星月渉

創作大賞2023 光文社編集部賞、テレビ東京映像化賞を受賞。 『三毛猫カフェトリコロー…

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創作大賞2023 光文社編集部賞、テレビ東京映像化賞を受賞。 『三毛猫カフェトリコロール』三交社スカイハイ文庫より発売中。『ヴンダーカンマー』にて竹書房最恐小説大賞受賞

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    ヴンダーカンマー WEBコミックガンマぷらす連載版 第一話

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    三毛猫カフェ トリコロール (SKYHIGH文庫)

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【読書日記】『ナースの卯月に視えるもの』

創作大賞2023別冊文藝春秋賞受賞作、秋谷りんこさんの 『ナースの卯月に視えるもの』が5月8日(水)に発売されました。 noteに掲載されている作品はもちろん受賞発表時に…

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第二章 二村瞳  家の周りにはカメラやマイクを持ったマスコミの人が詰めかけていた。いかにもそれっぽいワゴン車が何台も家の周辺に連なって停まっている。私が生まれた…

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「断罪パラドックス」   第2話

 あの日、ふたりで行った図書館で私はお気に入りの本の続編を見つけて舞い上がっていました。当時とても人気のあった作品で、なかなか借りられなかったので、とても嬉しか…

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「断罪パラドックス」   第1話

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【短編小説】『落日』

 夕日を見ると思い出したくないことを思い出してしまう。家に帰らなければいけない、あの苦痛を思い出す。私の家はあの町で有名なゴミ屋敷だった。ゴミ屋敷になったのは小…

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 教室のお昼休み時間の光景はずっと変わらない。私はいつも小学生の時からの親友のアイカとご飯を食べて話をする。  話をするって言っても、ほとんど、アイカがずっと喋…

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【完結】「私の死体を探してください。」   第1話

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────森林麻美のオフィシャルブログ
            脳内ストリップ──────

 こんなことは信じられないと言われてしまうかもしれませんが、私にとってこの世における最大の謎は、ギザの大ピラミッドやバビロンの空中庭園のように人々が口々に「謎だ」と言うようなものではありません。

 私にとっての最大の謎は人の「感情」なのです。いつも、捕らえることのできるはずのない、空気をつかむような心地で

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「断罪パラドックス」   第12話

「断罪パラドックス」   第12話

第三章   三国慈愛杏登

 ガキのころ、テレビのCMに出てきた大きな一軒家を見た時、どんないいことをすればこんな家に住めるのだろうと思った。うちは古い市営住宅で、そのうち取り壊されて建て替えられるだろうと、言われていたけど、いつまでたっても取り壊されることはなかった。あんまりにもぼろだから住人は減っていく一方だった。住人が減っていくと治安はどうしても悪くなる。盗難とか車上荒しはしょっちゅうだった

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「断罪パラドックス」   第11話

「断罪パラドックス」   第11話

「もう、また庭に週刊誌が投げ込まれたわ。ねえ、瞳ちゃん、一条くんとはなんともなかったのよねえ? お付き合いなんかしてなかったって言うべきよ」

 マスコミだけじゃなくご近所のどなたかからの嫌がらせまではじまって、お母さんのノイローゼは悪化の一途をたどっていたけど、私は沈黙を保っていた。でも今のお母さんの発言でこの人は本当に私を守るつもりがないんだなと晴れ晴れした気持ちになった。

――こんな人のた

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「断罪パラドックス」   第10話

「断罪パラドックス」   第10話

 なんだか段々と雲行きが怪しくなりはじめたのが一条くんに理科室に呼び出された時からだった。いつも一条くんは自分の家に私を呼び出していた。あの大きな二世帯住宅は右側に亡くなった一条君の祖父母が住んでいたらしい。そして、左側部分が一条くんと一条くんのお母さんが住んでいるということだったけれど、いつ行ってもあのお母さんの気配はしなかった。そして、何度もあの家に行っているうちにキッチンやリビングに生活感が

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「断罪パラドックス」   第9話

「断罪パラドックス」   第9話

 一条くんの家は高台にある一軒家で大きな二世帯住宅だった。その大きな家の隣にあるクリニックの看板を見た時、ああ、地元でも評判のいい産婦人科の個人病院が一条くんのおうちなんだとようやく気づいた。一条くんが五分くらいで考えた筋書きが通用するのか私は不安でいっぱいだった。私が屋上から飛び降りようとしたその日は水曜日で看板から得た情報では休診日だったけれど、一条くんのお母さんは入院患者の検診だとかで、自宅

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「断罪パラドックス」   第8話

「断罪パラドックス」   第8話

 私と一条くんは同じクラスだったけど、それまで話したこともなかった。一条くんは優等生というよりは人当たりのいい、イケメンで女子からかなり人気があった。でも私は、誰とでもそつなく会話ができるのは、ちょっと軽薄そうだなと思っていたし、どこか油断のならないかんじのする人だとも思っていた。一条くんにはどこか羊の皮を被ったオオカミのような印象を受けていた。

 その時の私は自分のことで頭がいっぱいだった。夏

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「断罪パラドックス」   第7話

「断罪パラドックス」   第7話

 SNSで誰かと話すのをやめて、私は本を読んだり、友達と話をしたりするのを楽しんだ。ショウさんに会ったことでなにか憑きものみたいなのが落ちてしまった。確かめたかったことが全部確かめてしまったのだと思う。家の中では相変わらずお母さんに「汚らわしい」「嫌らしい」と言われ続けたけれど、前ほどお母さんの言葉は刺さらなくなった。もしかするとお母さんが本当に怖いのは……。お母さんが本当に怖がっているものがなん

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「断罪パラドックス」   第6話

「断罪パラドックス」   第6話

 私は中学校を卒業して、桜山高校へ入学した。受験にはお母さんがとても協力してくれたと思う。夜食を作ってくれたり、申し込みたい塾の講習や模試は全部お母さんがお金を出してくれたりした。私の受験にはそんなに興味がなさそうだったお父さんも、入試間近になったある日、太宰府天満宮のお守りをくれた。

 合格できてホッとした。女の人ひとりでも一生、生きていられる職業につくんだという意気込みで胸はいっぱいだった。

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【読書日記】『ナースの卯月に視えるもの』

【読書日記】『ナースの卯月に視えるもの』

創作大賞2023別冊文藝春秋賞受賞作、秋谷りんこさんの
『ナースの卯月に視えるもの』が5月8日(水)に発売されました。

noteに掲載されている作品はもちろん受賞発表時に読んでいるのですが、改稿された書籍版を早速読了したので感想を。

舞台は長期療養型病棟。主人公である看護師の卯月咲笑の職場です。noteの原作の第一話を読んだ瞬間に、ああこの著者の方は医療従事者か、もしくはそのご経験がある方なの

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「断罪パラドックス」   第5話

「断罪パラドックス」   第5話

 自分がしていたことがなんだったのか分かるようになるまでは時間がかかった。けれど、なんでいけないのか分からない方がまだましだったかもしれない。なんとなく分かるようになってからは、なおさら自分が汚らわしいものに思えたからだ。

 そして、お母さんはテレビでドラマや映画のラブシーンに差しかかると決まって私にこう言うようになっていた。

「あら、汚らわしい。でも、瞳ちゃん、こういうの好きなんでしょう?」

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「断罪パラドックス」   第4話

「断罪パラドックス」   第4話

第二章 二村瞳

 家の周りにはカメラやマイクを持ったマスコミの人が詰めかけていた。いかにもそれっぽいワゴン車が何台も家の周辺に連なって停まっている。私が生まれたころにできたというかつての新興住宅地はドールズハウスをきっちり並べた美しい箱庭のようで、平穏な未来の象徴のようだったと思う。でもそれは私が勝手にそう思っていただけで、実際の中身は村社会そのものだ。この美しい箱庭では少しでも変わったことがあ

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「断罪パラドックス」   第3話

「断罪パラドックス」   第3話

 二日前、久はこの桜山高校の本館の屋上から飛び下りて亡くなりました。新聞には「いじめを苦に自殺か?」と大きな見出しがついておりましたが、いじめがあったかどうかはまだ分かりません。

 でも、親馬鹿かもしれませんが、久はいじめに遭うようなキャラクター像からは、かなりかけ離れていると思います。わが子ながらなかなか整った顔立ちをしておりましたし、明るく、成績も優秀でスポーツも得意でした。中学生のころも学

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「断罪パラドックス」   第2話

「断罪パラドックス」   第2話

 あの日、ふたりで行った図書館で私はお気に入りの本の続編を見つけて舞い上がっていました。当時とても人気のあった作品で、なかなか借りられなかったので、とても嬉しかったのです。そして、よせばいいのに、私はその本を数ページ読んでしまいました。

「お姉ちゃん! まだ?」

 もう帰るつもりでいた美穂からそう言われるのは当然でした。

「ごめん。もうちょっとだけ。きりのいいところまで読みたい」

「もう。

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「断罪パラドックス」   第1話

「断罪パラドックス」   第1話

第一章   一条美紀

 お集まりいただきましたみなさまには、本日貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます。通常でしたら、土曜日の午後、この体育館では部活動が行われていたでしょうね。昨年度はバスケットボール部が県大会で準優勝だったとか。私もPTA会長になりちょくちょく学校に来るものですから時折体育館を覗きました。若人が真剣にスポーツに取り組む姿は本当に美しいものですね。

 校舎も三年前に建

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【短編小説】『落日』

【短編小説】『落日』

 夕日を見ると思い出したくないことを思い出してしまう。家に帰らなければいけない、あの苦痛を思い出す。私の家はあの町で有名なゴミ屋敷だった。ゴミ屋敷になったのは小学2年生の時、祖母が死んでからだ。家は見る間にゴミ屋敷になり、その主である母と二人きりの地獄のような日々がはじまった。

 おそらく母は家からほとんど出なかった。食糧は週に一度祖母が申し込んでいた宅配が毎回同じものを持ってきていた。少なくと

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【ショートショート】『アイアンメイデン同盟』

【ショートショート】『アイアンメイデン同盟』

 教室のお昼休み時間の光景はずっと変わらない。私はいつも小学生の時からの親友のアイカとご飯を食べて話をする。

 話をするって言っても、ほとんど、アイカがずっと喋ってるのに相槌を打つだけなんだけど。

「私、もう絶対結婚するまで処女でいる! ねえ、メイコもその方がいい思うでしょ? メイコもそうしたら?」

 また、はじまった。アイカの「私、こうする!」

 高校に入学してからの最初の「こうする!」

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