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就活ガール#297 国家公務員への就職

これはある日のこと、キャリアセンター前のカフェで同級生の美柑と就職活動について話していた時のことだ。

「なぁ、公務員試験ってどう思う?」
「Fラン大学には無縁の世界ね。」
「そうなんだ? どちらかというと公務員とかって学歴差別したらダメっていう国からの要請とかを厳密に守ってる気がするんだけど。なんていうか、テストの点数できっちり合格ラインが決まってるというか。」
「そのテストに受からないのよ。馬鹿だから。就活したくないFラン生が夢を見て散っていくのが毎年の恒例行事ね。彼らの多くがダラダラと何年か受験を続けた後、フリーターになるわ。」
「うぅ……。」

「もちろん、地方公務員で田舎の方に行くとか、あるいは期間限定で採用されるような人達は別だわ。ただある程度発展したところでの地方公務員とか、あるいは国家公務員となると、筆記テストが結構難しいのよ。」
「どういう科目があるの?」
「そうね。じゃあ今日は国家公務員について話してみようかしら。地方公務員は各自治体によっていろいろと差があるけど、まぁ基本的にやるべき対策は国家公務員と大きく違わないところが多いわね。」
「おう。」
「で、まず最初に職種なんだけど、大きく分けて国家総合職と国家一般職があるわね。これ以外にもいろいろと専門職はあるんだけど、それは除外して考えるわよ。」
「警察とか自衛隊、裁判所書記官、税務官なんかも大きな区分でいえば国家公務員だもんな。」
「ええ。その辺の職種は特殊な採用ルートがあるから、今日の話には当てはまらないことが多いわね。要するに、財務省とか厚生労働省みたいな、いわゆる霞ヶ関の役人をイメージして欲しいってことよ。」

「わかった。それで、国家公務員にも総合職と一般職があるのか。」
「ええ。でも民間企業でのそれとは大きく異なるわよ。」
「どう違うんだ?」
「まず、男性でも一般職になれる。」
「お、そうなんだ。さすがに公務員が男女雇用機会均等法を守らないのはまずいもんな。」
「そうね。そもそも数年前までは国家一種、国家二種なんていう区分がされてたから、一般職という名前が後付けなのよ。だから、世間でイメージされる総合職のサポート的役割という枠組みを超えた動きをすることが多いわね。」
「なるほど。」
「とはいえ国家総合職は企画立案メイン、国家一般職は窓口対応メインなどの差はある。もちろん、出世するのは国家総合職の方よ。」
「民間企業の一般職に比べるといろいろと大変そうだけど、やっぱり国家総合職と比べると全然違うってことか。」
「ええ。その分、給与や合格難易度も全然違うけどね。」

「国家総合職は公務員の中でも最高峰って感じだよな。特に財務省とかは難しいイメージがある。」
「そうね。日本の官僚機構では財務省が一番権力を持っていて、就活生からも人気だわ。次点で警察庁、外務省、経済産業省、総務省あたりが続くわ。」
「警察は権力持ってそうだし、外務省はいわゆる外交官だろ。なんかかっこいいよな。」
「ええ。ちなみに不人気なのは法務省、環境省、消費者庁あたりね。」
「環境省はなんか地味だし、消費者庁は比較的新しくできた省庁だよな。そうすると権力はなさそうだし納得できる気がする。」
「そうね。別に権力が全てではないんだけど、ある程度の力を握っていないと、思うように国を動かせずに悔しい思いをすることが増えると思うわ。これは民間企業でもそうだけどね。」
「でも法務省は意外だな。そもそも大学の法学部って公務員を育てるためにできたって聞いたことがあるし、公務員と法学は関連性高いイメージだけど。」
「それはそうなんだけど、法務省は管轄する法律がないから、やっぱり権力が握りづらいのよね。」
「法律を管轄するのが法務省の仕事じゃないのか……。」
「民法みたいな一般法はそうなんだけど、それよりも特別法が優先されるでしょう?」
「ああそうか。例えば建築基準法は国土交通省の権限だもんな。」
「そうそう。そうすると、例えば新しい建物を建てるときに必要な建築許可を出すかを決めるのは、国道交通省だっていうことになるわね。」
「それは結構な権力だよなぁ。」
「ええ。他の省庁だってそうよ。厚生労働省は労働関係の決定権を握ってるし、経済産業省は経済特区を決められたりする。文部科学省は教育制度を決められるし、就活生に人気の総務省は携帯電話やテレビの電波を管轄してることでも有名ね。」
「なるほど。何を決められるかっていうので考えると、わかりやすいな。」

「で、試験なんだけど、大きく分けて二つの段階にわかれるわ。まずは人事院が実施する共通試験そして、官庁訪問よ。」
「官庁訪問?」
「順番に話すわね。」
「おう。」
「共通試験は、ペーパーテストと面接が行われるわ。ペーパーテストは一次試験がマークシート、二次試験が記述式だったかしら。」
「筆記試験が2回って、結構がっつりしてるんだな。公務員就職を希望してる人たちが対策してるのはこれか?」
「そうね。科目はSPIのようなものが出題される基礎科目と、専門科目がある。」
「専門科目って何?」
「選択科目だと考えるといいと思うわ。法律とか経済とか、あるいは理系分野もあるんだけど、自分が得意なものを選んで答えるの。」
「なるほど。」
「人気なのはやっぱり法律と経済ね。大学での専攻と合致する科目がない人はこのどちらかを選ぶ傾向が強いわ。」
「やっぱり公務員といえば法学っていうイメージだもんなぁ。」
「そうね。」
「で、これらのペーパーテストと、その後に行われる面接の結果の合算で合否が決まる。」
「合算ということは、ペーパーテストで良い成績を取れば面接がダメでも合格できるってこと?」
「そうなるわね。」
「コミュ障にとっては最高じゃん。」
「とはいえ面接には足切りラインがあるから、あまりにもダメだと落ちるわよ。あと、最近は面接の配点が高まっている傾向にあるわ。」
「問題ある公務員が多くて、人柄重視になってるのかなぁ。」
「そんなところでしょうね。あとは今みたいに景気がいいと公務員試験への応募者が減るから、ある程度ペーパーテストは妥協しなければいけないっていうのも正直あると思うわ。」
「なるほど。」

「で、これらに合格すると、国家公務員試験の合格者名簿に名前が載るのよ。そうすると、各官庁での採用試験を受けられるようになる。これが官庁訪問って呼ばれてるやつよ。」
「まずは人事院の試験に合格して、ようやくスタートラインに立てるっていうことなんだな。」
「そうね。国家総合職だとここからの倍率が2倍から3倍程度はあるって言われてるわ。もちろん省庁や年度にもよるけど。」
「単純計算で、半分以上の人は名簿に載っても就職ができないのか……。落ちたら翌年は最初からやり直しなんだよな?」
「ええ。一応数年間は名簿が有効だから翌年は官庁訪問から始められるんだけど、昨年どこの官庁にも雇われなかったっていうだけで色メガネで見られるから、実質的にはキツいわね。あと、名簿には1位からビリまで順位がつけられてるから、翌年さらに上の順位を目指して再受験する人もいるわ。」
「翌年にはまた新たに名簿に載る人が増えてくるわけだもんな。そういう人達と互角に戦うには、今まで以上に頑張らないとダメってことだろ。その辺は民間企業への新卒就職に似てる気がする。」
「ええ、似てるわね。ちなみに、人事院がやってる試験にクリアして名簿に載るところまでは結構厳格というか、年齢や性別、学歴等は関係ないんだけど、官庁訪問ではそうはいかないわよ。」
「年増や低学歴は不利ってこと?」
「そうね。実際、財務省みたいな人気省庁は半数以上が東大生という年もあるわ。」
「公務員試験も大変なんだなぁ……。それでいて、官僚っていうほど待遇も良くないらしいけど。」
「そうね。官僚をしているうちは大変で、天下りをしてようやく自分の人生を楽しめるって感じだと思うわ。」
「天下りには悪いイメージしかないんだけど、一連の話を聞いてるとちょっと同情してしまうところもあるな。」
「ええ。公務員受験をするなら覚悟を持って挑んだ方がいいわ。個人的には、民間就職の方が遥かに楽だと思うけどね。」
「わかった。ありがとう。」

そこまで話したところで会話を終えた。今日は国家公務員の就職方法について話を聞くことができた。全体的にかなり難しそうな印象を受けたけれど、そのわりに待遇が良くないという話は最近頻繁に聞くようになった。また、最近は面接の配点が高まっていたり、官庁訪問では官庁のOBとのつながり等も考慮されるそうだから、民間就職で失敗した就活生が安易に逃げ先として選んでよいものではないとも思う。公務員試験を目指すなら相応の準備が必要そうだと再認識、一日を終えるのだった。

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