CoCシナリオ「絵画を探せ!」

クトゥルフ神話TRPGシナリオ「絵画を探せ!」のシナリオ公開ページです。

シナリオ作成者|ミルチ

※クトゥルフ神話TRPG(2010および2015を想定)のためのオリジナルシナリオです。クトゥルフ神話TRPGのシナリオ置き場はこちら


○まえがき
 

 これは、初心者探索者のためのチュートリアルです。「いかにもCoCっぽい!」と思うような宇宙的恐怖に遭遇することはありません。ほんのり怖いくらいでしょうか。
 「絵画を探せ!」は、KPに対するガイド、対応の見本を提示していますが、基本的にはKPの即興力が試されることになります。あしからず。
 チュートリアルということで、SAN喪失を既定より多くして狂気ロールを楽しんでもらってもいいかもしれません。そんな感じで、KPはPLに応じて改変することが奨励されています
 チュートリアル後は、ぜひ「奇妙な京都」や「夜は短し飲んでは歩け」などを遊んでくださいー。あと、リプレイ化・動画化は歓迎です(シナリオへのリンクをつけてください)。
 プレイ時間は、早いと20分くらい、遅くても1時間くらいです。昔、チュートリアルとして、即興で作ったお話を基にしました。


○到達目標
ちなみに、このシナリオを通じて、PLに達成してほしい目標は三点あります。
・PLとPCを、さしあたり分けて考えること
・PCの動き(行動や判定)と、PLの要請・質問が、KPに「描写」をもたらすということ
・技能に対するイメージを持ち、技能・特性を活かしてKPに提案することに慣れること


○基本情報
 あなたは、友人・知人である高橋健一に頼まれごとをします。それは、「絵画」を探してほしいということです。絵画は、輪郭だけはやけにくっきりしているが、顔だけは描かれていない肖像画のようなもので、どこかの駐車場が背景になっているのだとか(村上春樹の『騎士団長殺し』に出てくる絵をイメージしてくださるといいかもしれません)。
 プレイヤーは、高橋に呼び出されたことから始まります。PCたちは、高橋の家の敷地が広いということだけ知っていて構いません。高橋は、先に述べたような絵画を探してほしいと頼みます。その絵に名前はついていないので、「ノーネーム」とここでは呼ぶことにします。そして、高橋によると、その絵画を蔵の中から探してほしいのだとか(高橋家の敷地には立派な蔵があるのです)。
 シナリオを長引かせないために、高橋の家の敷地で、しかもセッション内時間で数時間程度を目途に探索してほしいと伝えてください。シナリオの完遂よりも、試行錯誤をするプロセスがチュートリアルの目標にとって大切なことだからです。
 行き詰まったなとKPが感じたところでは、「~について注目してはどうか」「~の方はまだ見てないんじゃないか」など積極的に提案を出してください。高橋のつぶやきや提案という体裁でも構わないですし、KPからPLへの個人としての提案という形式でも構わないと思います。
 以下に書く情報は、KPの裁量や考えに応じて、PLによる提案・質問・ロールプレイ・判定などに応じて開示したり、一部は予め開示したりと好き好きにやってください。


〇高橋健一が持っている情報
・高橋の年齢などは適当に決めてよい
・絵画の制作者は、健一の祖父にあたる「荻野順一」。
・荻野は、若い頃、西洋絵画を熱心に勉強し、当時の批評家には「単なる技術的な模倣以上のものを達成した」と評され、一時は時代の寵児になっていた。
・しかし、後年、突然日本画に取り組み始めた(後期荻野)。最晩年には、日本画と西洋画をミックスしたような作品を作っており、当時は酷評されていた。
・死後は評価が低かったが、最近、海外で荻野の絵に高値がついたのをきっかけに、再評価が始まっている。とりわけ、後期以降の彼の絵画は、高く評価され始めた。
・今回依頼したのは、美術史の研究者である友人から、依頼を受けたから。その人は、荻野の日記やスケッチなどを調査しており、「ノーネーム」のスケッチが無数に残されており、製作最中の記録と思われるメモなども見つかったのだ。
・高橋は家の中や屋根裏を探したが見つからなかった。なので、この敷地内にあるとすれば、この蔵の中にあるのだろうと当たりをつけたのだ。しかし、その家探しで疲れてしまい、探索者たちに依頼をすることになった。
・蔵は鍵がかかっているのだが、100にもせまると思われるような異常な数が束ねられた鍵束があり、その中のどれかということはわかっている。(うまい提案や技能で探させてください。鍵開けを「鍵探し」に使うのも面白いかと)
・高橋は、蔵の鍵を壊しても構わないと答える。普通に、鍵屋さんを呼ぶのもいいと思います。

※高橋とのコミュニケーションがなければ、提供しない方針
※高橋家の蔵書で対応するなどもよい

〇蔵の外観
・漆喰壁、瓦。
・背が高く、蔵と聞いて通常イメージされるよりも大きい。「離れ」と言ってもいいくらいのサイズ。
・一回りすると、直方体であることがわかる。
・正面には堅牢な扉、いかめしい南京錠。ちょうど反対側には、窓がある。
・扉は破壊することが難しい。鍵は工具を使えば壊せそう。
・窓は少し高いところにある。窓の鍵は開いているが、窓自体はしまっている。


〇蔵の内装
・二階建て、昼間でも少し薄暗い。
・一階は、正方形の部屋が二つ並んだような構成。
・すごくものがいっぱいある。
・目星に成功したら、何か役にたたなさそうなものをあげてください(お風呂のアヒルとか)。


○1階
・若干うすぐらい(目星などにマイナス)。マイナス状況をなんとかするのに、何かいい考えはないか、PLに試行錯誤を促す。
・「ベニヤのかべ」という吹き出しの側、つまり、「いりぐち」と反対側に小さな窓。
・ベニヤの壁にあたるものは、見た目は普通の壁と遜色ない。
・目星などに成功すると、絵画を見つける。肖像画だが、背景がやや抽象的で、目が回りそうな気分がする。肖像画の人物の表情を見ていると、焦点があっていないことに気づく。いや、人間の姿こそしているが、どうしても人間に思えなくなってくるはいけいにかいてあるみどりはまさかまさかまさまさかまさか———(SANチェックです。0/1d3くらいを念頭に置いていますが、適宜変えてください)
・冷静に絵をみてみると、顔が書いてあることがわかる。
・この肖像画について聞くと、「な、何だそれは。知らない。いや、そもそも、探している絵じゃない。後で捨てるからこっちに渡せ」と厭に強引だ。心理学などに成功すると、「彼は何かを隠している/この絵を見てほしくない理由がある」などの事情がわかる。脂汗すらかいている。説得など交渉系のロールに成功すると、肖像画は、高橋が祖父に憧れて描いてみたものだという。高橋は絵の才能に恵まれなかったのだ。
・目星に成功すると、右側の壁に違和感があると思う。蔵の外周を一回りしていた場合、あるいは、蔵の外観をじっくり見ていた場合、アイデアを触って、「部屋が見た目より狭いことに気づく」としてください。
・一回りしたり、外観をチェックしていなくても、アイデア等で、蔵の大きさの割に天井が低いと気づく。/知識と歴史の複合ロールで、この程度の大きさの蔵だとすれば、二階があるのではないかと思い至る。
・ベニヤの壁は叩くと軽い音がする(反対側は、普通の壁なので鈍い音がする)。
・高橋に聞くのであれば、ベニヤの壁を壊してもいいと答える。

※KP用の図なのでPLに公開しないでください。


○2階
・うすぐらく、天井は低い。窓もない。
・やはりものがいっぱい。
・奥の部屋へ続く道は、色々なものが塞いでいる。タンスがあるほか、その周りに色々邪魔なものがあったり、タンスの上に色々乗ったりしている。
・PL側に工夫がなければ、STR22との対抗ロール。タンスの中のものを取り出してから、どけようとする、タンスの上のものをどかす、周りのものをどかして運びやすくする、蔵の中にある何らかの道具を使う、高橋に協力してもらうなどの、PLの提案に応じて、対抗値を下げてください。
・奥には布で大切そうにくるまれた絵画を見つける。それは、間違いなく「ノーネーム」(目的の肖像画)だった。
・「ノーネーム」は、あと少しで完成しそうなところで放置されている。背景は郊外のショッピングモールや道の駅などを思わせる広い駐車場だ。樹木なども少し描かれている。すごく写実的というわけではないが、決して人を誤読させない明快な表現だと感じる。しかし、この肖像画には、最も欠けてはならない要素が欠いていた。人物に、顔がないのだ。だが、あなたはなぜかその顔に様々な表情を見出す。怒り悲しみ嬉しさ楽しさ——あなたが生まれてから感じてきたすべての感情が入れ代わり立ち代わりにすべて去来してくる。それを止めることはできない。あなたは泣いて、笑って、悲しんで、怒っていると感じる。無貌の肖像画は、不思議とぞっとするような寒さを感じるだけでなく、その絵から目が離せないような魅力を感じる。——と次の瞬間、外で待っていたはずの高橋に肩を揺さぶられる。「おい!おい!大丈夫か!!」と高橋は繰り返し叫んでいる。探索者が反応すると、「絵を見つけてから、何度声をかけても返事がないし、もう30分以上、絵を見つめてずっと動かなかった」(※高橋が一緒に行動しているかどうかで言葉を変えてください)と語る。実際、時計をみると、タンスをどかしてから30分、いや1時間近く過ぎていた。SANチェックです(1d3/1d6)。

※左側の黒いのはミスなのですが、削るのも面倒なので、このままで許してヒヤシンス。こちらはPLに公開しても構わないと思います。


○「ノーネーム」を見つけたあと
・報酬として高い料亭に連れて行ってもらうとともに、変な頼み事をしてわるかったと高橋に陳謝される。
・高橋はその絵を気味悪がってすぐに絵を売ってしまった。
・探索者は、時々あの絵に描かれた男の夢を見るだろう。彼は夢の中であなたを見ていると思う。無貌にもかかわらず、たしかに見ているとわかる。ノイズ、不思議なノイズが聞こえて、それもたしかに彼の声だとわかる。あなたは、あなたは、この男を知っている——。


○クリア報酬
・ロールプレイや技能判定などに慣れることが目的なので、特に想定していません。
・代わりに、シナリオ内で喪失したSANを元通りに戻してください。
・クリティカル、初期値成功による技能成長は、記念になりますし、ぜひどうぞ。

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