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Tagebuch in Münster 4

2週間ぶりの更新。
引きこもってしまった日が多いから、抜粋していきます。
ゆうてこっちにきて1ヶ月が経ちました。
早いです。あっという間です。
今回はコンパクトに。必然的に。


8月24日 LEG EINFACH AUF!

ゆったりとした8月。
2本目。
会場は Wolfgang Borchert Theater。
ここも駅から歩いていける距離にある。

奥の建物が劇場が入っている建物

受付は入口のすぐ右手側。
ここでも受付の人の優しさに助けられた。
とてもわかりやすいドイツ語で、かつゆっくり喋ってくれたのでなんとか英語を使わずにやりとりができた。
まあ僕は文章ではなく単語を並べただけなのですが、ね。

さて、今回見た作品は
"LEG EINFACH AUF!"
詐欺師にお金を掠め取られてしまう老人のお話。
どうやら警察と協力して作った作品とのこと。
タイアップ作品?とでもいえばよいのか。
高齢者への注意喚起を兼ねた作品なんだとか。

内容は至ってシンプル。
孫と名乗る人物から電話がかかってくる。
急を要するとのことで、多額のお金が必要だ、と。

"Opa! Opa!"(おじいちゃんの意)

開口一番に叫ばられるこの感じは、日本の「オレオレ詐欺」と手法が一緒だった。
慌てた様子から、被害者は確認するように孫の名前を出してしまう。

しかし、ここからは時間がかかる。何度か電話がかかってくる。
おじいさんも流石に途中から怪しんでいく。
さらに仲間が警察?(ここら辺は単語が聞き取れなかった)を装い、おじいちゃんに協力するふりをして、騙されたふりをするように仕向けます。
そして、犯人を捕まえるために、お金を警察が預かる、と言い出すわけですが、まんまと盗られてしまう、というお話。(たぶん)

普通ならここで終わりそうですが、これは啓蒙的な作品。
どうやったら対処できたのかを、舞台の時間を巻き戻し、もう一度場面をやり直して、観客にレクチャーしていきます。ここまでくると、然ながら学校の交通安全教室のよう。ちょっと調子が狂います。無事正しい対処方法で、犯人グループを撃退!というところで、幕が降ります。

きちんとデザインされているチケット

会場には作品に関係した警察署の人たち?(ちょっとわからなかった)
がきていて、上演が終わるとすぐにアフターディスカッション、というよりかはなんだろうな、教室のようなものが開かれていた。流れるように、休憩とかなしに。終わってすぐに観客から質問が飛ぶ、答える、解説が入る、また質問が飛ぶ、感想が飛ぶ。
もし電話を受けたのが女性だったら、などの仮定の話でも盛り上がっていた。詳しい内容はわからなかったが。

若者は、僕含めて5名ほど。演劇関係者だと思われる人が3名。普通に親と来ていた学生が1名、そして僕。若者で最後まで残っていたのは僕だけだった。そりゃ、そうだろう。

しかし、演劇作品であるという前提で、このような回が開催されているのは面白い。普通に20€を払ってみている。無料公演ではなく、普通の演劇公演なのだ。客数は30名程度。平日の昼間なのに、たくさんの人が見に来ているという印象だ。

やはり、というか、絶対バーカウンターあるんだな。という
元々は倉庫だったのか、それなりに広い空間で、天井も高い。
ステージは特設で建てられたものらしい。照明はほぼLED。
壁には劇場所属の俳優の壁写真がずらり。おそらく出演俳優の顔写真がよく見えるところに配置されるのだろう。

音響と照明のQミスが重ね重ねあったということは、場当たりはその日にやったのか。というような印象。照明も特にプランが決まっているようには見えなかった。その場で合わせている感じだった。

なんだかんだ1時間半ぐらいいた。
演劇と街がつながっている。もちろん全員にではないけれども、陰気臭さは特にしない。街の人はどう感じているんだろうか。

https://www.wolfgang-borchert-theater.de/stuecke/leg-einfach-auf.html


8月25日 Burg Hülshoff

この日は夜にイベントへ。
ミュンスター出身のドラァグクイーン5名による、壮大な宇宙旅行を拝見。
世界各国の愛にまつわる楽曲(?)がラインナップ。
旅行をしながらショーも楽しめる贅沢三昧。

街の中心から約5キロ。そう聞くと遠くないようだけれども、バスと徒歩でいくと、1時間近くかかる。
周囲は畑が一面に広がる農家集落。
携帯の電波もうまく繋がらない。街から少し離れると、すぐにのどかな風景が広がる。
となりのトトロの気分を味わいながら、目的地へと足を運ぶ。

街から外れたらそこは一面の畑地帯

たった5€で見れるドラァグクイーンショー。
初めての体験にワクワクしている。

会場となる場所は、どうやらミュンスターが管理している、名高い建物らしい。ここのあたりはきちんと調べたい。(まとめようかな)
ホールのような、もう使われていない、倉庫のような場所に通される。
めちゃくちゃいい場所だ。しかし、埃っぽいところは、気管が弱い僕にとってはつらいところ。天井に蜘蛛の巣がたくさん。わかりやすいイメージで言えば、天井と空間がめちゃくちゃ広い北千住BUoY。ドイツで芝居をやるならば、ここがいいな、という第一候補地である。

ドラァグクイーンショーは先も述べたように、宇宙旅行をテーマにしたショー。5人のメインダンサーがそれぞれ楽曲に合わせたダンスパフォーマンスを披露していく。その中に、なんとあゆの楽曲が入っていた。そしてそれを演じるパフォーマーの口の動きは、完璧だった。感動しすぎたが、日本人は我々二人しかいなかったため、その曲がわかるのも、もちろん二人しかいない。日本の曲が使われていることに感動してしまい、めちゃくちゃ手を振っていたら、隣に座っていた、イタリアからこれを見に来たというお客さんに「これは日本の有名な曲か?」と質問された。ちょっと恥ずかしかったが、あゆは、我々世代なら間違いなく有名人なので、そうだ、と答えた。パフォーマンスが終わると、我々はあゆーー!と叫んでいた。きっと何を叫んでいるか、周りの人たちにはわからなかっただろう。


この奥のエリアがステージ。写真がぶれてしまっている。

ショーは60分続いた。お腹いっぱい。
美しいパフォーマンスを味わえて大満足。

終わってから、あゆを歌っていたドラァグクイーンと記念撮影をさせてもらった。対応が神っている。声もいい。普通にいい。

なんであんなに美しいんだろうな、と感心しっぱなしの時間だった。

なお、終演後から帰りのバスまで1時間待たなくてはならなかったのも、これまたいい思い出。街灯もないので、バス停は真っ暗!めっちゃこわい!

8月26日 オープンアトリエ

この日は、Kunsthalle Münster を5階に構えるアトリエビルがオープンアトリエをしているということで足を運ぶ。
日本人アーティストもいらっしゃるということで、ワクワクしながら参加してきた。

まずオープンアトリエの時間に驚いた。

16時〜24時

夜中まで開けておくんかい。

最初に今お世話になっている家を紹介してくれたアーティストのところへ。
めちゃくちゃ久しぶりの日本人にテンションが上がる。
おしゃべり、おしゃべり、おしゃべり。

他ものぞいてこようということで、全部で4階まであるアトリエひとつひとつを見てきた。

どこもいい感じの広さで、作品もおもしろい。
特に韓国人のアーティストの作品と、抽象画の油絵作家の作品が好きだった。
あと、5階のホールで展示されていた作品もものすごくよかった。

余白。
目に見える余白ではなく、人が想像できる余白、が残っている。

僕は日本にいた時、日本の作品は圧倒的な技術力を感じる反面、どこかそこで物語が完結しているような感じを受けていた。
漫画にしろ小説にしろ演劇にしろ絵画にしろ音楽にしろ彫刻にしろインスタレーションにしろ生活にしろ料理にしろ
それだけで完結していると感じる作品を、僕はあまり好きではない。

物語はどこまでいっても私たちのいるこの世界とつながっている。
自分の自意識と、自分以外の自意識。
自分という存在と、自分以外の全ての存在は、やはり同時に存在している。
それを認めて、それがつながっていく。その影響を僕達は受けたり、与えたりしている。

僕は学びの機会を与えたいわけではないけれども、いつだって世界は学びの機会で溢れているという感覚だけは持っていたい。

だからすごい技術ですねー。と自分の中で納得して終わってしまうと感じちゃうものに、僕はそこまで魅了されない。

そんなものはこの世に一つもない。
とすれば、それは僕の感受性が死んでいるだけなんだと思うが、自分の好き嫌いははっきりしたほうがいい、というドイツにきて最初に学んだことを今は意識しているので、まあとりあえずはこんな感じ。

4階では再び日本人アーティストに。
この方がとてもいい方。ほんとに。めちゃくちゃ楽しい。ビールももらった。
そして金言をいただいた。
「コネよ!コネ!」
こんなに明るくはっきりと、実がこもった「コネよ!」に何か救われた気がした。
そうだった。コネを作らなきゃ、この先は見えてこないな。

幸せいっぱい、元気いっぱいになり、この日はアトリエをあとにした。


8月27日 初Theater Münster

さて、引きこもりといいつつ、このぐらいまでは頑張っていた。
この日は、ミュンスターの中心となる劇場だろう、Theater Münster に出向いた。
この日は"Give peace a chance - Wallenstein"の本編、ではなく
本編上演前のプレイベントに参加した。

劇場のオープンスペースで、俳優3人とドラマトゥルグ2人とが作品の一部抜粋や作品解説をする回だった。(これまたバーでお酒が頼めるシステム)

回は、まず歌から始まる。
美しい伴奏と、俳優たちの歌唱が披露される。おそらく作品の一部なのか。
歌が終わると、挨拶があり、解説が話されている。
いやー、さすがにわからなかった。全然聞き取れない。
僕は耳が弱く、リスニング能力はめちゃくちゃ低いので、泣きそうになりながら聞いていた。必死なので、身振りや表情、聞き取れた単語から類推しまくって、ヴァレンシュタインの話と現在起こっている戦争の話との関連や、「戦争が戦争を育てる」という作中に出てくるフレーズからどういうインスペレーションを受けているか、などについて話していることはわかった。内容は、ごめん、わからない。
そうこうしていると、そのキーフレーズがでてくるシーンのリーディングが始まった。

僕は大学時代にシラーを研究していた。
なんならこのヴァレンシュタイン三部作を題材にすらした。
直前までドイツ語原文の該当箇所をひたすらに読んでいたので、この時は聞き取りができた。
今まで読んでいた言葉が、こうやって音声化され、生身のものになっていく感動を、久方ぶりに味わった。演劇というものに出会ったばかりの少年少女たちのような心持ちだった。

リーディングが終わると、再び解説に。

この回の面白いところは広い空間でやっているからか、ステージがあっても、ステージと客席との空間の隔たりがあまりないように感じられる。
さらにきているお客さんの中には、たとえ解説の途中でも臆することなく質問を浴びせていく人もいる。
そしてステージ側の人たちは、たとえ話の途中だとしても、その質問が回をよりよくするものの可能性がある、もしくは純粋無垢な質問だとしたら、拾うようにしているのか、蔑ろにしない。
(おそらく、ここでひどく滑稽な内容だったり、会を妨げるような質問だったら止めているのだろう。つまり、相手の自由を損なわせるようなもの、この場合だと、相手がステージだけではなく、ほかの観客のも損なわせるようなものは受け付けないのだろうとは思う。あくまで想像だが。)

その質問からさらに話を発展させていく。
聞くに徹する人たちの頭の中も渦巻いているのがわかる。

気がつくとまた次のリーディングシーンへ。
やばい、今度のはどのシーンかわからない。
ので、俳優の演技や発声について考えてみる。
それにしても普通に話すときと、舞台上で話すときの発声が全く変わらないってのは、どうやったらできるのだろう。
僕はどうしても変わってしまう。訓練が足りないのだろう。
常に俳優である、という意識が舞台上に残っている。

8月29日〜30日 家財をもらう

ミュンスターから引っ越しをされるという日本人アーティストの方から家財をもらうために、アトリエへうかがう。
どこの国でも引っ越しは大変。
特にドイツは家探しが本当に大変。
おかげさまで、棚や小物入れなども入手。
なんとか10月以降も、今も家に住める流れになってきているので、ちょっとは安心。

9月1日〜4日 フランス・ニースへの旅行

ニースに行ってきたけど、これはまた別記事にしようかなと。
久しぶりに羽を伸ばす旅行をした。
海にこんなに長い時間いたのも初めてかも。
おかげさまで焼けました。
皮膚がめくれています。

朝焼けのニースの海
朝方のニースの通り
二日間とも晴れていた
友人のチーカワとならぶBUMP

移動は簡単に済ませるのがいいです。という学び。

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