CoCシナリオ「夜は短し飲んでは歩け」

「夜は短し飲んでは歩け」 

シナリオ作成者|ミルチ

※クトゥルフ神話TRPG(2010および2015を想定)のためのオリジナルシナリオです。クトゥルフ神話TRPGのシナリオ置き場はこちら。

【京都で】夜は短し飲んでは歩け【クトゥルフ神話TRPG】で動画化したシナリオを公開することにしました。

〈備考〉

・森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』より、「夜は短し歩けよ乙女」に取材したシナリオです。本文のページ数は文庫版に準拠。

・一切の戦闘がありません。魔術的・神話的な怖さもありません(KPの演出次第では、ほんわかこわいかもしれません)。

・別種のおふざけ満載の、深夜から朝方にかけての酩酊のようなシナリオを目指しました。深夜から明け方にかけて、酩酊や眠気の中で「夢か現か」が曖昧になっていく不思議なテンションを楽しむことを優先してもらえると、シナリオの雰囲気に合っているのかなと思います。下らないSANチェックや意味不明な演出、酒にかこつけたダイスロールや補正などがあると、よりよいかも。

・ごく初心者向けのチュートリアル的なシナリオとして作っているので、KPが積極的に理由をつけてボーナスを与えたり、成功しやすそうな技能で積極的に代替したりしてよいのではないかなと思います。どんどんダイスを振らせて成功させ、トゥルーエンド達成できるの、PLとしては、やっぱり嬉しいですし。

・なお、交渉系技能と探索系技能は必須です。出目が腐ってたら適当に酒を飲ませましょう!飲めば何でも解決します。

・高海やる正は「奇妙な京都」という別オリジナルシナリオに名前だけ登場します。ちょっとしたキャンペーンシナリオとしても使えます。

・ちなみに、「偽」でない、「電気ブラン」「ブルームーン」は両方共実在のお酒です。実際にプレイ中に出すと最高かもしれません。

・所要時間は、大体、一時間から二時間です。

〈公開に際しての注意事項〉

・動画化/リプレイ化、歓迎です。ただし、シナリオ作成者の投稿した動画のパート1(sm25978335)をコンテンツツリーに登録すること、シリーズマイリスト(mylist/49534041)へのリンクを付けていただくなど、元ネタの存在を示してくださるとうれしいです。

・また、これは強制ではないのですが、ニコニコ市場に原作の『夜は短し飲んでは歩け』を登録するかリンクを貼るなどして、原作が存在することも明示していただけると嬉しいです。原作あってのものですし、少しでも原作ファンが増えると嬉しいので。

・演出や他シナリオへの接続などを理由にした「改変」は全く問題ありません。むしろ歓迎です。

・公開した際は、ツイッター(@mircea_morning)などで教えていただけると、喜びます。飛んで見に行きます。

〈導入1〉

かつて所属していたか、現在も所属しているかは問わないが、サークルの先輩である売れ残りの赤川がついに結婚することとなり、内輪での祝いを催すことになった。探索者たちは夜の京都は祇園にて、西洋料理店《鳴島ブルワーズ》で、飲めや騒げの宴に参加している。しかし、酒好きの探索者は幾分飲み足りない。それに、赤川とはサークルに所属していたタイミングがそれほど重なっておらず、礼儀で参加したに過ぎないのだ。居心地が悪いとは言わないまでも、尻の据わりはどこかいつもと違う。一人でこっそり抜け出して、ちょっと飲み直したい気分になっていたのだ。

そんな折、当時より仲良くしていたサークルの仲間である高松均に興味深い話を聞くことができる。当時からうさんくさいアルバイトの斡旋をしていて、探索者はそれの世話に何度となくなってきた。今も高松はアングラ演劇で「テロリストと愛媛県、あるいはみかんの甘み」なる不可解なシナリオを描いたり、府知事選挙に借金して立候補しては、「有権者諸君、投票などしてはいけない! 選挙当日は、我輩にやけっぱちの一票を! さもなくば無効票を!」と奇怪なパフォーマンスをやってのけた(外山恒一のイメージ)。高松がどうやって暮らしを立てているかは謎だけど、なんとなく放っておけない魅力がある。

さて、その興味深い話とは「偽電気ブラン」である。電気ブランという酒は実在しているが、それの密造酒というのだからよくわからない。興味を抱いて話を聞こうとしても、高松もそれ以上は知らないだとか、それ以上は教えられないだとか、公安に目をつけられるとか、KGBに祟られるだとか要領を得ないことばかり言う。

執拗に質問を投げかけてようやく得た情報は、木屋町で道を二度ほど外れた薄汚い中華料理店が関係しているということだった。

【説得】・【言いくるめ】・【信用】でロールして成功なら、その中華料理店が《山猫飯店》であることを知ることができる。

〈導入2〉

探索者は仕事帰りに、ご褒美の一杯をと適当な店を見繕って入った。木屋町にあるバー《月面飛行》である。様々な種類のお酒が置いてあることが特色ではない、そこはやけに狭いのだ。居心地がいいような悪いような――いや、どちらかと言うと押し入れで隠していた酒をちびちび飲んでいるような気分になる。まぁ、それも悪くはないか、と追加の酒を注文しようとしたところで、隣の客に声をかけられる。

客は東堂と名乗った。いかにもスケベそうな面をしていて、実際スケベであるらしい。探索者が女性ならば、肩や腰に手を回そうとしてくるだろうし、胸を遠慮もなく見てくるだろう(しかし、酒はおごってもらえる。男性探索者の場合はおごりなし)。

スケベじじいではあれど、ただ酒も悪くないと飲んでそれなりに話していたとき、東堂は秘密の酒について話してくれる。

「そもそも電気ブランというのは、大正時代に東京浅草の老舗酒場で出していた歴史あるカクテルでね、新京極あたりにも飲ませる店はある。電気ブランの製法は門外不出だったが、京都中央電話局の職員がその味を再現しようと企てた。試行錯誤の末、袋小路のどん詰まりで奇跡のように発明されたのが、偽電気ブランだ。偶然出来たものだから、味も香りも電気ブランとは違う」(『夜は短し歩けよ乙女』p.18-19)

ここでパタリと眠ってしまい、続きはその場で聞けそうにない。バーのマスターは笑って、時々客を捕まえては、得意気に偽電気ブランの話をするんですよ、と言う。バーのマスターに偽電気ブランの話を聞いても、「電気というくらいだから、電気でも使うんですかねぇ? 今でもどこかで作られて、夜の街へ運び込まれるんだって、いつも東堂さんは言ってますね」ここでふと思い出して、「木屋町で道を二度ほど外れた薄汚い中華料理店が関係している、と言っていたような気がします」――こう教えてくれる。

【聞き耳】ないし【幸運】でロール。成功すれば、バー《月面飛行》を後にしようとところで、東堂の寝言を聞く。「山猫飯店……ブラン……んー」。それ以上はやはり聞けそうにない。

探索者たちは、そのまま夜に繰り出して「偽電気ブラン」という響きに誘われるまま、中華料理店に向かっていく。

→いずれの導入にせよ、何らかの形で「偽電気ブラン」に興味を持ってほしいとKPからPLに伝えてください。「偽電気ブラン」への動機付けと、《山猫飯店》の情報が開示されるのであれば、どのような導入でも構わないと思います。

※出目が腐っていて、探索者全員が「偽電気ブラン」の情報を手に入れられなかった場合について書いておきます。その場合、ベロンベロンに酔っぱらった東堂を、ゴミ捨て場に転がしてはどうでしょうか。「彼はそこを楽園か何かと勘違いしているらしく、随分と上機嫌だ。質問には何でも答えてくれそうだ」とでも言って、「偽電気ブラン」の情報を一切合切あげてください。

《合流の仕方》

合流の仕方に迷われるKPも多いかと思うので補足しておきます。

導入の段階で、各々が「偽電気ブラン」の情報、つまり《山猫飯店》の情報が手に入ったのであれば、《山猫飯店》で合流するのがよいと思います。

また、誰かが「偽電気ブラン」の情報を手に入れらなかった場合、KPが介入して、「『面白い酒の情報が手に入ったんだが、一緒にどうか』と電話してもらっていいですか」など、探索者の関係性に合わせた行動を提案をするのがよいのではないかと思います。

私自身が公開した動画では、探索者同士が知り合いではなかったので、夜の町中(木屋町通辺り)で、食パンダッシュしている探索者が、もう一人の探索者に衝突するという仕方で合流しました。シリアスなシナリオではないので、こういうコミカルで強引な合流は、シナリオの雰囲気にもあっていて、むしろ「アリ」だと思います。

《山猫飯店》

ここを訪ねる段階で合流させてもよいし、《山猫飯店》の情報を手に入れられていない場合は、探索者同士を合流させてからここを訪ねさせてもよい。

現在は夜0時。閉まっている。表にも裏にも水色のゴミバケツがいくつも置いてあり、ネズミや虫の御用達店舗となっている。表の扉はある程度堅固だが、裏の扉はセキュリティが甘そうである。

【鍵開け】か、探索者のSTRとドアのCON12との対抗ロール。複数探索者で挑むことができる。(ドアの数値を下げて対抗ロール成功値を上げることで、南京錠が弱っていたことにして、酔ったテンションで鍵ごと壊したことにしてもいいかもしれない。)

中に入ると早速厨房がある。電気をつけなければ【目星】などにマイナス補正。懐中電灯やスマホなどでも補正はややマシになる。

・冷蔵庫

冷蔵庫には泥のついたままの野菜に、見たこともないくらい大きいままの肉がある。【アイデア】に成功すれば、鳥でも豚でも牛でも羊でもない肉だとわかる。成功した探索者はSANチェック(0/1d2)。

【目星】に成功すれば、消毒用アルコールを薄めたような液体瓶を発見する。(飲もうとしたら適当にMPでも減らしておきましょう)

・調理台周辺

下の棚には水洗いしただけではないかと思われる調理器具が所狭しと入っている。いくつかの調味料が台の上に置いてある。【目星】に成功すれば、塩でも砂糖でも小麦粉でも片栗粉でもない、いわばハッピーターンの粉や味の素に似た「白い粉」を発見する。SANチェック(0/1)。もし舐めたら、周囲がどれだけ声をかけても、小一時間舐め続けることになります。我に返ったときにSANチェックをお見舞いなすって(1d2/1d3+1)。見ていた人にも少なめでSANチェックをプレゼントしてもよい。

【幸運】に成功すれば、中華鍋(1d6+DB――小さな棍棒扱い)やフライ返しやお玉(1d3+DB)を見つけることができる。包丁を持って徘徊するのは、さすがにちょっと不自然なので、ここでこうした武器?を調達させるとよい。なお、シナリオ上は一切必要ない。

(過去にやったときは、西田幾多郎の『善の研究』のカバーがついたエロ本が手に入ったことしたりもした。「おお、なんて冒涜的な知識の書かれた本であることか!閨房調査団の一員としてはこれを保存する義務に駆られてしまう。」などと口走る。)

さらに進めば、客席・食事スペースがある。

・客席周辺

床も粘ついていて、机もどこかしっとりしている。椅子はさすがに汚れてはいない。【アイデア】に成功すれば、人が座るからズボンによって拭かれ綺麗になるのだという冒涜的な真実に思い至る。

【目星】に成功すれば、リンゴほどの大きさのだるまを手に入れることができる。

・レジ周辺

「取り扱いやすそうな学生風の客には、日本語の通じないふりをして、サイドメニュー・餃子を注文していることにして会計する」など冒涜的なメモがある(メモはすべて日本語)。学生探索者はSANチェック(0/1d2)

【目星】に成功すれば、「キャベツ3kg、粉10kg、偽ブラン10本、薬漬けキムチ6kg、トマト2kg、メガネ8つ、シルクハット2kg」などと不可解な注文項目の記された注文票を発見する(シルクハットや眼鏡は不気味さや意味不明さの演出だが、隠語と解釈して、別シナリオのフックに使ってもいいかもしれない)。

→メモは【図書館】か【経理】に成功すれば、その分厚い注文票のなかに取引先の名前を発見する。「有限会社・李白」と書いてある。

上のロールで【経理】に成功した場合は以下の手順を省き、有限会社・李白の住所を手に入れることができる。

ネットで住所を調べられる。【図書館】ロールに成功すれば、新京極をちょっと外れた辺りの雑居ビルの最上階だとわかる。「どこで見つけてきたのか……」と悩みたくなるTシャツなどを扱っているフィンランド人の古着屋が一階にある。

ネットでのロールに失敗すれば、【幸運】で振れば、ゴミバケツの中からズボッと縮れ毛の男性が出てくる。「山猫飯店になにか用かい? ここのバケツがどうしてもちょうどよくてね。月に1回は入りたくなるんだよ」と話しかけてくる。

彼は浮浪者というわけではないが、どうにも酒好きで、月に1回飲み過ぎた日に、どうしても「ちょうどいい」ゴミバケツに入ってしまうのだという。アルコールさえ手に入れてくれたら、有限会社・李白の所在地を教えてもよいと言ってくれる。

《有限会社・李白》

方向音痴に当てずっぽうに歩かせるみたいにして、新京極をちょっと外れた辺りの雑居ビルの最上階に事務所がある。「どこで見つけてきたのか……」と悩みたくなるTシャツなどを扱っているフィンランド人の古着屋が一階にある。階段を登って最上階に行くと、雑な入り口があり、そばには、奇妙な植物の鉢植えがある。

明かりに関する補正は《山猫飯店》と同じ(メタメッセージで伝えてもよい)。

・入り口

【鍵開け】で開く。あるいは【アイデア】に成功で鉢植えの下に鍵があることに気づく。なお、【アイデア】の出目が10以下ならば、【知識】ロール。成功で、この世に存在する植物ではないかもしれないと気づく。SANチェック(0/1d2) ※植物の種類は特に決めていません。ご自由に演出を。

・最初の部屋

いくつかの机や書類棚がある。【経理】ないし【法律】、【図書館】でロール。ここにある資料から、この事務所に在庫があるわけではないとわかる。

・奥の部屋

社長のいる部屋らしいことがわかる。【目星】で、部屋の状態からしてついさっきまで誰かがいたのではないかと思う。偽電気ブランと記された文書を発見する。確かにここが偽電気ブランと関わっているらしい。

【聞き耳】ロール。成功すれば、入り口に誰かが来たらしいことがわかる。

・杜甫の登場

【聞き耳】に失敗した探索者は、他の探索者に入り口に誰かが来たことを教えてもらっていない場合(入り口の誰かに探索者が声をかけていない場合)、突然不法侵入の場で、巨漢に声をかけられた驚きからSANチェック(0/1d2)。

有限会社・李白の社長、杜甫。巨漢で柔和な表情をしているが、感情はかえって読み取りがたい感じがする。

「君たちはここで何をしているんだ?」と落ち着いた調子で彼は訊ねてくる。動画では不気味さの演出として、あえて、わかるはずのない人数や性別、年齢や勤め先まで、KPのブラフダイスロールでわかったことにしました。

事情を正直に話せば、自分も酒好きであること、酔っぱらいの行動力を面白く思うことを伝えてくる。今ここに在庫はないが、早朝から空いていて、偽電気ブランを扱っている店があると教えてくれる。

全員【心理学】ロール。

失敗→柔和な笑顔からして純粋に好意からの申し出に思えた。

成功→嘘をついているわけではないが、その表面的な笑顔の背後に隠していることがあるのではないかと思った。

杜甫から教えてもらったのは、錦鯉センターで育てた錦鯉を食べられるというおでん屋《緑のグリーン》である。京都駅の南側、八条の――まだ再開発の手が及んでいない裏路地にある。いつもあるわけではないが、店主の気分次第でやっている店らしい。(ここまでは杜甫から聞ける情報)

《有限会社・李白》を去ろうというところで、【幸運】ロール。成功すれば、《緑のグリーン》の店主がだるま好きであることを杜甫が思い出して伝える。もしだるまを持っていればいいことがあるだろう、と。

なお、杜甫=ニャルと決めているわけではありません。裏社会に通じている人だとか、仙人やイス人でもいいかもしれません。続編やキャンペーンを考えているのであれば、都合のいいように転用してください。

《緑のグリーン》

錦鯉センターで育てた錦鯉を食べられるというおでん屋《緑のグリーン》である。京都駅の南側、九条の――まだ再開発の手が及んでいない裏路地にある。いつもあるわけではないが、店主の気分次第でやっている店らしい。屋台に近づくにしたがって、生臭いにおいが漂うが、なんだか、珍味のように親しみ深く感じてしまう。

【知識】ロール成功で、以下の噂を知っている。気分屋の店舗といえば、北は出町柳の《猫ラーメン》。南は九条の《緑のグリーン》。《猫ラーメン》は糺の森産の猫から出汁をとるのに対して、《緑のグリーン》は料亭の池から盗み出した錦鯉で出汁をとっているのだという。冒涜的な真実を知った探索者はSANチェック(0/1d3)。

店主は非常に醜い顔をしている(APP4)。屋台も少し湿っていて、全体的に魚臭い。おでんの中には、川魚、餃子、ソーセージ、チーズ、トマト、キムチ、シルクハット、学生証と入れたい放題である。

だるまを持っていて、さらに【説得】・【言いくるめ】・【信用】のいずれかに成功すれば、偽電気ブランを出してもらえる。有限会社・李白の名前(あるいは社長である杜甫)を出せば、交渉系ロールに+補正をかける。

・だるまを持っていて、交渉系ロールに成功した場合

偽電気ブランを飲んだ探索者は次のような感想を抱く。

「偽電気ブランは甘くもなく辛くもない。想像していたような、舌の上に稲妻が走るようなものでもない。それはただ芳醇な香りを持った無味の飲み物と言うべきものです。本来、味と香りは根を同じくするものかと思っていたが、このお酒に限ってはそうではない。口に含むたびに花が咲き、それは何ら余計な味を残さずにお腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わる。それがじつに可愛らしく、まるでお腹の中が花畑になっていくようだ。飲んでいるうちにお腹の底から幸せになってくる。」(『夜は短し歩けよ乙女』p.64)

偽電気ブラン:飲めばSAN値を1d3+1回復するほか、MPを1d6回復する。(自分が回したときは、今作中で失ったSAN値以上は回復しないことにしました。)

魚臭い匂いが充満する風俗街で、お腹の中からは花のような香りをさせながら、探索者たちは幸せな気分になった。

「気に入ったようだな」と店主は声をかけてくる。気に入ったことが嬉しいのか名前を教えてくれる。彼の名前は高海やる正。以前、時々京都の平和を守りながら、星々が正しき配列となるのを待っているのだという。(クトゥルフ神話TRPGシナリオ「奇妙な京都」に高海やる正の名前が出てきます)

酔っ払った探索者たちはその発言を気に留めることはないだろうし、以前高海やる正の名前を聞いたことがあったとしても、思い出してそれを結びつけることなどできないだろう。探索者たちは、天国のような気分で夜明けを迎えているのだから。

屋台を後にしようとするとき、高海はこう言うだろう。「夜は短し飲んでは歩け」

・だるまを持っておらず、交渉系ロールに成功した場合

偽ではなくて、普通の電気ブランだと茶色いお酒を出してくれる。聞けばアルコール度数が45と高く、舌がどこかピリリとする。が電気のイメージと重なってくる。

酔ってしまった探索者にはこれが本当に電気ブランなのか。実のところ偽電気ブランだったりするのか。そうではない、何か別の酒なのか。はたまたもっと恐ろしく、奇々怪々なお酒なのか――その一切がわからないまま、疑問も今夜の冒険劇も酩酊の中に溶けていくだろう。

奇妙に混ざり合った不思議なおでんも、一度食べてしまえば、意外と食べれたもので、とりわけうまいというわけではないのに、中毒的に箸が進んでいくのがわかる。

CON×5に成功したならば、大量に食べられたということでSAN値が1d6回復する。失敗すれば1d3回復する。

屋台を去り、帰り道をなんとなく歩いている探索者は、ふと何かに思い当たりそうになる(【アイデア】ロール)。成功すれば、中毒的なまでに夢中になって食べた不思議なおでん――あれは小汚い中華料理店にあったような「粉」が入っていたのではないか、と思い至る。ほら、今すぐにでも、あのおでんが食べたくなってくる。あなたのよだれは止まらない。脚は帰り道から逆走して、九条へと戻ろうとしていた。

※【アイデア】成功者はSANチェック(1/1d3)

・だるまを持っていない上に、交渉系ロールに失敗した場合。

これが偽電気ブランだ、と青白く光る液体(=偽ブルームーン)を出される。瓶ごと出されて、それを手渡された。ところが、店主は店じまいを始める。今日はもう場所を移すのだという。おでんを出せない代わりに、とそれを渡してくれた。

一瞬目を離した隙に、屋台も店主も消えてしまう。

シナリオの締めくくりとして、店主がふと「夜は短し飲んでは歩け」とつぶやいたことにすれば、シナリオを終えた感覚や、シナリオ全体としてのシメの感じがあってよいのではないでしょうか。

「偽ブルームーン」(アイテム名)

青白く光る液体を飲んだ探索者は、しばらくして身体に変化を覚える。肌は波立って鱗だってくる。指の間はどこか痒くなってきて、水かきが発達してくる。顔はむくみにむくみを重ねて魚のような表情になる。(メタ的に言えば、似非深きもの化します)

データ的には以下の変化が起こる。APPは5になる。SIZは17になる。DEXは16になる。【水泳】の技能値が+80になる。三十分程で効果は切れるが、APPがキーパーの指定した期間だけマイナス1される。

不可解な身体的変化を経験した探索者はSANチェック(1d4/1d6+1)。その変化を見ていた探索者もSANチェック(1d3/1d5)

(なんなら、こんな感じで好きなお酒を考案してもどんどん出してもいい。)

(了)

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