルは、複数の物件を取り扱っている販売拠点「三井のすまい 池袋サロン」(東京都豊島区東池袋)において、5月中旬からMRを使ったモデルルーム案内を開始しました。日本で初めてだといいます。昨年6月にオープンしたこの販売拠点では、最大幅約7mの3面LEDビジョンを壁および床に配置。VR(仮想現実)モデルルームを展開してきましたが、今回はVRモデルルームにおいて、最新技術であるMRを用いて3D化したデ

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          年数経過した郊外住宅団地 DXで新たな価値を

           大和ハウス工業は、4月17日から兵庫県三木市にある戸建て住宅団地「緑が丘ネオポリス」のコミュニティ施設において、仮想空間や遠隔地とつながる空間拡張システムを使い、コミュニティ活性化に関する実証実験を開始しました。1971年から入居が始まり、同世代がほぼ同時期に入居したことで、高齢化と人口流出、空き家の増加などといった課題に直面していました。地域住民とともに同社が三木市と連携しながら、住み続けられるまちを模索しています。  実証実験では、デジタル映像と自然音で仮想空間を再現

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          都市とイノベーションの深い関係

           都市とイノベーションは深い関係にあります。そのことは不動産会社のみならず、地方自治体や世界各地の都市も意識していることは余り知られていません。4月27日~5月26日まで東京都によるスタートアップ支援イベント「SusHi Tech Tokyo 2024」が東京ベイエリアで開催されています。このうち、東京ビッグサイトを会場に5月15、16日の2日間に渡って開催されたのが「グローバルスタートアッププログラム」。都市が抱える課題を国内外の都市やスタートアップ企業をつないで「持続可能

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          東京・丸の内から世界へ 米国発、東京で世界的なユニコーン企業育成

           三菱地所は5月14日、アメリカ・シリコンバレーでスタートアップ支援を行っている「Alchemist Accelerator LLC」(Ravi Belani CEO)とともに、今年の秋から支援プログラム「Alchemist Japan」(アルケミスト・ジャパン)を開始します。これはアクセラレーター・プログラムと呼ばれるもので、スタートアップ企業が成長するように専門家による助言など様々な支援を行うものです。東京・大手町にあるビジネス支援施設「Global Business H

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          好調な不動産企業決算を支えた背景とは? 企業風土異なる2社が六本木でタッグ

           三井不動産や三菱地所、住友不動産など3月末決算の大手不動産企業5社の決算が出揃いました。一言で言えば各社好調な決算内容でしたが、その評価や財務的な分析は経済紙などにまかせるとして、ここでは今回の好決算を支えた背景や、今後のトピックスなどについて私なりの見解を示していきます。  まずは今回の決算内容を支えた背景ですが、大きくは2つのことが指摘できます。一つは、コロナ後のオフィス需要が思っている以上に強かったことでしょう。不動産企業のビジネスモデルとしては、オフィスビルや商業

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          空き家数は過去最高に 数の多さと制約で劇的な解消難しく

           ゴールデンウィーク最中の4月30日に、総務省は「令和5年住宅・土地統計調査」の速報集計を発表しました。この調査は5年に一度行う大規模な調査で、既に存在する住宅のストック状況を示す統計となっています。なお、確定値は9月に公表予定です。日本の総住宅数は、2023年10月1日時点で、6502万戸と、前回調査(2018年)と比べて4.2%(261万戸)増加しました。住宅の総数は増え続けており、過去最高戸数を更新しています。  注目の空き家の戸数も900万戸と過去最多で、前回調査か

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          不動産会社がEV船を建造・所有 新スタジアムだけでない築地再開発とは

           東京・築地市場跡地の新たなまちづくりを行う事業者グループが決定し、その計画が公表されました。東京都は4月22日、「築地地区まちづくり事業」において、三井不動産を代表企業としてトヨタ不動産、読売新聞グループ本社などの11社が構成企業として参画するコンソーシアムを選定。「ONE PARK×ONE TOWN」をコンセプトに、5万人収容のマルチスタジアムを中核施設として整備します。また、健康長寿社会に向けた「ウェルネスイノベーション」「食・体験・にぎわい」「迎賓・ホスピタリティ」の

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          三井不レジ 新築「億ション」も高い人気に 東京・中野駅周辺で進む再開発

           東京・中野駅周辺は、複数の再開発が進行しており、その景色を一変しようとしています。三井不動産と三井不動産レジデンシャルは、複合再開発「パークシティ中野」で整備する2棟のマンション「パークシティ中野 ザ タワー エアーズ」(総戸数545戸、2025年12月下旬竣工予定)と「パークシティ中野 ザ タワー ブリーズ」(総戸数262戸、2025年12月下旬竣工予定)の事前予約案内会を5月3日から完全予約制で開始します。  販売対象は約100人の地権者分を除いた401戸。7月中旬の

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          三井不動産と東北大 仙台で新産業創出の場とコミュニティづくり

           三井不動産は、4月26日に東北大学の「サイエンスパーク構想」の具体化に向けた協業を発表しました。現在、宮城県仙台市の東北大学青葉山新キャンパスの約4万㎡の敷地では、「サイエンスパーク」の整備が進行中。その第1弾として、4月1日に「国際放射光イノベーション・スマート研究棟」と、産学連携拠点「青葉山ユニバース」の運用を開始しています。  東北大学が強みとする「半導体・量子」「グリーン・宇宙」「ライフサイエンス」「材料科学」をはじめとする学術領域ごとのコミュニティを拡大しつつ、

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          大学×不動産会社×教育・学び=まちづくりの新たな形

           数年前から不動産会社が大学との連携を強化していることは、ご存じでしょうか。2024年4月22日に、三菱地所と東京学芸大学、一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(エコッツェリア協会)は、「新しい時代の学びの場づくりに関する包括協定」を、東京・大手町にある3×3Lab Futureにおいて締結しました。  今回の協定の内容は、(1)教育・学びを核にしたまちづくりに関すること、(2)新たな学び空間・学び舎に関すること、(3)地域特性を生かした共創コミュニティに関するこ

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          アラ還の新たな挑戦

           初めまして。桑島良紀と申します。今日からnoteを始めてみようと思い、初投稿をいたしました。まずは簡単な自己紹介と今後、どのような投稿をしていくかを簡単に触れていきたいと思います。  さて、自己紹介です。投稿をした段階での年齢は57歳になったばかりです。プロフィールにも書いてありますが、2024年4月から大学院の博士課程に進みました。空き家・空き地関係の研究をしています。ストレートで終えても還暦での学位取得であり、〝アラ還〟になってからの新たな挑戦です。  なぜ、空き家