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就活ガール#303 長期インターンは最強のガクチカ

これはある日のこと、アルバイト先のコンビニで後輩の日野原さんと就活について話していた時のことだ。

「先輩ってガクチカはこのアルバイトなんですよね?」
「うん。」
「失礼な質問かもしれないですけど、アルバイトって正直なところどうですか?」
「どうというと?」
「ちょっと心配なんですよね。ガクチカがアルバイトってありきたりというか、いわゆる弱いガクチカなんじゃないかと思って。私はまだ比較的時間があるので、今から何か別のことをやったほうがよいんじゃないかなと思い始めています。」
「なるほど。ガクチカって何をするかよりもどういう風に取り組んでそれをどう伝えるかが重要だって言われていて、一般論としてそれは正しいんだろうけど、とはいえ強い弱いはあるよな。」
「はい。ガクチカそのものの強弱もあると思いますし、それ以上にアピールに繋げやすいガクチカとそうでないガクチカがあると思います。」
「部活の全国大会で優勝した人だと、それを言うだけで努力家なんだなとか忍耐力があるんだなって伝わるもんな。一方でアルバイト経験を通してそれらの能力をアピールするのはわりと難しいし、できるとしても手間がかかる。」
「はい。エントリーシートの文字数や面接での発言時間は有限ですからね。効率よく有能さをアピールできるエピソードを持っていると、それだけで有利だと思います。」

「うん。日野原さんたち下級生の場合は今からでも長期インターンとかできるだろ。」
「やっぱり長期インターンが一番いいんですかね? 留学とか起業とか学生団体とかボランティアとか、いわゆる強いガクチカって呼ばれてるものの中でもいくつか種類はあるので迷ってます。サークルとか部活で成果を残すのは今からでは無理だとしても、今言ったようなものってだいたい全部、今からやろうと思えばできる気がするんですよね。」

「うーん。俺が模擬面接で面接官役をやったり、あるいは短期インターン先とかで話を聞いたりして思ったことなんだけど。」
「はい。」
「一番強いのは長期インターンで間違いないな。理由は、社会人としての経験を積めるから。」
「長期インターン生って社会人って呼べるんですかね。」
「まぁ呼称の定義はよくわからないけど、少なくとも社会人と一緒に業務をするわけだろ。」
「はい。でもそれって短期インターンでもできる気がします。ワンデイだと流石に無理でしょうけど。」
「いや、数週間程度のインターンでも難しいんだよ。」
「そうなんですか?」

「うん。1か月以内くらいの場合は、インターン用に専用の業務が用意されていて、筋書きに従ってロールプレイをしてるって感じのことが珍しくないんだ。」
「ヤラセっていうことですか……。」
「ヤラセというか、準備してくれてるっていうありがたい話だと思う。実際の業務って1か月程度で片付くものは少なくて、何か月、何年にもわたって続くようなプロジェクトが多いんだ。でも中途半端なところで終わったらインターン生は不満だろ?」
「なるほど。たしかにそれはそうだと思います。一定の達成感とか満足感を味わってもらったほうがインターン生に良い印象を残せそうだし、本選考への応募にもつながりそうですね。」
「うん。だから、結構前から緊急性の低い業務をストックしておいて、それを1か月以内に終わるようにアレンジしたりしてるんだ。どうしても適切な業務がなければインターンのためにわざわざ生み出すこともある。」
「それだと、実際の業務経験との乖離が大きそうですね。それに、よく考えたら研修も受けていないインターン生をいきなり本番同様の業務に投入するのは難しい気がします。企業としても扱いに悩みそうですね。」

「うん。だから長期インターン、具体的には2か月以上のものがいいんじゃないかな。」
「長期になればなるほど事前に準備するのが不可能になるし、ゆっくりと業務を教えてくれるってことですね。」
「そうだな。」

「でも、そもそもなんですけど、社会人経験を学生のうちに積むことがそんなに重要なんですか? 現時点での業務遂行能力よりもポテンシャルが重要だという話をよく聞きますけど。」
「大事だと思う。まず、ポテンシャルが大事というのは事実なんだけど、それ以外が大事じゃないというわけではない。」
「即戦力になるかもある程度求められてるってことですね。」
「うん。例えば研究職だと大学、大手だと大学院でその分野をしっかり勉強した人が圧倒的に有利だろ。それと同じで、営業職や企画職だってある程度の知識や経験がある人の方が有利なんだよ。」
「法務や財務みたいな一部の例外を除き、文系職だと誰でもできるみたいな印象ありますけど、そうではないってことですね。」
「もちろんそれらの職種に比べると比較的幅広い人にチャンスがあるというのは事実だと思うけどな。何もできなくてもなれる職業というよりも、活かせる能力が幅広い職業と考えた方がいいと思う。」
「そもそも能力がなくてよいわけではないのとは全然違いますね。」
「うん。で、大手企業ほどポテンシャルだけじゃなくてそういう現時点での能力値も評価対象に加える余裕があると思う。」
「ポテンシャルがあるのは大前提として、それ以外の基準でも人を選ぶ余裕があるってことですよね?」
「そうそう。だから社会人経験も必須ではないけど、あると得なのは間違いないと思う。」

「理解できました。社会人経験があると能力がある程度磨けてますもんね。適性もはっきりしてると思いますし。」
「だな。企業としてはミスマッチリスクが低いと思われやすいと思う。実際の業務のイメージって説明会やOB訪問で聞くのと体験するのでは全然解像度が違うし。」
「はい。ということは、長期インターンの中でもどういう会社でどういう業務をするかは重要そうですね。」
「うん。例えばSNSや大学の口コミで学生を集めて就活イベントに勧誘するみたいなインターンは正直あまり意味がないと思う。」
「営業職を希望する場合は、できれば法人相手に営業する経験ができるインターンが良さそうです。なんか面倒そうなプレゼンとか、理不尽な要求を受けるとか、そういうのもありそうですけど。」
「あと社内調整な。特に大企業の場合は本当にこれが多いというか、業務の過半は社内調整といっても過言ではないと思うんだけど、OB訪問とかでは省略されがちでイメージが湧きづらいと思う。」
「たしかに社内調整っていわれても何なのかよくわからないし、言葉からは重要ではなさそうな印象を受けますね。」
「実際はかなり重要なんだけど、いろいろ複雑な業務の集合体としての名称だから他に呼び方がないし、説明も難しいんだよな。」
「その辺をインターンで経験できてると強そうですね。」

「うん。あとは起業も同じだな。ただ会社を作ればいいっていうだけじゃなくて、ちゃんと大手企業相手に経験を積めるのがいい。」
「大手企業相手である必要ありますか?」
「大手企業に入社しようと思ってるなら、大手企業の社員と話して考え方を学ばせてもらうのが効果的だと思う。もしベンチャー企業に就職しようと思ってるなら会社経営に関する知識とかも活きるかもしれないけど、それは少数派だろ。」
「その説明でしっくりきました。起業についても結局は長期インターンと同じで、社会人経験を積めるかが一番重要で、そういう意味では黙々と作業をする系のビジネスとか、もともと知り合いだった特定の小人数を相手に対するビジネスとかでは厳しそうですね。」
「起業しないよりはいいと思うけど、相対的には厳しいかもな。」
「わかりました。今日もありがとうございました。」

そこまで話して今日の会話を終えた。今日は、ガクチカとして長期インターンや起業が有効ではないかという話をすることができた。当然だけれど、ガクチカとして何をやったから内定がでるとか、何をやっていないから内定がでないとか、そういう基準はほとんどの企業で存在しない。結局のところ、いくら長期インターンをやったからといって内容がショボかったり、話し方が下手だと意味はないだろう。
具体的には、長期インターンを通して社会人経験を多少は積み、就職後に行う日常的な業務についてのギャップを少しでも埋めたという方向でのアピールが有効ではないだろうか。学生はどうしても日々の実際の業務についてイメージすることができておらず、その結果ミスマッチによる早期退職が発生することを企業は懸念している。それらのリスクが少ないということをアピールするための裏付け資料として、長期インターンや起業の経験を話すのがよいと思った。そんなことを振り返りながら、一日を終えるのだった。

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