見出し画像

第47回イベントレポート『ナラ枯れ対策Vol.2。〝罪を憎んでムシを憎まず〟』

2022年9月13日、晴れ。
前回に引き続き、ナラ枯れ対策を施しました。

前回から二週間ちょっとですが、遠目にも葉っぱが茶色くなった木が増えているのが分かります。

朝のチェックイン風景

今回は樹木の病虫害に詳しく、長年に渡り公園や庭園、街路樹や緑地の維持管理等に携わって来た方が、ナラ枯れ対策の講師として応援とアドバイスに駆けつけてくれました。
初参加の方お一人を歓迎し、総勢10人で森に入ります。

まずはナラ枯れについて学ぶ

枯れ始めているコナラの下で。

「実は私は虫が大の苦手なんです。苦手だからこそ、どうしたら上手く対処出来るか、若い頃から必死で勉強して来ました」

講師の先生の、そんな言葉から勉強会がスタートしました。

即席の野外教室

「あらゆる生きものたちは、地球上で必ず何かの役割を担って暮らしています。だからどうかカシノナガキクイムシ(以下カシナガ。ナラ枯れ病の原因と言われている)だけを悪者にせずに、周り全体も観て欲しいと思います」

虫は苦手とは言いつつ、生きものたちへの深い愛情を感じさせる先生の分かりやすい説明に、グングン引き込まれてしまいます。

先生の引率で、森の中を観察しながら周りました。

カシナガの穿入口があっても、全く枯れていないコナラの木も多くありました。
自らの種を存続させるため、子どもの糧となるナラの木を決して全滅させないということでしょうか。カシナガのアタックを受けて枯死するのは、およそ4割くらいなのだそうです。
ここ半世紀の間に夥しい数の種を絶滅させて来た人類という種は、虫たちから学ぶことが多いのではないかと思いました。

同じようなコナラの木でも、カシナガのアタックを受けている木と、全く穿入口がない木があります。

穿入口のある木でも、樹上の葉の枯れ方に違いがあります。樹木の内部で、ナラ菌と闘い、せめぎ合っているのでしょうか。ついついコナラを応援してしまう気持ちは、人間の傲慢な思い上がりでしょうか。

カシナガは自分が入れそうな木を見つけると、幹の周囲を一周して、かかった時間で太さを測るのだそうです。

「カシナガは水平方向にしか穴を掘り進められないんです。だから、より多くの子孫を残すために太い木を選ぶんです」

とのこと。直径×3.14すら覚えられなかった私より、よっぽど賢い!
それに若くてまだ細い木は元気なので、カシナガは入りづらいのだそうです。自然界の絶妙なバランスの取り方に、畏怖の念を感じました。

駆除、防除、予防、、そうした対策の一長一短と、ナラ枯れに関する基礎知識を一通り学んだところで、この森ならではの手当てを始めることにしました。

とにかく森全体を元気にする!、結局は、ずっと今まで続けて来た、ホタルの会の活動そのものの造作です。

コナラの木の樹冠の下の地面に、皆んなで手分けして〝点穴〟を広範囲に造作します。

※ 熱中症対策のため、希望者はヘルメットを外し、周囲に注意し声を掛け合いながら、安全最優先で作業をしております。

〝森の鍼灸師〟こと、みどりんの本領発揮!

最近、ホタルの会には、鍼灸師の方々が何故か続々と集まって来ております。
森の見えない土の中と、人間の身体には、驚く程の共通点があるのだそうです。
それと、これは個人的な直感ですが、森を元気にするためにはインド医学の考え方が一番役に立つのではないかと思います。
このことについては、いつか詳しくレポートしてみたいと思ってます。

点穴の造作には、くん炭が重宝します。

今日は新たな試みにもチャレンジしました。

カシナガのアタックを受けているコナラの木の周りに、樹冠の形状に合わせて溝を掘っていきます。

唐鍬が重宝します。
鍬は、トラバースの小道をつくったり、道の脇に溝を掘る時にも便利です。

手分けして二箇所、コナラの周囲に溝を掘りました。

先生も自ら大奮闘。

掘った溝に、炭と枝葉を入れていきます。

溝の中にも、点々とドライバーを指します。

落ち葉を被せます。

樹木活力剤として、複合発酵酵素液を準備します。

200〜300倍に稀釈して使いました。

溝に沿って散布します。

そして最後の仕上げに、

「コナラさん、頑張ってねっ!♡」
幹に手を当て声をかけて、来春の新緑の芽吹きを願いました。

ランチタイム♪

憩いと団欒のひと時を過ごしました。

食後の一服。

今日の茶菓子は〝白松がモナカ〟、ちょうど昨日、宮城の田舎から従姉妹が手土産に持って来てくれたのを分け合っていただきました♫

夏の名残りを惜しんでアイス抹茶も乙な味。

午後の作業、さらに奥へ

午前中かなり頑張ったので、疲れた方は無理せず森でのんびり過ごしてくださいと言ったものの、

なんと全員が、さらに奥まで手を入れてくれました。

皆んなその場で、本日の集合写真です。

一日のふりかえり

作業を終えて一日を振り返り、今日の感想を分かち合いました。

参加された方々の声

♡ YUKIくん
「二か月ぶりで来ました。沢の近くに行って谷間に入って作業する時と尾根に近い所と雰囲気が違うなと思いました。斜面がキツかったですが、ツタが絡まってて気持ち悪さがあったので「皆んなでやろうよ」って言って最後までやれたのがスゴい良かったです。役割分担もしっかりできて、ボクが大きい力作業をやって、その後みんなが炭を入れたり最後の仕上げをやってくれたりして、自分の力を一番発揮できたと思い楽しかったです。
ナラ枯れの話は、今までは聞いたことがあるって程度だったので、今日はじっくり聞けて良かったです。森の関係者がナラ枯れについてヤバイヤバイとざわざわしてるのは何となく知ってたんですけど、こんなに対策が何もないものだというのは初めて知って、面白いなと思いました。6割は生き残ると聞いたので、意外と(ナラ枯れが)間引いているのかなという感覚を持ちました。ナラ枯れを止めようというよりは、何故ナラ枯れしちゃうのか?とか、足掛かりと一緒で、放っとくとどんどん削れていくけど、ボクらがちょこっとやると、そこに対してきっかけが出来て、自然がキレイになる。ナラ枯れも、止めるっていうよりも何故枯れるんだろうというのを観ながら、そのナラ枯れに合った環境をつくってくのが良いんじゃないか、と何の対策も無いと聞いたからこそ思いました。生命の循環の中の一つみたいな感覚を受けました」

♡ るなちゃん
「今日は初めての参加でしたが、皆さんに優しくして頂いて有難うございました。山を通じて皆さんとコミュニケーションを取れたり、美味しいお菓子もらったり抹茶もらったり。最初うっそうとしてた所が、ちょっと手が入るだけで風が気持ちよく通ったりするだとか、そんなに広い区画を頑張ったわけじゃないけどスゴい綺麗になったなっていう実感があったので、それが良かったです。このあと季節が涼しくなってきたら、作業がしやすくなるので、楽しみだなと思いました」

♡ みどりん
「今日は久々のしがらみづくりが楽しかった。最近、自分の身体の使い方をいろいろ勉強してて、それをやり始めて初めての森だったので、なんか、立ち方とか地味に立ちやすい、無理がかからないということなんだけど、より意識してやって、疲れ方が全然違うというか、やりだすと目の前の作業に没頭して力でやっちゃうのを、ドライバーを刺すのでも体勢を変えて体重を乗せるようにするとスルスルーッっと入ったりして面白かった。自分のセルフケアで〝緩める〟ってことを心掛けてるんで、股関節が開くようになって、なんかイイ感じだなと思った。
ナラ枯れは、対策がないというのが「へぇーっ」って思いました。個人的な感想になっちゃうんですけど、今は高齢化社会で、そういう更年期以降の女性の活躍の人生が長い。その人たち向けに効果的なケアを提案し始めているんですけど、ナラ枯れの講義とか聴いてて、誰も体験したことのない時代を生きているので、昔は、生理が終わったら皆すぐ死んじゃう、生理がある間は子どもをずっと産んでるみたいな、、だから今ほど生理にまつわるトラブルもなかった。新しい時代を皆んなで生きてて、だからこそのケアだったり、だからこその人生の使い方というのを皆んなで考えていく、そういう時代なんだなと感じていて、だから〝こうしたらいい〟がある訳ではない。提案はするけど、つくっていくのは一人ひとり。自分で自分の身体と向き合ったり、やりたいことをどうしたら上手にできるかとか、負担なくできるかを考えていく時代なんだなと感じてて、ナラ枯れも、対策がないっていうのは同じなのかも知れないと思って、そうやって色んな、公害とか、昔スギを植えたとか、色んな事があって今のこの自然の状態がある訳で、そういうのは誰も経験したことないわけだから、どっかに正解があるわけではなく、その場その場で縁のある人が、何か感じながら対策していく、ということなのかなと。私たちの身体と、社会の間で起こっていることと、自然を手入れしていくってことはヤッパリ同じなんだなと思いました」

♡ あっちゃん
「癒されたい、と思って来たんですけど、土が乾燥してるからズルズル滑っちゃったりして、もっと風を通さなきゃ!と思って、今日は沢には行かなかったけど、下に沢があることを感じながら作業できました」

♡ ちーちゃん
「久しぶりに参加したんですけど、やっぱり森は凄く癒されて、皆さんと作業するっていうのが私にとって元気の力になりました。ナラ枯れのことも今日初めて詳しく教えていただいて、初めはすごく心配な気持ちでいっぱいだったんですけど、実は長期的なことを考えると、それも悪くはないなというふうに思えたのが今日の収穫だったと思います。また参加させてください。あと、お抹茶美味しかったです、有難うございました!」

♡ きょうちゃん
「ずっと水辺の方をやってて、山だけをしたっていうのが初めてだったんですけど、逆に新鮮で、新しい感覚で出来て楽しかったです。ナラ枯れの話も結局、虫が来て、ナラ菌を付けてしまって、木自体が水の流れを止めてしまうっていう話が、水と空気の土壌改良と同じことなんだって思って、ナラ枯れは奈良時代からずっとあったけど、最近になって目立つから問題視されてるだけであって、自然のサイクルなんだって言われれば、それを土を改善することによって促進させてあげるんだったらスゴい良いことなんじゃないかなって納得できて、楽しい作業ができました」

♡ 参ちゃん
「ここでもナラ枯れが見られるようになったんだってことが、最初聞いた時にはすごくビックリして、大問題なんだろうと思って今日その現場を見ることになるんだと思ってドキドキしながら来たんですけれども、色んな話を聞いて、率直に言うと「やっぱり自然は信頼できる」と思って安心しました。キノコの菌を持った虫が、若い木じゃなくて大っきい木を分かって、そこに入って、その木は命を失うってことになるんですけれども、そこにある木を決して全滅にはさせなくって、ちゃんと淘汰されていく自然の流れがあって、でも人間が今までマキとして使ってたから問題にならなかったり、巨木にならなかったりとか、ネットで調べてみたけど、薬剤を使ったり処分したり、そこまでしなくちゃいけないもんなのかなというのが、今日の話を聞いたら、あくまで倒木とかの危険がある街での処方であって、それは仕方なくそういう方法を取らざるを得ないのかも知れないけど、山はもっと自然になっていいんだなと思って、本当だったらこの木も淘汰されてもいいのかも知れないけど、元気に育っているということは、この木は未だ虫が、淘汰しなくていいんだなと本能で解って選んでいるのだろうから、自然界の中にある〝分解していく〟という仕組みに乗っかる木と乗っからない木があって、それは土中の問題もそこにあるんだろうから、そこに私たちがちょっと立ち入ることが出来て、また来年その結果として変化が見られるんだったら、それはまた楽しみで、今日参加できて良かったです」

♡ がんちゃん
「感想と言うより、久々にしげちゃんと会えて嬉しかった時のことを思いだしながら森の造作に励ませていただきました!
高校の先輩が「カシナガ対策に!」と、恩方の森に駆けつけてくれて、しげちゃんとその仲間達と一緒に森の活性に生かす「しがらみ」や「足掛かり」の作成をしてくださったのも嬉しかったです。
以前、しげちゃんと先輩と一緒に仕事をしていたことを懐かしく思い、この恩方の森に呼び寄せていただいたことに感謝しています。
後、久しぶりに猟師のYUKIくんにも会えて嬉しかったです!」

♡ こんちゃん
「本日はありがとうございました。 良い有給消化方法が見つかりました。 またよろしくおねがいします」

主催者ふりかえり

「体長わずか5mm程の小さな昆虫が、子孫を残すために身につけた巧妙な戦略を知り、驚きを超えて尊敬の想いすら抱きました。背中に胞子貯蔵器官を備え、ナラ菌や酵母菌を蓄えて樹の中に穿入し、菌の力で大木を枯死させ、酵母菌を増殖させて子どもたちの餌にする、、。子どもの頃にハキリアリという巣の中でキノコを栽培する昆虫をテレビで初めて見た時以来のワクワクするような生態です。ちょっとオカルト的かも知れませんが、私にはナラ菌の方が、カシナガを利用して自分の種を広げているのではないかとも思えます。それは、森という生きものが、自らを健全な状態に戻すための、壮大な自然の営みの一部なのではないかと、、。
人が自然の一部として、分かち合って来た暮らしの中では、ナラタケは食用として有難い自然の恵みでもありました。そんなことに想いを馳せると、〝景観に悪影響を与える〟とか〝材として使えなくなる〟などの理由で被害被害と騒ぎ、枯れれば危険だからと伐採して焼却処分することに力を費やしたり、他の生きものたちへの影響を顧みずに薬剤を使ったり、心を痛めることなく何万匹何十万匹も捕まえて殺したりという対策を取ることに対して、どうしても私は躊躇する気持ちを禁じざるを得ません。自然と共生して来た、昔ながらの暮らしの中にこそ、本当の対策の方法を見つけるヒントがあるように思いました。
今回は10人で、約20本のコナラの木の周りに手を入れることが出来ましたが、未だまだ手つかずの木があります。枯れ沢の復活に向けて、落葉広葉樹の高木は一本でも多く生き延びて欲しいと思い、沢の手入れとも平行してナラ枯れ対策を続けていきたいと改めて思いました」

              photo by YUKIくん

参加していただいた皆さま、本当に一日お楽しみ様でした。
ホタルさん、そして活動に興味を持たれた方は、是非一度、森に来てくださいネ!!

今後の活動予定

今年7月から来年6月までは、ホタルの会の新年度になります。
年度内で最初に参加する際に、年会費(または単日参加日)をお納め下さいますよう、お願い致します。
◎ 現時点で決まっている今後の予定は、

9/24(土)、、ナラ枯れ対策つづき他
10/2(日) 、、ナラ枯れ対策つづき他
10/18(火)
11/11(金) 
11/20(日) 
12/3(土)※10:00~15:30
12/21(水)※10:00~15:30
です。
※冬の時期は日が短いため、通常より終了時間を1時間繰り上げて実施します。

年明け以降の予定は決まり次第お伝えしますが、ご希望する日時・曜日等ございましたら、どうぞ気軽にご連絡ください。
一人でも多くの方のご参加を心よりお待ちしております。

協力感謝

『枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会』は、任意団体です。

公益社団法人 国土緑化推進機構の支援を受け、緑の募金事業として活動して参ります。

さらに、2021年4月からは一般財団法人セブンーイレブン記念財団様の〝環境市民活動助成〟の助成を受け、活動を推進していくことになりました。

ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?