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分譲マンション修繕積立金不足の原因

日本の分譲マンションの歴史は、1960年代からスタートしています。当時、東京都渋谷区で建設された「日本住宅公団渋谷区桜ヶ丘アパートメントハウス」です。この時期は、高度経済成長期の始まりであり、都市部での人口増加と住宅需要の高まりを背景に、効率的な集合住宅の形態として分譲マンションが登場しました。

その後、1970年代に入ると、都市化が進むにつれて、より多くの人々が中心部に近い場所での生活を求めるようになり、分譲マンションは人気を博し始めました。この時期には、分譲マンションの建設技術も進化し、より高層で快適な住宅が提供されるようになりました。

1980年代から1990年代にかけては、バブル経済の影響もあり、分譲マンション市場は急速に拡大しました。この時期には、贅沢な設備やサービスを備えた高級マンションが多く建設され、分譲マンションは単なる住宅から、ステータスシンボルとしての側面も持つようになりました。しかし・・

「新築時の輝きは今や過去のもの。数年が経過した分譲マンションで、突如として浮上したのは、修繕積立金の不足問題です。その背後には、分譲マンションを取り巻く業界構造の深い問題が隠されています。」

分譲マンションの修繕積立金不足は、表面的には管理の不手際のように見えますが、実際にはデベロッパーと管理会社の利益相反短期的な利益の追求責任所在の曖昧さという、不動産業界特有の構造問題が根底にあります。デベロッパーはマンションをできるだけ高い価格で早期に売却し、利益を最大化することを目指します。この過程で、初期の修繕積立金を低く設定することが、販売促進策の一環となることがあります。このような短期的な利益追求は、長期的な物件維持の観点から見ると、大きな矛盾をはらんでいます。

また、デベロッパーが販売した後の管理は、別の専門の管理会社に委ねられますが、この移行過程での情報共有が不十分であることや、建築時の設計・施工の問題が後になってから明らかになった際の責任所在が不明確になるケースも少なくありません。これらの問題は、修繕積立金不足という形で居住者にしわ寄せが来ることになります。

一般的な管理費と修繕積立金について

管理費

管理費は、マンションの日常的な運営管理に必要な費用であり、共用部分の清掃、電気代、水道代、管理人の人件費などをカバーします。2023年の時点での日本の都市部における管理費の平均的な平米単価(1平方メートルあたり)は、おおよそ200円から300円程度が一般的です。ただし、高級マンションや特別なサービスを提供するマンションでは、この数値を上回ることもあります。

修繕積立金

修繕積立金は、マンションの長期的な大規模修繕や更新に必要な費用を積み立てるためのものです。この積立金の平均的な平米単価は、おおよそ400円から700円程度であることが多いです。築年数が浅いマンションでは、当初は低めに設定されていることが一般的ですが、建物の老朽化に伴い、必要に応じて増額されることがあります。

その他の修繕積立金不足の原因は

  1. 予想より高い修繕費用:建物の老朽化が予想以上に進んでいたり、特定の修繕が必要となった場合、計画されていた予算を超えることがあります。また、建材の価格上昇や労働コストの増加も修繕費用を押し上げる要因となり得ます。

  2. 不十分な積立計画:積立金の計画が当初から不十分だった場合、必要な資金が確保できないことがあります。適切な積立金の額を見積もるためには、将来の修繕に必要なコストを正確に予測する必要がありますが、この予測が甘いと資金不足に陥ります。

  3. 大規模修繕の発生:マンションでは定期的に大規模な修繕が必要になることがありますが、これらの作業は非常に高額になることが多いです。屋根や外壁の塗り替え、エレベーターの更新、防水工事などがこれに該当し、予想外の大規模修繕が必要となると、積立金が不足する原因となります。

  4. 積立金の使途拡大:本来の修繕以外にも、積立金を使用するケースが出てくることがあります。例えば、共用部分の改善や設備のグレードアップなど、居住者のニーズに応じた使途が増えると、修繕積立金が圧迫される可能性があります。

  5. 積立金の徴収漏れや滞納:管理組合による徴収の漏れや、居住者の滞納が続くと、計画通りの積立金が集まらない場合があります。このような金銭的な問題も、積立金不足の一因となります。


必要に応じた年間使用日数からの柔軟なオーナーシップを実現する「共有所有」が解決策の鍵になる。

これらの構造的問題に対処するための一つの解決策が、「共有所有」の導入です。物件を複数のオーナーが時間単位で共有する所有権の形態であり、特に休暇用不動産市場で人気を集めていますが、分譲マンションの管理においても有効な運用モデルとなり得ます。このモデルでは、各オーナーが使用日数に応じてコストを負担するため、管理会社は安定した運営資金を確保でき、修繕積立金の不足リスクを軽減できます。さらに、オーナーは自身の投資に見合った使用価値を得られるため、より公平で透明性の高い管理が実現可能です。

「共有所有の導入により、分譲マンションの管理は、利益相反の解消、短期的な利益追求からの脱却、そして責任所在の明確化という、業界の根深い問題に対する有効な解決策を提供します。これは、長期的に安定したマンション運営の実現に向けた一歩となるでしょう。」