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生きづらい人にこそ冬の瀬戸内をオススメする理由①尾道

私は、会社サイズに作られた既製服だった。
ほつれも1寸の違いも許されない、大量生産の既製服。

分からなくなっていた。
自分が何を好み、何を求め、どんな人間なのか。
ずっと自分を閉じ込めている事すら気づけなかった。
いや、気づかないフリをしていた。

そうして身体は、ついに言うことを聞かなくなった。
身体が教えてくれたんだ。

おだやかな非日常にいこう。
そうしてひとり、広島・尾道駅に降り立った。

尾道は、自分のテンポで歩ける町だ。
立ち止まっても、走ってみても、後ずさりしても、自由。
そういえば自由には責任が伴うけど
旅って、人生って、そういうことだったよな。

モデルコースに沿うだけなんて、つまらない。
せっかく既製服も戦闘服も脱いだんだ。
迷いたくなる坂道、むしろ自ら迷いに行く。

華やかでも賑やかでもなく
生活がそこに根付いている町。

私にとって非日常でも、ここは誰かの日常。
観光名所もいいけど
旅先で暮らす誰かの生活にちょこっとお邪魔する、
そんな感覚の旅がいい。

観光客が少ない冬の尾道は、限りなく自由だ。
人目を気にする必要もない。
行列を心配する必要もない。

自分を見つめ直したいとき
疲れてしまったとき
繊細さん(HSP)にも
一人旅初心者にも
閑散期の瀬戸内は、ふわり包んでくれるはず。

坂道に疲れたら、振り返って町を見下ろしたらいい。
疲れが飛んでくから。

特に何もしない。
海辺のベンチに座っているだけでも、旅。
瀬戸内特有の温暖な気候と凪いだ海、
柔らかな空気感に、完全とろけた。

ちゃんと夕陽を見たのは何年ぶり?
飽きるほどいつまでも眺めていた。
あまりにも美しくて「明日は海の向こう側へ渡る」と決めた。

風とか空気とか夕陽とか
全身で瀬戸内を感じ
丸裸で旅してる心地良さ。

「既製服」だった時とは違い
自分の意思で歩いてる感覚が、確かにあった。

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