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壊れるほど愛しても1/3も伝わらない

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分からず屋どもが。

世間ってのは悲しい場所で、これ好きなんだよね~って表明をするだけで「あ、ふーん、なるほどね」とか言われちゃうコンテンツがあります。好きは人それぞれなんて言いながら、現実問題好き嫌いによって他人に線を引いて人間は生きてる訳で。「ごちうさ面白いよね」なんて口走った日には怪しい新興宗教に入信しもう声の届かない所に行ってしまったヤツ扱いは固い。翌日には無言で船から降ろされてることでしょう。こんにちは。空ノパフェです。普段は媚びを売ったり反感を買ったりしています。

あんまりにもオタクに舐められすぎてないか、ごちうさ。言いたいことは分かるよ。ストーリーに分かりやすい起伏がないのはそう。可愛いが押し出されてて「ぴょんぴょんね、分かった分かった」ってなるのも、いいよ。俺の話に精いっぱいついてこようとしてくれてありがとね。倍速再生してても愛してるよ。

日常系はキャラクターの魅力、もしくはキャラ同士の関係性の文脈に対しどれだけ楽しめるか、萌えのノリの部分に特化しすぎているので、多分これらのどれにも刺さらない人間にとってこの作品が「つまらなかった。声はよかったので☆2です」くらいなのは理解する。つまらないを発信する権利は誰にでもある。でも、虚無は言い過ぎ。いくら俺らが日常アニメ科きららMAXの脳死萌え豚でも言っちゃいけない言葉ってあるじゃん。

改めて「ご注文はうさぎですか?」が如何にすごい作品なのか喚き散らしに来ました。群雄割拠のきららMAXで伊達に毎月カラーページが用意されてる訳じゃないですよ。マジで。

ガールミーツガール

「ご注文はうさぎですか?」は作品の舞台、木組みの街の高校に下宿しにきたココアと、下宿先の家の喫茶店を父親と二人で切り盛りしてるチノの出会いから成長の話を主軸に進んでいる。原作だと単行本の終わり、テレビアニメのシーズン毎の終わりには必ずココアとチノの話に収束するように話が進む。ココアと出会ったことで、引っ込み思案なチノが影響を受けていく。またココアもチノと出会ったことで、自分の憧れていたお姉ちゃんのように振るまい、チノの手を引き、時にはチノの一言で救われた気持ちにもなったりする。ギャグ的な風味でゆるーく見えるが基本的には自身の成長における悩み、関係性への悩みが中心でこの話は動いている。このキャラクター同士のズレが上手い具合に作用し、オチがつく、の起承転結がしっかりしているのは原作が四コマ漫画ならではの部分だろう。

面白いのが、このごちうさ世界、ただの現代日本という訳でもなく軍隊が存在し、ココアたちの親世代に二人従軍経験者がいることや、過去に逝去してティッピーに乗り移る前のチノの祖父が、昔魔法使いが夢だったココアと出会っていること、ココアの母と若くして亡くなっているチノの母が仲が良かったことなど中々気になる設定がチラチラ話に組み込まれていたりする。恐らくチノの家に下宿が決まったのも、親関係で面識があるからだろう。

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ハロウィンの日にココアと面識のあるハズのないチノの母が出会う不思議な回や勘違いだったとはいえティッピー(おじいちゃん)が成仏してしまうかも、といった不安もチラチラ描かれていて、この作品の根幹がチノの成長である以上、別離のときが来るのかなとか。BLOOMの第七羽は原作、アニメ含めトップクラスにこの世界観の幻想的な雰囲気、ココアとチノの文脈が最大限まで交差し、綺麗に締まっていく異色の名回なので一度は見てください。

文脈の積み重ね

無視されがちなんだけど、日常系萌えアニメって意外とサザエさん時空少ないんですよ。いつまでもそのまま変化しない訳じゃない。初登場の時よりキチンと歳は取るし、分かりやすい事件のない細かい日常にも物事の積み重ねってのがあって、そこから文脈が生まれる。物語全体を要約した際に消えてる何でもない日常の文脈こそが、キャラクターにとって大事なものとして取られているから、彼女らの人生にとって重大な決断に重みが増す。ご注文はうさぎですか?は一巻初登場時から既に二年の歳月が経ち、ココア、千夜、シャロは高校三年生に。チノ、マヤ、メグは中学を卒業し、チノはマヤ、メグと別の高校に入学しました。リゼも高校を卒業し、教師になるため大学に入学するなど、確実に彼女たちの人生は動いています。可愛さをブレンドしてマイルドにしただけで、案外そういう成長に伴うほろ苦さを主軸に据えてるのが「ご注文はうさぎですか?」の特徴です。


シュガーよりシナモンが 気になりだしたら進化のときかも 
ビターからハニーへと 変わりそうだからちょっと切なさがくすぐったい胸を

下の歌詞は二番なんで貼った範囲じゃ聞けないんですけど、好き過ぎる。この歌詞。基本的に成長していくことを否定することなく、でもちょっと切ない、くらいのこの塩梅。

二期で、昔お姉ちゃんに頼りっきりだったココアを愛しく思ってたモカが久しぶりに会いに行った際、思った以上にココアが恥ずかしがって(基本作中で一番明るいのに、シャロからの好意を素直に受け取らなかったり、こういう所がある。こいつ)寂しがってたエピソードがある。結果からいえばモカにサプライズパーティする為の下準備で必要以上に、って部分もあったが、千夜が昔手を引いて振り回してたのはシャロ側だったことに思いをはせる回だったり、ごちうさには昔と今で変わった関係性を寂しがる感情を必ず挟む傾向がある。こうやって感傷を見せた上で変わらない所も見せて、話の展開で安心させてくれるのもこの作品の根本にある優しさだろう。

画力が高い

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世界名画。

かわい~

可愛い。俺がこれ見てる時だけに見せる本物の笑顔がある。「かわいいだけを、ブレンドしました」とまでキャッチコピーに掲げてるだけあって、人物、背景、小物に至るまで漂う柔らかさが凄い。

あと原作のkoiさんがpixiv以外で意地でもSNSをやっていないので、絵、お話から感じる幻想に雑味が混じらないのも良い判断だと思う。勿論思想や人物の性格の雑味で作品に厚みとリアリティを与える作品も悪くないけど、理想を描いて美麗に仕立て上げ、澄み切った空気感で優しさと寂しさの塩梅をちょうど良くするまで突き抜けられると一種の芸術味を感じる。美しいものはそれだけで価値がある。

舞台を異国情緒のある木組みの街に設定しているからか、ボトルシップだったりチェスだったり、シストっていう街中全体で宝探しする遊びだったり、海外のアンティーク!って感じの小物がちらばってるのもGOOD。

どう?

萌えってなんだかんだ一般に広く受け入れられるものじゃないのはもちろんだと思う。キャラクターとして属性的っていうか、血肉が通ってない、薄く感じる部分はどうしても萌えを商業的に押し出す作品には付き物だと思う。普通人間って一言で言い表せない、一貫しない部分ってのが存在するから、属性的なキャラだとそれがなくてリアリティがない、そういう可愛さを信用できない、とかそういう理由が人を選ぶポイントなんだろう。

でも、それで見限るには勿体ないくらい、あまりある魅力があることは上述した通りだ。属性的で看板的なキャラであっても文脈の積み重なりや、根本に通ってる物語性、それらを包んでる世界自体の描写が凝られていれば、十分素晴らしい作品になりうる一つの例がごちうさだと俺は思います。

ここであげた以外も、四コマの使い方が明らかに上達していってるだとか、テンポの余白の作り方が上手いだとかの、魅力が見出せるから、今一度原作でもアニメでもいいから「ごちうさ」を見返してくれ。こうやって四の五の言葉で並べ立ててレコメンドする理由なんて、俺の好きをお前らに押し付けたい以外にない。空ノパフェは、「ご注文はうさぎですか?」を応援しています。

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