CoCシナリオ「奇妙な京都」

シナリオタイトル|奇妙な京都

作成者|ミルチ

〈備考〉

・クトゥルフ神話TRPG準拠シナリオ。現代日本が舞台。タイトルの「奇妙な京都」には、「奇妙な共闘」「奇妙な教徒」などの意味をダブらせています。

・情報共有や移動にも必ず時間経過させる(分量や移動量に合わせて30分から1、2時間程度ずつ)。京都の地理感がわからなければ、毎回ダイスで30分、1時間、2時間と経過時間を決めるのがよいかと思います。

・情報共有はロールプレイで行なうことを推奨する。ロールプレイで行なうことに決まった場合、KPもやる彦としてガンガン参加しよう。また、情報共有の場所として、《鳴島珈琲店》をKPは激推しすること!(うさんくさいくらいに!!)

・探索3日目の夕方を迎えた時点で、「日本神王会」の名前を知ってすらなければ強制終了(仕事が始まるなどして、日常に返させる)。NPC死亡という意味でのデッドエンドではないが、探索可能日が3日間であることを伝えておこう。

・探索は基本的には毎回17~19時頃に終了させる(ネットや手に入れたものを読む、情報共有などは可)。睡眠は8時間程度とらせ、従わなければすべてのロールにペナルティ(-20)を加える。

・【歴史】技能が頻出する。探索者は【歴史】に割り振らなくとも、キャラ設定として歴史に興味を持っていることが望ましい。推奨技能は、探索・交渉系技能一般が必須。警察探索者を作ることを推奨する。地元探索者でも構わないし、旅行者でもよい。戦闘があることも伝えよう。

・また、《》で表記したのは場所を意味し、【】は技能値のロール表示に用いた。なお、本文では、【言いくるめ】【説得】【信用】をまとめて、【話し上手】ロールと称する。

・シナリオ改変は歓迎です。リプレイ化、動画化等もぜひ。公開する場合は、このページへのリンクと作者名の明記をお願いします。また、公開した旨を、ツイッター(@mircea_morning)のリプライや、noteのコメント欄などで教えてくださるととても嬉しいです。飛んで見に行きます。

・プレイ時間は、3-4時間程度。(意外とかからないのです)

〈物語の背景〉KP向けの情報

京都府立博物館に新館ができた。探索者たちはその展示を見に行くことになる。内容は、特別展示「菅原道真と京都――菅原道真の新しい姿」と常設展示「京都の歴史―古代から現代まで」。

1年半ほど前に、ある絵巻が発見された。どの書物にも言及がなかったため、存在すら知られていなかった。今回の展示は、その絵巻の一般公開と、研究成果の披露を兼ねている。

絵巻に発見についての経緯は以下の通り。

中京区の桑原にある、菅原和子(菅原道真の子孫)の家に、布袋ニルヤは研究者として突然現れた。ニルヤは、日本中世史の研究者で、和子の話を聞きに来たのだ。テレビの取材などで慣れていた和子はニルヤとしばらく話していた。ニルヤは聞き手にまわり、和子の世間話を聞いているだけだったにもかかわらず、ある時、ふと思い立ったように立ち上がり、庭を掘ることを許可してほしいと頼んできた。

少しの謝礼と、庭を元に戻すという条件で和子は許可する。ニルヤは、いくつかの場所であたりをつけ、(最初からそこにあるとわかっていたかのように)数時間の内に、絵巻の入っている木箱を見つけた。ずっと住んでいたし、家をまるごと建て替えたこともあったのに……と疑問を抱きつつも、「そういうこともあるか」と気にも留めなくなった。

この奇妙な「新発見」の裏にあるのは、ニルヤが渡英した際に出会った浅黒いドッペルゲンガーの存在だった。ドッペルニルヤは、占い師として彼に出会う。自分と似た顔をしているドッペルの存在に興が乗った布袋ニルヤは、占いを受けてみることにする。ドッペルニルヤは、あまりに具体的な予言を布袋ニルヤに託した。その予言は、菅原和子邸のかくかくしかじかの場所を掘り起こせ、というものだった。そして、布袋ニルヤは、絵巻の入った木箱を見つけたのである。

ニャルラトホテプ扮するドッペルニルヤは、学芸員・歴史学者だった布袋ニルヤに興味を持ち、ほんの気まぐれに彼と同じ顔つきで出会ってみせたのだ。彼と話す中で、布袋ニルヤという人間に関心を深めたニャルラトホテプは、菅原和子邸の庭の地中に絵巻物入りの木箱を作り出した。炭素年代測定法などを用いて調べても、ちゃんと昔に作られたものだと表示される代物を。もはや歴史を作り替えるに等しい「研究」をなすように、布袋ニルヤを誘導していった。それだけでは混沌が十分に生まれないと思ったのか、ニャルラトホテプは絵巻と一緒にThe King in Yellowを埋め込んだ。今回の事件は、二つの書物の奇妙な同居に起因している。

(いわゆるカルトに当たる)日本神王会は、代理の献金団体などを通じて日本国内の歴史学研究への研究支援をしている。献金に対する返礼として、研究報告を受ける中で、The King in Yellowと思われる書物の存在を布袋ニルヤが発見したと彼らは知ることになる。ハスター系教団である日本神王会は、布袋の存在を危険視し、それを奪うと共に、布袋を暗殺した。

〈登場勢力〉

1,日本神王会というハスター教団(カルト集団)――いわゆる「敵」となる

2,基本的には探索者の補助をするクトゥルフ信者である魚津やる彦(率いる少数。厳密には教団ではなく、やる彦のヴィジョンに個人的に感化された友人。高海やる正、水橋やる美)――探索者らと奇妙な共闘関係にある

3,ニャルラトホテプに影響された布袋ニルヤなる学芸員で歴史学者。シナリオには直接登場しない。

4,探索者

5,その他NPC

〈導入〉

夏の湿気っぽい日(実際は夏でなくてもよいが、暑苦しさと時間制限の焦りがリンクするし、京都らしさが出ると思う)、探索者たちは京都観光にやってきた(関西圏でも構わないし、京都在住でも問題はない)。歴史に興味のあった探索者たちは、新館ができて盛況だという府立博物館を訪れることにした。

・展示について

ネットで調べるなどすれば、ロールするまでもなく、新館では、特別展示「菅原道真絵巻――天神の新しい姿」と常設展示「京都の歴史―古代から現代まで」という展示をしていることはわかる。

より詳しく調べるなら、【図書館】などを振ると、特別展示は『菅原道真絵巻』が最近発見されたのを契機に、企画されたものだとわかる。さらに、ロールに成功した探索者は、【歴史】が50%以上ないし【知識】が70%以上の場合、それでロールすることができる。成功すれば、現代にもなって今更新しい絵巻が見つかることは非常に珍しいことだとわかる。

・絵巻について

その発見について、ネットで記事などを探すと、地方新聞のネット記事で、府立博物館の学芸員・布袋さんが菅原に縁ある土地で発見したとある。クリティカルが出た場合、絵巻と一緒に写っている布袋ニルヤの写真もある。かなりの美男子で、笑みに比べて目が嫌に表情がない。深淵を覗いているような感覚になりSANチェック→0/1)

以上は、扱いとしては府立博物館を訪れる前にやっているものとする。

《府立博物館》

事前調査や、それなりの準備が済んだら、《府立博物館》を訪れさせる。博物館の外観について描写したい場合は、京都国立博物館の画像を検索しよう。

特別展示と常設展示はセットのチケットしかない。両方合わせて、さっと見れば1時間半ほど、じっくり見るなら3時間かかる。(さっと見た場合マイナス補正15%程度)

・常設展示「京都の歴史――古代から現代まで」

京都に関係するものを、古代から現代まで展示している。京都で出土した中期縄文土器や、中世なら『紫式部日記』の現物など様々な文物が展示されている。(キャンペーン用のフック。この内容は今回のシナリオには関係ないとメタメッセージでPLに伝える。)

・特別展示「菅原道真絵巻――天神の新しい姿」

名前が知れ渡っているせいか、はたまた新館ができた目新しさからか、かなり展示は盛況。絵巻の発見は一年半ほど前で、研究・修復などの過程を経て展示された旨が書いてある。イコノロジー(図像学)からして、確かに「これは道真である」とわかるような持ち物や、周囲の人間が描き込まれているといった解説もある。(以上は、基本情報)

【目星】に成功すれば、菅原道真の衣服がなぜか黄色を基調にしていることに気がついた。さらにどれも顔がはっきりとは見えにくい描き方がされている。【目星】が成功した場合、さらに【アイデア】に成功すると、黄色い服を着ているのは怨霊化・雷神化している菅原道真だとわかる。

【歴史】に成功すれば、当時の冠位・階級と色彩の関係からして、道真に黄色はふさわしくないように感じ、驚くだろう。

じっくり見た場合は、別の人に【聞き耳】ないし【目星】を振らせ、成功した場合、帽子を目深に被り、マスクをしたかなり大柄な男性が熱心に問題の絵巻を見つめていることに気づく。見ている時間はかなり長く(15分くらいか)、導線(人の流れ)を少し邪魔するほどに、食い入るように見つめていた。探索者が声をかけようとすれば、我に返ったように場所を譲り、会釈してその場を立ち去る(追うことはできない。人混みで見失ったとでも言えばよいだろう)。

・学芸員、片桐ヒロヤ

不審者を見失ってキョロキョロしている探索者たちに、片桐ヒロヤが「何かお困りですか」と声をかけてくる。不審者について何か言うと、無線か何かで警備員室に連絡を入れるだろう。

展示や疑問について、博物館の学芸員(片桐ヒロヤ)に聞けば答えてくれる。学芸員の存在が思い浮かばないようならば、片桐を通じてパンフレットに興味を示させ、質問の代わりにパンフレットで情報を与えるのもよい。パンフレットには、以下で片桐が答えるような、展示や絵巻についての情報が書いている(読むのに1時間程度かかる)。

絵巻について/発見時期は二年前。発見者は布袋ニルヤ。ロールプレイなどで聞いても、発見場所については答えてくれない。

布袋ニルヤについて/特別展示の責任者。新進気鋭のキュレーターで、歴史学の研究者としても優秀。意気溌剌として旺盛に研究調査に取り組んでおり、今回の新しい菅原道真像を提出するなどしている。30代後半の男性。

ロールプレイがうまかった場合や、【話し上手】ロールに成功すれば、以下の情報も伝える。「落ち着きがあって素敵なんですよー。背も高くて、イケメンだし、がつがつしてないのに仕事には熱心で……ほんとかっこいいんです」と、片桐ヒロヤは布袋に執心なようだ。

布袋との接触について/居場所はわからない。上司である坂原ヨハンナからは休みだと聞いている。探索者が上司に会おうとするなら、忙しくて上司はいないと言ってもよい。二週間くらい前から休みをとっている。「ここ数年ほど、休みもないくらい働いていらっしゃったから、疲れたんでしょうねぇ」とでも。探索者が警察関係者であれば、「様子を見てこよう」とでも言って、住所を聞くこともできる。

※他の学芸員も、坂原ヨハンナ、片桐ヒロヤ、馬場トリーなど、漢字とカタカナの合わせわざであるのが普通の仕事場で、ニルヤの国籍をあまり気にする人はいない。

・《府立博物館》の出口付近

《府立博物館》を出るところで、巨漢に声をかけられる。マスクをして、帽子をかぶっている、うさんくさい男性だった。「こんにちは。さっき特別展示、見ていた方ですよね? 僕は、魚津やる彦といいます。あんまり熱心に見ていたようですから気になって。ちょっと展示の感想でも話しませんか」と。

《府立博物館》そばの《鳴島珈琲店》で話す。理由を問われたら、巨漢(やる彦)が務めていてクーポンがあるからだとでも言おう。(強制)

《鳴島珈琲店》

関西資本の地元密着型珈琲店(上島珈琲店みたいなイメージ)。探索者らに情報共有のための拠点がないようなら、KPは適宜《鳴島珈琲店》の支店に案内しよう。ちなみに《府立博物館》そばの《鳴島珈琲店》が本店。店員が登場するときは、進藤鳴(なる)、鳴田(なるた)敬、桐島雷鳴(らいめい)、鳴滝田(なるたきた)都など「鳴」の字の入った名前を用いる。

鳴島珈琲店の特徴は「また来たくなる味」。気が付けば、KP演じるNPCは「もっと飲みたい」とつぶやいているかもしれない。

さきほどの男性としばらく展示物について話し合ったあと、絵巻や展示の責任者である布袋ニルヤに話題が移ったとき、やる彦は前のめりになって話しだす。

「その布袋ニルヤって人、どうやら一週間前から失踪しているらしいんです。偉く研究熱心な人って話で、どこか図書館にでも引きこもっているんじゃないかとも思うんですけど。――まぁ、でも、変な話ですよね」

「それほど親しいわけではなかったんですけど、彼の知人で、心配なんですよ」

【心理学】に成功すれば、嘘をついているわけではないが、隠していることがあるとわかる。

※会話で使われる語彙が微妙に支離滅裂なのは「あえて」やっています。役には立つんだが、微妙に信頼できない位置を目指して、積極的にPCと会話してください。

※「マスクや帽子を外して話すのが礼儀だろう」的に探索者に迫られたら、気まずそうに外して素顔を見せる。その際APP(APP5)を伝えればよい。気まずそうに、しかし、どこか怒りを秘めた静かな表情で、「見た目をとやかく言われるのが嫌いなんです。目を逸らされるのも。この顔を見ただけで対応が変わる。ひどいもんです。こっちは生まれつきなのに。」とつぶやく。

探偵か警察の探索者がいれば、やる彦はニルヤ捜索の依頼(お願い)をしてくる。/依頼が難しそうな場合、「一緒に観光しないか。よかったら、ぶらぶら京都をまわりながら、彼に関する情報もついでに探してほしい」という旨のことを言ってくる。

メタでKPがプレイヤーに、彼は行動先を積極的に決めたりしないこと、探索者の行動先についていき、探索には積極的に協力すること、日中は行動を共にし、夜には友人のところに行かなければいけない(約束があるから、とでも言う)としていなくなり、朝にはまた合流することを伝える。

魚津やる彦のステータス(PLには非公開)

STR15、DEX14、INT13、CON10、APP5、POW10、SIZ17、EDU14、SAN38、アイデア80、幸運50、知識70、クトゥルフ神話技能20、耐久値14、MP10、DB:1D4

【技能値一覧】:「戦闘系」キック75、マーシャルアーツ55、組付き50、拳銃50、回避55/「探索系」聞き耳55、図書館50、忍び歩き60、隠す40、隠れる70、水泳80/「知識系」歴史60、考古学60、オカルト70、鍵開け30

※探索者に火力がなさそうな場合に限り、拳銃を所持していることにしよう(隠してあるので、探索者は気づかない)

《大学》/《府立図書館》/《北野天満宮》

以上の場所では、菅原道真について調べることができる。三つの内、いずれの場所で調べるにせよ、現地で四時間かかることとする。

以下の二項目については、ネットでも調べられる。また、二項目については、探索者が「こういうことを知りたい」と調査範囲の焦点を絞ることができれば、技能ロールなしで知ることができる。

・菅原道真(生前)について

菅原家は学問に秀でた家柄として有名。ずば抜けた学才を持ち、宇多天皇の信任を得て右大臣にまで上り詰めた。左大臣の藤原時平が、醍醐天皇に謀叛の疑いがあると讒言を流し、菅原道真は大宰府に左遷されることとなった。その際に官位は右大臣から、太宰権帥になった。新しい発見だからか、黄色の衣服に関する記述はない。

※指定なく単に「道真について知りたい」というだけであれば、こちらのことしか知ることができない。以上の情報を伝えたあとで、更に調べたい場合は情報の焦点を絞ってもらう必要があると伝え、それでも難しそうな場合、【アイデア】を振らせ、雷神・怨霊について聞くことを思いついたと処理する。

・死後の菅原道真について(雷神)

清涼殿落雷事件というのがあった。延長8年、宮中の清涼殿に突如落雷があり、大納言以下数名が死亡する。醍醐天皇はこの事件を期に体調を崩し、そのまま崩御した。道真の怨霊が落雷させたのでは、と噂がたった。

道真の領地である桑原には落雷が不思議と起こらなかったことから、雷除けのまじないとして「クワバラ、クワバラ」とつぶやくのが流行した。

・《西都大学》

大学に話を聞きに行くのであれば、【アイデア】と【幸運】の組み合わせロールに成功すれば、教授に心当たりがあり、タイミングよくその教授が大学にいて、会うことができる。歴史学の教授の名前は松原通一(みちかず)を訪ねることにする。坂本太郎『菅原道真』(実在の本)などを見せつつ説明する。

二項目について聞き出した上で、【話し上手】ロールに成功すれば、「現在も菅原家の末裔が桑原に住んでいるらしい」と教えてくれるが、それ以上を彼は知らない。その代わり以下の情報を持っている。

絵巻について聞かれると、「正直扱いあぐねている。菅原道真の表象として、どう位置づけるべきかわからない」と述べる。黄色について詳しく聞くならば、【話し上手】ロールが必要(研究者として確度が低いことを話したがらない)。「当時、神王会という不思議な信仰があり、それと関連している可能性がある。詳しいことはわからないが、災害の類を人格神化したもので、信仰形態に一神教的な要素があったらしい、ということまではわかっている。儀礼などについては記録が残っていないけれども、醍醐天皇に記録も残らないほど掃討されたからだという話もある。真偽はよくわからないが」。

・《府立図書館》

レファレンスを利用する場合は松原道久(みちひさ)という司書が応対する。図書館でレファレンスを利用する場合、図書館ロールなしで調べることができるが、調べたい事柄をうまく伝えられるか【日本語】ロール(+15)で振らなければならない。レファレンスを利用する場合は、情報の焦点を絞る必要はない(二項目合わせて4時間で調べられることとする)。日本政治史が専門の平田耿二(こうじ)の新書『消された政治家・菅原道真』(文春新書)を見つける。発見と読了まで合わせて、4時間というカウントである。

二項目の情報を手に入れた上で【目星】に成功すれば、「現在も菅原家の末裔が桑原に住んでいる」という記述のほか、本のあとがきに「読者から感想があると嬉しい」という一節があり、ツイッターアカウントが記載されている(連絡をとることができる)。翌日に著者とのアポがとれる。著者の平田は中京区の桑原町に住んでいる。うちの近所で昼食をとりながら話そうと言われる。その会食の際に絵巻について聞かれると、「正直扱いあぐねている。菅原道真の表象として、どう位置づけるべきかわからない」と述べる。彼自身は特筆すべき情報を持たないが、菅原和子と旧知であり、彼女の家に案内してくれる。

・《北野天満宮》

地元大学で学んでいるアルバイト・松原道政(みちまさ)が応対する。【幸運】か【目星】に成功すれば、「何かお困りですか」と彼が声をかけてくる。下っ端の若者である道政は境内をじっくり案内しながら道真について教えてくれるだろう。

「ここ、北野天満宮は、菅原道真公をおまつりした神社の宗祀――総本社で、親しみを込めて『北野の天神さま』とも呼ばれています。平安時代中頃の天暦元年――西暦にすると947年に、京都に住んでいた多治比文子(たじひあやこ)という有名な巫女や近江国・比良宮の神主・神良種(みわのよしたね)、北野朝日寺の僧・最珍らが、当所に神殿を建て、菅公をおまつりしたのが始まりとされます」などという発言をすればそれっぽいかもしれない。

両方の項目を知ることができた探索者は、「現在も桑原に道真公の血筋の方が住んだはるって話ですね」と聞ける。「名前は……確か、菅原和子さんやったかなぁ」

・各所調査後の誘導

《西都大学》/《府立図書館》/《北野天満宮》で調査を終える度に、情報共有のために《鳴島珈琲店》に行かないかと魚津やる彦が声をかけてくる。情報共有の経過時間は1時間程度。なお、情報共有はロールプレイで行うのが望ましい。

こうした情報共有の際に、《府立図書館》で入手した情報をフラグとして、やる彦から以下のような話を振る。絵巻において、雷神・菅原道真の被害は落雷だけでなく、風雨の影響もすさまじく、風で家の一部が飛ばされていたことを思い出した、それが興味深かったと魚津やる彦は探索者に告げる。

これを聞いた探索者は、【知識】の半分・【オカルト】・【歴史学】・【人類学】のどれかでロール(リアル知識でもよい)。成功すれば、風神と雷神は、それぞれ、風と雷を人格神化したものである――とすると、絵巻において、道真は雷と同時に風を表象するものだったのではないかと思い至る。

《布袋ニルヤの自宅》

自宅の住所については、やる彦が知っている。

地元の警察探索者がいるなら、【信用】(+20)で、大家の立ち会いのもと開けることができる。【鍵開け】にしろ、立ち会いにしろ、ドアを開けるのに、30分はかかるだろう(【鍵開け】は1回30分)。いずれの方法も取れない場合は、新しいアパートではないこと、破壊することも可能ではあることをPLに伝えてよい。

ドアの破壊は、戦闘扱いとする。ドアの耐久値16として処理。2ターンごとに【幸運】を振って、誰か一人でも失敗すれば、人が近くに現れる。さらに現れた人の【聞き耳】(成功値30)が成功すれば、探索者たちに近づいてきて、警察を呼ぶなどしようとする(この処置はドア破壊の最中のみ)。

家はワンルーム。扉を開けた瞬間、コーヒーの香りが広がる。入り口はまずキッチンがある。細長い構造で、入口から部屋の奥は見えない。ヘビードリンカーなのか、ゴミ箱にはコーヒー滓ばかりあり、冷蔵庫横にはいくつものコーヒー豆が瓶に入れられている。ぱっと目を引くコーヒー趣味から意識がそれた瞬間、探索者たちは奥に人影を見つける。ベッドには、いくつかの本や書類が散らばっており、その中に布団をかぶった男性がいる。【目星】か【アイデア】成功で、胸が上下していないことがわかる。胸や首筋にはかきむしったような跡があり、顔は奇妙に引きつり、苦悶に歪んでいる。あまりに恐ろしい表情、痛ましいほどの掻きむしり、その死に様を前にした探索者たちはSANチェック1/1d5(入室している限り全員必要)。夏の蒸し暑い時期なので、入り口のコーヒーに占拠された場所はまだしも、奥は少しすえた臭いがする。

改めて部屋の描写をしよう。ここはワンルームで、ユニットバスと台所がある。所狭しと本が置かれている。(普段から似たような雑然とした部屋に住んでいるだとか、ロールプレイや工夫を要求し、特に何もなければ――乱雑な部屋を調査することになるので、探索技能に補正‐10)。

・死体

【医学】に成功すれば、彼の死亡は10日から2週間程度前ではないかとわかる(死因については窺い知れない)。遺体の(身に付けている)持ち物を調べると宣言があった場合、以下の情報を伝える。財布はとられていない。手帳には破ったあとがある。破り残したのか、「廃墟」「黄衣」「神王」という断片的なメモが見つかった。なお、やる彦に聞けば、間違いなく布袋ニルヤ本人だとわかる。

・本棚

天井まである本棚だけでなく、床にも本や書類があふれている。考古学や日本の歴史に関する本、とりわけ専門書が多い。【図書館】や【目星】の成功で、ノートを見つける。どうやら手書きで研究についてのメモを残していたらしい。ごくごく私的なメモなので、断片的な言葉を連ねた本人にしかわからないようなものが多く、探索者たちには全体的な意味や、研究の詳細については、読み取ることができない。読むこと自体に2時間かかる。

【日本語】と【アイデア】の組み合わせロールに成功すれば、「日本神王会」という聞き慣れない名前が気になった。宗教関係者や警察関係者、文系の学者や社会面系のジャーナリストがいれば自動成功、いなければ【知識】でロール。成功すれば、そういった名前の宗教法人は聞いたことがないと気づいてよい。なお、ネットでその名前を検索しても情報はない。

・台所

【目星】成功で、冷蔵庫にはいくつかの領収書の他に、アルファベットと数字の組み合わさった文字がいくつか書かれている。→パソコンのパスワードがその中にある。

・机

所狭しとメモや書類。ノートパソコンもある。【目星】成功で、菅原和子という名前、中京区桑原町◯◯と書かれた住所のメモ(和子邸はこっちからもたどり着けます)。ノートパソコンはロックしてある。【コンピュータ】の半分に成功するか、パスワードで開く。テキストデータで日記が書いてあるのが見つかる(日記は毎日書いているわけではない。最後は3週間前)。日記の読み方は、じっくり読む(4時間)とざっと読む(30分)の二通り。じっくり読む場合は技能ロールなしに以下の要点がわかる。ざっと読む場合、【目星】を三度振ってもらい成功した数だけ1d6を振り、該当箇所が目に留まる。

①五年ほど前、他の研究者とともに調査・研修のため渡英した。数週間に渡り、文献を渉猟し、現地の日本学の権威と議論を交わした。

②数週間の滞在であるため、現地のダウンタウンにも詳しくなり、行きつけのパブもできた。

③そのパブで常連と飲んでいたとき、浅黒い肌の東洋人が声をかけてきた。

④よく見ると自分にそっくりだった。自分と似ている人は世界に三人いるというが、こんなところでは出くわすとは思わなかった。彼は占い師だった。

⑤偶然に驚きつつも、話をするうち意気投合し、それから2人で双子のふりをしながら飲みに出かけることが増えた。

⑥ちょうど研究手法に悩んでいたときだったので、それを彼に告げると、彼流の占いでこう述べた。「菅原道真の住んでいたところに中庭があるのですが、入り口から向かって右下から数えて、西に5歩、北に10歩の位置、スコップで五分ほど掘り進めれば、驚くべき発見が得られるでしょう」と述べる。

※日本神王会について知った場合、やる彦はその日の別れ際に、「僕の方でも調べてみるよ」と述べる。

《桑原町の菅原さん家》

住所を知った上で訪ねなければならず、しらみつぶしに家を見ていくというのは不可。住所を知った上で、【幸運】に誰か1人成功すれば、菅原和子は在宅している。

大学教授や警察などの社会的信用の高い職業ならばロールなしで、そうでなければ【信用】ないし【説得】に成功すれば話を聞くことができる。

菅原和子との話

・布袋ニルヤとの関係を聞けば、三年ほど前から時々訪ねてきては菅原道真や菅原家について色々聞いてきたと教えてくれる。

・布袋ニルヤの印象は、見た目もかっこいいのに仕事に真面目で、人当たりもよく、どこか人懐っこい感じがする好青年で、いつもよく笑わせてくれたと言う。

・ニルヤの写真(同僚からもらってもよいし、死体の顔を撮ってもよい)を見せれば、本人だと言う。

・絵巻について聞けば、ここで1年半ほど前に発見されたものだと教えてくれる。

・絵巻について詳しく聞こうとするか、布袋ニルヤについて更に聞こうとすれば、【話し上手】ロール。成功すれば、絵巻発見時のことを教えてくれる。

「不思議な話なんだけどね。うちの中庭をぐるぐるまわったと思ったら、しばらく腕組みして、普段見たこともないような不敵な笑みを見せてんだよ。それから、私はちょっと台所で作業してたんだけど、ニルヤくんが声かけてきたんだよ。『調査のために庭を掘りたいから、スコップを貸してくれないか』って。別に何もないと思うけど……と言いながら貸したら、数メートル掘ったところで木箱を見つけて、そこに絵巻が入ってたんだ。他のどこも掘っていないし、最初からそこにあるってわかっていたみたいだった。こういうことってあるんだなぁってびっくりしたもんだよ」

もし上記すべての情報を聞くことができれば、そのとき布袋ニルヤが見つけたのが、絵巻とアルファベットが表紙に書かれた気味の悪い小さい書物(KP向けに言えば、『黄衣の王』である)だったことを菅原和子は思い出し、帰り際の探索者たちに伝えてくれる。

探索者たちは【アイデア】に成功すれば、特別展示に(探索済みの場合は布袋ニルヤの自宅も)絵巻はあったが、書物が展示されていなかったことに気づく。警察探索者が既に警察署に訪れるなどして、事件についての情報を警察から得ている場合、そのような書物をカバンに持っていたという情報もなかったことに気づいてよい。

―――探索二日目朝のイベント

探索者たちが布袋ニルヤ宅に行っていなくても、あるいは、行った上で死体について通報していなくても、探索二日目、男性の変死体が見つかったとの報道がある。朝テレビをつけたなどということにして、探索者にはその報道の存在を伝えてよい。

探索者らが二日目朝の時点でニルヤ宅を訪ねていなかった場合、やる彦は執拗に「これはきっと事件と関係がある」と言い張る。詳しく聞こうとすると、「ある報道では、府立博物館の印象の入ったバッチを身につけていたと言っていたからだ」とよくわからないことを言う。

※これは探索2日目の固定イベント

《府立博物館》:探索二日目以降

学芸員(の上司)に聞きに行くこともできる。ジャーナリストや作家ならロールなしで、そうでない場合は運良くその時間に応対してもらえるか【幸運】判定。上司なら坂原ヨハンナ、同僚なら片桐ヒロヤ。

・布袋ニルヤの変死事件について

詳細は知らないが話は聞いていると述べる。特別展示の責任者であり、府立博物館を引っ張っていく学芸員だったこともあり、布袋ニルヤの死を残念に思いながらも、今はそれ以上に、残りの展示期間を彼の知識抜きでやっていくことに対する不安に思う気持ちも強いと正直に教えてくれる。

【心理学】ロールに成功すれば、彼が気になっていることがあるとわかる。【話し上手】ロールに成功すれば、彼が失踪した時点(二週間前)で捜索願を出しており、そのとき警察とともに自宅を訊ねたとき、死体はなかったということを教えてくれる。

・布袋ニルヤの失踪について

捜索願は出していたが、特別展示のさなかということもあり他の学芸員に混乱を与えるのを防ぐために隠していたのだという。【心理学】成功でも嘘はついていないとわかる。悲しげな顔をしたまま仕事に戻った。

《夕方――宿泊先への帰り道》:探索二日目固定イベント

夕方宿泊施設に戻る途中のことだ。大通りを二回ほど折れ、ホテルに戻る寸前、雨が降っているわけでもないのに、雨合羽を着ている集団に突然襲撃される。「お前、魚津やる彦の仲間だな」と声をかけ、攻撃を仕掛けてくる。

【幸運】に成功すれば、成功者に先制攻撃は当たらない。襲撃者の能力値は二種類用意しておく。出現数は1d3+1。探索者の戦闘力に合わせて、下記から適当なタイプを選ぶとよい。襲撃者たちは、どうせ数ターンで退却するので全力に殺しにかかりましょう。また、退却ターン数(1d3+1)は非公開です。退却前に増援が5人ほど現れて、怪我した仲間(や死んだ仲間)はかならず回収する。

〈襲撃者A〉

STR7、DEX9、CON13、INT9、APP11、POW10、SIZ15、EDU17、SAN26、耐久値14、キック50(1d6)、斧25(1d6+3)、こぶし70(1d3)

〈襲撃者B〉

STR11、DEX14、CON13、INT10、APP12、POW11、SIZ7、SAN33、耐久値10、MP11、支配の魔法40(コストはMP1、SAN1)、こぶしα70(1d3)、こぶしβ40(1d3+1)

支配の魔法は、10m以内にいる対象を1ラウンドの間(1回につき1人)コントロール下に置く。つまりPLは探索者の行動権を奪われ、魔法行使者が自由に動かせる。コントロール下に置かれるのは、ロールに成功した上でCON対抗ロールに成功した場合である。

・タイプA、B共に、厚手の雨合羽を着ているため、装甲+1(冬の場合コートも着ているだろうから計+2)。

・基本的には、敵対者である魚津やる彦と関係していることから来る警戒心で襲撃を行っており、「警告」の意味が強いので、1d3+1ラウンド程度(KPの裁量)の戦闘が終わったら退却すればよい。

・「魚津とこれ以上関わるな」「それ以上調べるな」「京都を去れ」などという台詞とともに全員が去っていく。死んだ襲撃者が入れば、大きなゴミ袋でも扱うかのように背負っていくことを伝える。

・探索者が襲撃者を殺した場合、SANチェック(1/1d6)。襲撃終了後、この世ならざる雰囲気の存在に、唐突に襲われた衝撃からSANチェック(0/1d3)。魔術を食らった場合、後者のSANチェックは1d2/1d5に変更する。

――探索三日目朝イベント

朝やる彦と合流すると、以下の会話が始まる

・日本神王会について教えてくれる。彼は彼で調べていたらしい。「日本神王会は、京都で潜伏活動しているカルト組織。その歴史は非常に長い。打ち捨てられた地下水道や暗渠、廃墟など、あちこち拠点を変えつつ渡り歩いている。ずっと追っていたがなかなか所在を掴むことができなかった。僕の仲間に聞いたところ、幸いな事に、二週間ほど前に彼らの廃墟を突き止めていたことがわかった」。拠点である《打ち捨てられた廃墟》の住所も教えてくれる。

・昨日の襲撃について問い詰めると、やる彦は謝罪する。「迷惑をかけてすまない」と。高海やる正、水橋やる美と仲間になって活動している。文化的・歴史的に重要な場所である京都は様々な魔術的陰謀が渦巻く土地であり、それに抗うために僕たちは活動するのだと述べる。(※高海やる正はシナリオ「夜は短し飲んでは歩け」に登場する)

・「行き詰っていたとき、ふと僕は新しく出来たという府立博物館の新館を訪れました。そこで、菅原道真の見たこともない姿に衝撃を受けたのです。彼の名状しがたい表情も、彼が怨霊として都に与えた被害も、それから逃げ惑う人々も――あの名状しがたきもの、風を司る神格を表しているに違いないと私は直観したのです」。それ以上詳しく、神格について聞こうとしても、「知らないに、こしたことはないのです」と教えてくれない。

・「私は、歴史に興味があり、一定の歴史的知識を持っていそうなあなた方に目をつけました。利用した、と言ってもいいでしょう。騙すつもりはありませんでしたが、それについては詫びします。申し訳ありません」やる彦は頭を下げる。「しかし、皆さんと一緒に行動するうちに、利用するなどと考えもいつの間にか後景に退き、ただ調査をすることが楽しくなっていたのです。もちろん私たちには私たちの目的がありますが、同時に、一緒に京都をあちこち一緒に調べまわったこと――その時間をかけがえのないものと感じたのです。それは嘘ではありません。本当です」。

・自分たちの調査の結果、もし最も悪い推測が当たっていれば、カルト集団の儀式は今日、明日にでも完成する可能性がある。それが完成すれば、冒涜的な神格が日本の文化的・歴史的中心――この京都に顕現してしまいかねない。それは破壊的な影響をおよぼすでしょう。(これは方便。これは探索者たちへの協力してもらうことを目的として言った未確認情報である)

・このような話をしたあと、今日の夕方、日本神王会――カルト集団の拠点を襲撃するつもりだと述べる。これが成功しても、儀式を止めることができるかはわからない。もし私たちを手伝ってくれるのであれば、17時に云々の場所に来てほしいと伝えられる。

・やる彦たちは彼らのように特定の教団には所属しているわけではない。やる彦自身について、聞かれるとその旨を答えてくれる。「もし僕たちともカルト集団とも関わりたくないというのであれば、今すぐ京都を去ってください。そしてしばらくは、ここを訪れるのをやめてください」。そう言って立ち去る。

※KPはメタメッセージとして、これに従ってもいいし、従わなくともよいと伝える。警察探索者などが、事前にカルト集団の住所をメモした手帳の情報を手に入れていたならば、共闘せずに探索者たちで襲撃してもよい。

※以上のイベントは、「日本神王会」の名前を、探索三日目を迎える以前に探索者たちが知っていた場合に発生する。知らなかった場合は、襲撃者が「魚津」と言っていたと述べても、「同姓同名か人違いでは?」ととぼけてやる彦ははぐらかす。

※探索三日目夕方までに「日本神王会」の情報を手に入れた場合、どこかでやる彦に《鳴島珈琲店》に誘わせ、以上の情報を伝えよう。

《打ち捨てられた廃墟》

山の曖昧な住所しか書かれていないので、ここにたどり着くのに街から4時間くらいはかかる。(街へ折り返す場合、復路は半分の時間でよい)。【運転】成功でそれぞれ半分になる。

気になる部屋は二つ。他は崩れているか、気になるところもない。今まで情報を得られていない場合、ここで新たに部屋を作るなどして与えるのもよい(捨てられた新聞・週刊誌・本を置くとか)。廃墟なので灯りはない。現在時間次第に能力値に補正をかけるとよい。ファンブルは廃墟なので、破片などでいくらでもダメージを与えられる。

・大きな部屋

ゴミと見覚えのある雨合羽がある。【アイデア】に成功すれば、そのゴミの様子からして、最近まで生活していたのだとわかる。【目星】に成功すれば、ゴミの中に「The King in Yellowを見つけ出せ」という指令書が見つかった(書籍名を伝えることが目的の情報)。

・小さな部屋

一見なにもない。朽ちている棚があるくらい。棚にも特に気になるものはない。【目星】に成功すれば、棚の下に最近動かしたような跡がある。動かせば地下へと続く上下に開く扉を発見する。はしごで降りることになる。

・地下

本棚がある。林屋辰三郎『京都』(岩波新書)など京都の歴史に関する本が非常に多い。【目星】に成功すれば、奇妙な図形の描かれたメモが気になる。メモを手に入れた探索者は【アイデア】で、肉眼では非常に見えにくいが、ごくごく小さく書かれた文字なのではないかと思い当たる。虫眼鏡や写真を撮った上で拡大するなどのロールプレイ的な補正がない限り、【日本語】の半分と【目星】の両方に成功しなければ読めない(時間を置けば再チャレンジできる)。メモには、この山の近くの別の山の住所が書いてある。

【幸運】の3分の1に成功すれば、地下の本棚から、「支配の魔法」が載った魔導書を手に入れる。読むのに三時間かかる。効果は雨合羽の襲撃者の項を参照せよ。

《カルト集団本拠地》

《打ち捨てられた廃墟》から来る場合は2時間程度、街から来る場合は3時間かかる。(今回も曖昧な住所しか書かれていないため)。探索者がやる彦と共闘しない場合、彼らが捕縛されたことにしてもよい。彼らを捉えた部屋を上に作り、地下で儀式を行うことにしてもよい。

探索者全員のロール合計が70以上の偶数になるごとに、カルト側の【聞き耳】40%(難易度に合わせて適当に調整してください)が成功すれば、襲撃される。襲撃者は1d2人。(例えば、三人が【目星】を振り、30、21、15の場合、合計は66なので遭遇可能性ゼロです。例えば、二人が【聞き耳】を振り、50、28の場合、合計78なので遭遇する可能性があります。さらにKPがダイスを振り、40以下の場合、エンカウントです。)

〈襲撃者A〉

STR7、DEX9、CON13、INT9、APP11、POW10、SIZ15、EDU17、SAN26、耐久値14、キック50(1d6)、斧30(1d6+3)、こぶし70(1d3)

〈襲撃者B〉

STR11、DEX14、CON13、INT10、APP12、POW11、SIZ7、SAN33、耐久値10、MP11、支配の魔法40(コストはMP1、SAN1)、こぶしα70(1d3)、こぶしβ40(1d5)

支配の魔法のロールに成功し、かつ、CON対抗ロールに成功した場合、10m以内にいる対象を1ラウンドの間(1回につき1人)コントロール下に置く。つまりPLは探索者の行動権を奪われ、魔法行使者が自由に動かせる。

タイプA、B共に、厚手の雨合羽を着ているため、装甲+1(冬の場合コートも着ているだろうから計+2)。

・入り口

誰も居ない(廃墟なのでドアもない)。

・最初の部屋

最近まで本があった様子がある。オカルト的な本、加えて歴史系の書籍が多いことがわかる。【図書館】に成功すれば、一冊の本に布袋ニルヤの論文が挟まっているのに気付いた。1時間かけて読むか、【目星】でざっと読むか、The King in Yellowという奇怪な芝居を記した冊子と共に絵巻を発見したという一節に蛍光ペンが引いていることに気付いた。

・次の部屋

台所だったのではないかとわかる。大きな鍋など集団生活している様子が窺える。【幸運】に成功すれば、塩のなかに「小さな鍵」が隠されているとわかる。魚津やる彦が一緒にいる場合、塩むすびの作り置きを見つけ、「カルトだって、誰かのためにご飯を作るよなぁ。そりゃそうか」と遠い目をしている。

・3つ目の部屋

小さい部屋。物置。ここでも物置にありそうなものを与えてよい。【幸運】に成功などがよいだろう。(必要なさそうならそもそもこの部屋の存在をカットしてもいい)

・4つ目の部屋

複数のベッドが病院のような感じで並べてある。窓一つなく、この部屋にあるのはベッド、仕切りのためのカーテン、サイドボードくらいである。カーテンは真新しく、誰かが最近設置したに違いないとわかる。サイドボードを調べるなら、その中に、束になっている写真があり、束の中には、布袋ニルヤの映ったものが一つ含まれている。

【目星】か【アイデア】に成功すれば、奥のベッドの脚の辺り(=床の一部)に、へこみがあることに気づく(【アイデア】としたのは、ここまで辿り着いているのであれば、《打ち捨てられた廃墟》で隠し扉を発見済みであり、類比が働くのではないかと解釈したため)。そのへこみは扉の取っ手になっている。入るためにはベッドをどかす必要がある。SIZ20と、持ち運ぶ探索者のSTRとの対抗ロールに成功すれば、ベッドをどかすことができる。何度でもチャレンジ可。ロールに失敗すれば大きな音がでたとして、地下で待つカルト信者たちが戦闘準備を完了している(先制攻撃)。

・地下への階段

地下へ降りて行くと扉がある。扉には鍵がかかっている。最初の部屋で小さな鍵を手に入れていれば、それが使える。持っていなければ【鍵開け】ないし耐久値20との戦闘。鍵を持っていなければ、カルト信者たちが探索者たちに気づいて戦闘準備を完了している(先制攻撃)。

なお、①やる彦たちと共闘する、②ベッドを運ぶときに音をたてない、③小さな鍵を手に入れている――この三つの条件全てを満たしていなければ、The King in Yellowを持った信者はこの場から脱出を完了している。

・地下室

扉を開けると、雨合羽を着たカルト信者たちが待ち構えている。全員で【目星】ロール。成功すれば、奥へと続く道があることがわかる(逃げ始めている人もいる)。複数人【目星】成功であれば、ここに残っているカルト信者は、今まで自分を襲撃した人物たちと雰囲気が似ている――つまり、下っ端ではないかと気づく。

戦闘開始。

襲撃者の人数はやる彦と共闘しない場合1d6+4(探索者らが戦闘から離脱しようとすれば、カルトは積極的に追おうとはしない。DEX対抗か、【幸運】の好きな方で逃亡可能)

やる彦と共闘すれば、襲撃者の人数は1d3+4人。(探索者らが戦闘から離脱しようとすれば、積極的には追おうとはしない。ただし、やる彦は探索者らが戦闘から離脱しtも、この場に残る)。

〈襲撃者A〉

STR8、DEX9、CON13、INT9、APP11、POW10、SIZ15、EDU17、SAN26、耐久値14、キック50(1d6)、斧30(1d6+3)、こぶし70(1d3)

〈襲撃者B〉

STR11、DEX14、CON12、INT10、APP12、POW8、SIZ10、SAN33、耐久値11、MP8、支配の魔法45(コストはMP1、SAN1)、こぶしα70(1d3)、こぶしβ45(1d5)

タイプA、B共に、厚手の雨合羽を着ているため、装甲+1(冬の場合コートも着ているだろうから計+2)。

探索者らが条件を満たしていて、The King in Yellowを持った信者が残っている場合は、ダイスで決めた人数のうち1人を以下の能力値の者に代える。

〈襲撃者E〉

STR14、DEX14、CON17、INT10、APP12、POW16、SIZ17、SAN33、耐久値17、MP16、支配の魔法60(コストはMP1、SAN1)、こぶしα80(1d4)、こぶしβ65(1d6)、こぶしγ45(1d8)

《エンディング》

・共闘の場合

『黄衣の王』を持ったやつは逃がしたが/『黄衣の王』を奴らから奪ったおかげで、これだけ構成員を倒してしまえば、相手の目論見を随分後退させることができたはずだ、とやる彦は胸を張る。これで日本神王会が壊滅したわけではないだろうし、日本神王会が名状しがたき神の――黄衣の王を信奉する教団の唯一のものではないだろう。安心し切ることはできないにしろ、当面はこれで安全だろう。

探索者にその本を渡してくれとやる彦に言っても、これは普通の人間が持っていていいものではない。あなた方を馬鹿にするとかではなく、正気でいられなくなるのだ、と頑として渡さない。持ち去ろうとするのを、探索者たちが執拗に止めるか、非難するのであれば、やる彦はその場でポケットからライターを出し、本を燃やそうとするだろう

「僕たちの活動の上で役に立つものではあるのだけど――不信感を持たれるよりは、あなた方との友情のためにこの本を燃やすことにするよ」

もしそれでも止めようとするならDEX対抗ロール。戦う前から見つけたら燃やすつもりだため、やる彦のDEXに+3として、17と対抗することとする。

不審者に襲われたとして匿名で通報すれば警察と救急がかけつけてくる。数週間後、特別展示が終了すると同時に、菅原道真の絵巻が盗まれたというニュースが流れるが、日常に帰った探索者たちにはもう気にも留まらないニュースだろう。

慌ただしい日々も忘れて、あなたたたちは、それぞれの生活場所でいつも通生活している。

【目星】の半分でロール(成功ならば以下の描写を追加する)。

そんなある日、ここにいるはずのない顔を見つけてしまう。布袋ニルヤだ。彼が、探索者たちのことを知るはずがない。死んだ彼の姿しか見たことがないからだ。にもかかわらず、彼はあなたの方をしっかりと見て、曖昧な微笑を浮かべる。死んだはずの彼の眼は、深淵そのもののように深く、死そのもののように暗かった。次の瞬間には雑踏の中に消えてしまった。その浅黒くも人懐っこい笑みを残して――。奇妙な体験をした探索者たちは1/1d6+1でSANチェック。

・共闘しない場合

The King in Yellowを持ったやつは逃がしたし、倒したのは雑魚だ。しかし、これだけ構成員を倒してしまえば、相手の目論見を随分後退させることができたかもしれない。これで日本神王会が壊滅したわけではないだろうが、当面はこれで安全だろう。

不審者に襲われたとして匿名で通報すれば警察と救急がかけつけてくる。数日後、特別展示が終了すると同時に、菅原道真の絵巻が盗まれたというニュースが流れるが、日常に帰った探索者たちにはもう気にも留まらないニュースだろう。慌ただしい日々も忘れて、あなたたたちは、それぞれの生活場所でいつも通生活している。

【目星】の半分でロール(成功ならば以下の描写を追加する)。

そんなある日、ここにいるはずのない顔を見つけてしまう。布袋ニルヤだ。彼も探索者たちのことを知るはずがない。死体としてしか彼に会ったことがないのだから。にもかかわらず、彼はあなたの方をしっかりと見て、曖昧な微笑を浮かべる。死んだはずの彼の眼は、深淵そのもののように深く、死そのもののように暗かった。次の瞬間には雑踏の中に消えてしまった。その浅黒くも人懐っこい笑みを残して――。奇妙な体験をした探索者たちは1/1d6+1でSANチェック。

・The King in Yellow(邦題『黄衣の王』)

言語は英語。どうやら何かの言語から英語に翻訳されたらしい。薄くて黒い8つ折。表紙に大きな〈黄色の印〉が浮き上がっている(SANチェック0/1d6)。本の内容は、意味を読み取ることのできない曖昧模糊とした夢の様な芝居で、読む者を狂気に誘い入れていく。読了に一週間かかる。SANチェックで1d3/1d6+1。【クトゥルフ神話技能】に+5。

〈報酬〉

共闘した場合……1d3

探索者全員生還……1d3

『黄衣の王』の奪還ないし破壊……1d3

《鳴島珈琲店》の利用回数が6回を超える……1d3

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