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記事一覧
「あかりの燈るハロー」第一話
プロローグ ゴウン…ガロン…ギ…ギギ…ギ。
ゴウン…ガロン…ギ…ギギ…ギィィ……。
やがて、観覧車は完全にその動きをとめ、遊園地にともされたはなやかな電飾も消えると、あたりを静けさが包みこんでいく。
耳をすませば、かすかに聞こえる波の音だけ。
あたしは歌う。
♪ ハウマッチウッド・ウッドアチャック・イファウッドチャック・クッドチャックウッド?
♪ ハウマッチウッド・ウッドアチャッ
スーサイド・ツアー(第1話 闇サイトへ、ようこそ)
あらすじ
自殺願望のある者達が、闇サイトを通じて南海の孤島に集まる事に。闇サイトの主催者は、孤島で参加者全員が美食を楽しんだ後1週間後に苦しまない方法での死を約束。
にも関わらず、なぜかその前に1人ずつ殺されてゆく……。
『当サイトでは、30歳以下の自死志願者を募集しています。先着8名で打ち切りますので、お早めにご応募ください』
スマホをいじっていた時に、そんな文章が倉橋翠(くらはし
緑玉で君を想い眠る①
純白のウエディングドレスが、見る見るうちに真っ赤に染まっていく。
溢れ出す鮮血は止まるところを知らず、傷口を押さえる手を擦り抜けていく。
「叶羽……!」
彼の手が、私の頬に触れる。私はその手を握り返す。
同じように彼の名前を呼びたいのに、唇が震えて言葉が出てこない。
ようやく周囲のゲスト達も現実の状況に頭が追い付いたのか、ざわめきと悲鳴が入り混じり、場は混乱に満ちていく。
西洋建
毒の反哺 第1話 田嶋美月
2018年6月2日㈯、親友の由奈が死んだ――。
私は田嶋美月、高校3年生。親友の斎藤由奈とは、同じ高校に入学して以来の親友だった。
とろくて、人と話すのが苦手で地味な私と、美人で活発で華のある由奈。対照的な二人が親友であることに、まわりはいつも不思議がった。私にとって、由奈は「憧れ」の存在だった。
そんな由奈が廃墟ビルから転落死した。その日は土曜日で、雨が降っていた。死亡推定時刻は、20
藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第1話】
序
──死んだと思ったら、産まれていた。
ちょっと何を言っているのか分からないかもしれないが、あいにくと脩子にだって分かってはいなかった。
何せ、大学に向かう途上でトラックにはねられたと思ったら、羊水やら血にまみれて、産婆に抱き上げられていたのである。全くもって、意味が分からない。
「いや、何故に……?」
そう声に出したはずの言葉は、残念ながら言葉の形をしていなかった。
ただ
骸骨探偵は死の理由を求む 第1話
大昔、神様は世界を天と地と冥の3つに分けました。
「冥」は、死者の国。
「地」で死んだ人間の魂を洗って、また「地」へと送り出す大事な場所です。
神様は、冥を息子の兄弟神に治めさせることにしました。
******
目覚めると、私は広大な川岸にぽつんと一人で立っていた。
「ここ……どこ……?」
慌てて周りを見る。
足元はホームセンターで売られているような、異常に真っ白な砂利が敷き詰められて
【連載小説】『平凡な少女のありふれた死に方』第1話
【あらすじ】
ある日、主人公・西村景は部室で白坂奈衣が死んでいるのを発見した。
文芸部と演劇部が合併してできたという文演部では、『本作り』と呼ばれる特殊な作品作りが行われていた。
自分たちで書いたシナリオを、自分たちで演じる。しかし、それは文芸とも演劇とも違い、出来上がったシナリオを演じるのではなく、演じた結果生まれたシナリオこそが作品になるというものだった。
白坂はいつも自分が死ぬシナリ
猫のいる殺人 第1話
あらすじ アパートの一室で若い女性が殺された。事件に挑むのは、捜査一課の新人刑事・明城芽依。バディの大越研吾刑事とともに、半密室の殺人事件解決のため、奔走する。
保護猫カフェ、猫ボランティア、謎の男に第二の事件。猫を中心とした不可思議な事件の黒幕とその意図とは。
黒猫の金の瞳だけが、すべてを見ていた。
本編第1話
その人物は肩で息をしていた。針のような静寂が身を包む。
何故こんなことに
レインメーカー 第一話
本編
満点の星に彩られた穏やかな夜。宿泊客たちはコテージの外に出て、焚火を囲んで談笑していた。中にはハンモックに横たわり、贅沢に星空のスクリーンを満喫している者もいる。
百色島という名の小さな無人島一つを丸ごと宿泊施設とした七軒のコテージは、完全会員制の最高グレードで、管理者不在でも最先端のIOT家電がコテージでの生活を全面的にサポートしてくれる。用意された高級食材の数々はもちろん使い放題
コイン・チョコレート・トス_第1話
🪙 プロローグy=-3x²の放物線を描きながら、宙を舞うコインチョコ。
玄関の白い天井の少し下の位置を最高到達点とし、コインチョコは幸子の手の平に落ちてきた。幸子はそれを両手で優しくキャッチする。
幸子はコインチョコが左手に落ちてきた瞬間、上から右手をそっと添える。コインチョコがどちらかを向いているかが見えないように静かに隠す。
表か、裏か。
全ての決断は、コインチョコに委ねられた。