海月里ほとり

俺は小説書きサイボーグ。淡々と小説を書いてお前を押しつぶす。 お代は見てのお帰り。 皆…

海月里ほとり

俺は小説書きサイボーグ。淡々と小説を書いてお前を押しつぶす。 お代は見てのお帰り。 皆の万札が、銃弾やムーンライトクッキーに変わって、海月里ほとりをバックアップします。

マガジン

  • マッドパーティードブキュア

    ドブヶ丘で戦う魔法少女たちのお話です。

  • ドブヶ丘関連

    自分で書いたドブヶ丘関連の色々を貯めていきます。

  • ドブヶ丘集

    妄想虚構都市ドブヶ丘に関する記事をここにためていきます。説明書をよくお読みになり用法容量を守ってお使いください。あなたドブヶ丘に踏み入るとき、ドブヶ丘もまたあなたに侵入している。

  • 出口兄妹の冒険

    腕に口持つお兄ちゃんが妹のために頑張る、怪物たちがドブヶ丘で切ったはったするお話です。

  • 電波鉄道の夜

    逆噴射小説大賞二次選考通過作品「電波鉄道の夜」の連載版です。おおむね毎日更新をめざし……実行します。

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この記事は海月里ほとりの書いた小説をまとめた記事です。 いつの間にかずいぶんと数を書いていたので、辿りづらくなっているのではないだろうか。そんな時ここから選んでいけば好きなところから読めるという寸法だ。 ドブヶ丘の話とかSFな話とか、あとファンタジーな話を書いたりしている。 それぞれの小説の本文は無料ですが、投げ銭用にあとがきをつけていることがあります。気に入ったら読んでみてください。とてもうれしくなる。もちろん本文を読んでもらえるだけでもうれしいけれども。 ドブキュ

    • マッドパーティードブキュア 244

      「なんとかって、なんか策でもあるんでやすか?」 「いや、別になにかあるわけじゃないけどよ」  メンチは気まずそうに目を逸らした。  何か策があるわけではない。けれども返した言葉は嘘ではなかった。あの女が見た通りの存在だとは思わない。得体の知れない存在で、正面から打ち合って勝てるかどうかは五分五分といったところだろう。けれどもあの打ち合った一合は絶対的な力の差を感じさせるものではなかった。 「うまくやりゃあ、なんとかなるんじゃねえかな」 「あんまり油断はしない方が良いと思います

      • マッドパーティードブキュア 243

         まだ、調達屋連盟がさほど大きくなかった頃の話だ。その頃は盟主とその腹心を中心とした、こじんまりとした調達屋の助け合いの組織だった。  ある時腹心の娘が敵対する組織に攫われたことがあった。その当時にも盟主の戦闘力は界隈に知れ渡っていた。戦闘力を恐れた敵対勢力が連盟の力を削ごうと画策したのだろう。ドブヶ丘の構想ではよくある、ありふれた話だ。  結末も意外なものではない。娘は盟主によってきっちりと無傷で「調達」された。  話が奇妙なことになるのはここからだ。盟主は腹心に対して、仕

        • マッドパーティードブキュア 242

          「そんなに重要なことではないかもしれないのです」 「いいさ、とりあえず話してみなよ」  なおも言い渋る受注担当官を、なだめるように老婆は優しい声で先を促した。受注担当官はためらいがちに言葉をつづけた。 「メンチさんの斧と、あの女……袋の力、なのでしょうか? その二つがぶつかり合った時の感覚を以前に感じたことがあったような気がするのです」 「なんだって?」 「それは、どこで感じたんでやすか?」 「確かに同じだったとは、確信をもっては言えないのですが……以前、一度だけ盟主が現場に

        • 固定された記事

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        • マッドパーティードブキュア
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          19本
        • 電波鉄道の夜
          12本
        • Vのこと
          5本

        記事

          マッドパーティードブキュア 241

          「何か知ってるのか?」  メンチが問いかけると、受注担当官は首を振って口ごもった。 「いえ、おそらく、なにもお話しすることはありません。あの女が持っていた力のことですよね」 「ああ」  メンチは頷いて続けた。 「あたしらはその混沌の力は、あの女が例の袋から引き出しているんじゃないかと睨んでるんだ」 「ええ、そういうことですか。でしたら、おそらくそれは間違いないことだと思います。あの女は袋に『子どもたち』を吸収するたびに力を増していきました。少なくとも、袋から力を受け取っている

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          マッドパーティードブキュア 240

          「それからは……皆さんが知っている通りです。私は、メンチさんにお茶をかけてしまい、あの女に殺されかけて、そして……そしてあの音を聞いたのです」 「音?」  受注担当官は頷いた。 「ええ、あの音です。世界が割れるような音。あの音で私は少しだけ意識を取り戻したのです」  その言葉を聞いてメンチは思い出した。メンチが斧で女の一撃を受け止めた時の激しい音を。 「目の前でメンチさんとあの女が言い争っているのに気が付きました。私は必死に気づいていないふりを続けました。それから、あの女の目

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          マッドパーティードブキュア 239

          「何が起きたのかもわかりませんでした。ただ、気が付いた時には私は地面に倒れていて、あの女は」  そこまで言って受注担当官は言葉を切った。呼び起こした記憶の恐ろしさに押しつぶされたように固まり、じっと虚空を見つめた。  沈黙が流れる。受注担当官は何も言わない。メンチは少し考えてから、受注担当官の肩に手を置いて尋ねた。 「話せないならいいぞ」  自分らしくない言葉と行動に思えた。でも、例えばテツノだったら、同じようなことをしたと思う。だから、頭に浮かんだ行動を試してみた。それが効

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          マッドパーティードブキュア 238

          「袋? でやすか? 依頼が来て探してほしいって言われたっていう」  ズウラが素知らぬ顔で口を挟んだ。まったく何の話をしているかわか習いという口調で。 「隠さなくたっていいでしょう。あなたたちが探してるのも袋なのでしょう。おそらく、その袋ですよ。私も聞いていましたもの、あの女との話は」 「あの女の人は知らないって言っていたでやすよ」 「あんな言葉が本当だと思うのですか?」  受注担当官はズウラの目を見返して尋ねた。ズウラは首を振って答える。 「あんたの話しが本当だっていう証拠も

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          「ねえ、メンチさん」  じっと、メンチの顔を見て受注担当官は言った。 「あの『子どもたち』の中に見知った顔はありませんでしたか?」  言われてメンチは思い出す。そこまでしげしげと「子どもたち」の顔を見るタイミングはなかった。お茶をかけられたから、受注担当官に気がついただけだ。それ以外の子どもとなると……。 「よく覚えていないな」  メンチは首を振った。 「そうですか」  受注担当官は顔を曇らせて、頷いた。 「どうした?」 「いえ、おそらくですが、あの『子どもたち』の中にはメン

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          マッドパーティードブキュア 236

          「それで、話を聞こうか」  じめりとした柱にもたれかかりながら、メンチは言った。受注担当官は顔をしかめながら、床に腰を下ろした。 「どこから話せばよいですか?」 「最初からだよ。なんで、あんたはあんなところにいたんだ?」 「それはですね」  受注担当官は顔をしかめて、うつむいた。少し考えてから、顔を上げ、口を開く。 「メンチさんが顔を出さなくなってから、しばらくしたころだったと思うのですが」 「おう」 「奇妙な依頼が連盟にやってきたのです」 「どんな依頼だ?」  あまり滑らか

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           物陰から声の主が姿を現す。 「お前は」  姿を現したのは棲家でメンチにお茶をこぼしたあの男だった。メンチは改めて男の顔を見て、眉間に皺を寄せた。やはり、男の顔には見覚えがあった。 「先ほどは大変失礼いたしました。メンチさん」 「やっぱりあんたか」 「覚えておいていただけて光栄ですよ」  男、すくなくともかつて調達屋連盟の受注担当官だった男は答えた。相変わらずの平坦な微笑みだけれども、なにかぎこちなくこわばっている。 「なにがあった?」 「ここでは少し」  恐ろしそうに棲家を

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          「どうかしたでやすか?」  ズウラが怪訝そうな顔で首を傾げた。 「いや」  メンチは曖昧に答えて、違和感を探る。なにか引っかかっている。あの棲家にいた「子どもたち」のうちの一人だ。メンチが助けたあの男。人相の悪い無表情な顔が頭の片隅にちらつく。なんだろう? 記憶を辿る。  そして、たどりつく。あの嫌味な顔は確か…… 「調達屋連盟だ」 「え?」 「間違いない、調達屋連盟の受注担当だ。あの茶をこぼして、殺されそうになってたおっさん」  言葉にすると記憶が確かに色づいていく。外から

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          「イモ引いたわけじゃあ、ないでやすよ」  怯えながらもしっかりとメンチの目を見返しながら、ズウラが言う。 「それは分かってる。だから、何が狙いなのかを聞いている」  メンチは答える。別に安心させるためではない。本当にズウラが何を思ってあの場を去ったのかを知りたかったのだ。けれども、ズウラは少し表情を緩めて言葉を続けた。 「あのお姉さんはなにかを隠していやした」 「ああ、そうだな」 「あの反応を見るに」  ズウラはそこで一度言葉を区切った。記憶を反芻するように一瞬目をつむり、す

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           女性もどこか不思議そうな目でメンチを眺めている。一撃を防がれるつもりがなかったのかもしれない。女性は黙って頭をふって腰を下ろした。 「それで」  口を開いたのはメンチの方だった。何かを言われる前に、女性のゆらぎが収まる前に、切り出す。 「あたしらはここに前に住んでた人の忘れ物を取りに来たんだ。あんたらがここに来たときに袋はなかったか?」 「袋かい?」  きしり、と女性の顔がこわばった。メンチにはそのように見えた。 「生憎だけれど、まったく心当たりがないねえ。あんたの知り合い

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           ぬるい感触に目をつむり、身構える。痛みや熱さはない。目の周りの液体をぬぐい、斧を握って立ち上がる。立ち上がろうとする。その瞬間、橋の下に怒号が響いた。 「わりゃあ! なんしょんならぁ!」 「ひっ、ごめんなさい。お母様」  転倒した「子ども」が尻餅をついたまま怯えた声を出す。どん、と足を踏み鳴らして女性が立ち上がり、「子ども」に罵声を浴びせかける。 「わりゃあ、わしん客にちゃぁかけるんは、わしにちゃぁかけるんと同じとわかっとんじゃろうな!」  何を言っているのかはわからないけ

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          「ん?」  女性がメンチたちに視線を向ける。そのまなざしは鋭く、どんな違和感も動揺も、浮かべた瞬間に見破られる予感がした。 「ああ、知り合いだよ」  メンチは噓をつかずに答えることにした。嘘やごまかしは苦手だ。 「先に様子を見に行ってもらってたんだ」 「そうかい。で、あんたたちは何者なんだい?」  女性は再び問いかけた。メンチはわずかに惑う。女性はその迷いに踏み込もうと口を開く。だが、その前にメンチが言葉を発した。 「そういうあんたは誰なんだい?」  意外そうな目で、女性がメ

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